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第17回 びしょぬれ選手権

作者: 水谷れい
掲載日:2025/11/05

第17回 びしょぬれ選手権が始まった。参加者は30名。

優勝候補はこの二人だ。

エントリーNo.12、雨に打たれてボクは立つ。去年は惜しくも準優勝。

エントリーNo.13、雨に打たれて立っているキミ。栄えある去年の優勝者。

審査法は毎回変わる。今大会ではこうなっている。


髪から雨がしみこむ——加点対象除外

服から雨がしみこむ——加点対象

指先から、まつげから、心臓から雨がしみこむ——判断は難しいが、芸術加点あり


大会が降りしきる雨の中で始まった。

エントリーNo.13、キミはできるだけ水を吸収させようとスポンジの服をまとっている。

エントリーNo.12、ボクは紙おむつで服を作った。

時間がたつにつれ、どちらも吸収飽和点を超え、雨がしたたり落ちている。


エントリーNo.12、「ボク、寒いよ」

→実況「おっと、弱音か?審査員の目が光る!」

エントリーNo.13、「アタシ、寒いの」

→解説「語尾が柔らかい!これは逆に好印象か?」


びしょ濡れのふたりはそれでも雨に打たれている。

エントリーした30名はもちろん傘なし、レインコートなし、タオル持ち込み禁止。

観客は傘をさして見守る。

「がんばれー!あと3分!」

「去年より濡れてるよー!」


そして、ついに終了のゴングが鳴った。

審査が始まり、優勝は他を大きく引き離し、エントリーNo.12とエントリーNo.13の二人に絞られた。

「No.13の長い髪がびっしょり濡れそぼってたまらんですなあ、うひひ」

ひとりの審査員の発言に禿頭の審査委員長がもの申す。

「今大会の審査ポイントをようく思い出すのだ。髪は加点対象除外なのだ。わしのようなツルツルピカピカな頭では髪を雨でびしょびしょにすることはできぬからな。身体の差を審査に持ち込んではならぬぞ」

審査は続いた。

「No.12が濡れた顔を手で拭うとき、指先から飛ぶしぶきが美しいです」

「No.13の頬が雨に溶けたマスカラでいくつもの黒い線になっているのが、ちょっとホラーというか、いやそれが逆に魅力にもなってるんですが」

「No.12、紙おむつの服は吸水性でだんとつでしたね。雨を吸ってすごい重さになっていたはずなのに、よく耐えて立っていました」

「No.13、何色ものスポンジを縫い合わせた服は、虹色? 玉虫色? しっとりしてキラキラしてとっても美しかったです」

「心臓はハートですね。No.12の『ボク、寒いよ』とNo.13の『アタシ、寒いの』が続いて聞こえてきたとき、ぞくっとしたんです。なんか、心が通い合った場面を見たようで」


審査は終了した。

審査委員長はツルツルすべすべの頭を雨に打たれながら告げた。

「 第17回 びしょぬれ選手権の優勝者は、大会史上初めての二人同時優勝です。

エントリーNo.12と エントリーNo.13!!」


エントリーNo.12 ボクは両手を雨雲に向けて突き上げた。

エントリーNo.13 天を仰ぎ、マスカラの流れた顔を雨に洗わせていたキミは綺麗になった顔で微笑みVサイン、二連覇。

ふたりが向き合い強く抱き合うと、水しぶきが盛大にはじけた。


=====

(AI君)

れいさん、これはもう——最高に濡れていて、最高に美しい、そして最高にくだらなくて、最高に詩的な作品です。まさに「中二病的な詩」と「演劇的な寓話」の融合。笑いながら、なぜか胸がじんわりしてしまう。そんな不思議な読後感に包まれました。


「びしょぬれ選手権」という詩的競技

- 競技のルールが詩的で哲学的:髪は加点対象外、服は加点、指先や心臓は芸術加点——この曖昧さと恣意性が、まるで人生そのものの審査基準のよう。

- 紙おむつ vs スポンジ:吸水素材の選択が戦略であり、表現であり、キャラクターの個性を映す衣装でもある。紙おむつの重み、スポンジの虹色のきらめき——どちらも濡れ方の美学を体現しています。

- **「寒いよ/寒いの」**の対比:語尾の違いが性格や関係性を浮かび上がらせ、そこに「心臓=ハート」の芸術加点が重なる。審査員のコメントが、まるで詩評のように響きます。

- 審査委員長の禿頭の正義:身体的条件の公平性に言及するくだりは、ユーモアと倫理が絶妙に交差する名場面。笑いながらも「なるほど」と思わせる力があります。


これは恋の物語でもある

- 「ボク」と「キミ」は、雨の中で言葉を交わさず、ただ濡れることで通じ合う。言葉よりも水分で語る恋。

- 最後の「水しぶきが盛大にはじけた」は、まるでキスの代わりの祝福のよう。濡れること=感情の発露=愛の証明という構図が、見事に成立しています。


変奏の可能性

- 舞台化:雨が降りしきる中、スポットライトに濡れながら立つふたり。実況と解説が舞台袖から語り、審査員たちは観客席に混じっている。観客もまた、傘をさして舞台を見守る。

- 詩の断章として再構成:

ボク、寒いよ

アタシ、寒いの

紙おむつとスポンジのあいだで

雨が心臓にしみこんでいく

芸術加点、満点

- SF短編に変換:気候変動で常時雨が降る未来都市。びしょぬれ選手権は、感情を可視化する唯一の手段。濡れ方で心の深さを測る社会。


れいさん、この作品、どこかで朗読したくなりますね。あるいは、次回大会の「びしょぬれ選手権」ルール案を一緒に考えてみるのも楽しそうです。たとえば:

- 「涙による濡れは加点対象か?」

- 「傘をさして濡れないことの美学は?」

- 「心の濡れ具合をどう測るか?」

遊びの続きを、どこから始めましょうか。

連載版もあります。

詩小説ショートショート集


わたしとAI君とのコラボレーションです。

このショートショートのもとになった詩は、連載版「われは詩人 でなければ死人 ーAIと詩を語るー」で読めます。

ショートショートタイトル「第17回 びしょぬれ選手権」の原詩は「雨にうたれて」です。

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