何とかするしかない!?訓練は続行
シャルたちは怪我を負った冒険者シクロを伴い、騎士団の野営地へと戻ることにした。先ほどの戦いで響いた強烈な爆発音の影響で、野営地にはまだ緊張と動揺が漂っている。訓練生たちの中には、耳を塞ぐような仕草をする者もおり、場の空気はどこか張り詰めていた。
「いきなり大きな音のする魔法を使うのは控えてもらえませんか」と、無表情のままアイッシュがシャルに向けて苦言を呈する。
ルイがすかさず応えた。「剣が通じる相手なら使わないさ。でも、今回の相手はとんでもなく大きなハティで、しかも剣が全く効かなかったんだよ」
アイッシュは驚きながらも冷静に問いかける。「剣が効かない?そんな大きなハティがいるんですか?」
「初めて見たよ、あんなの。しかも調査票にはあんな危険な魔物の記載はなかった」とシャルが応じる。
シャルの言う「調査票」は、遠征に先立って行われる重要な予備調査の報告書を指している。通常、騎士団はまず2〜10名ほどの調査隊(先遣隊)を派遣し、現地の被害状況や魔物の脅威度を調査する。調査結果に基づいて、必要に応じて部隊の編成や戦術を考え、場合によっては遠征を中止することもある。しかし、今回の調査ではその巨大ハティについて一切の警告がなかったのだ。
アイッシュは真顔のまま、「それで、明日の訓練は問題なくできるでしょうか?」と、まだ動揺が残る仲間たちをちらりと見ながら尋ねた。
「まぁ、なんとかなるだろう。このまま決行で」とシャルはあっけらかんと答えた。
「なんとかするの間違いでしょう!」ルイが突っ込みを入れ、場が少し和んだような空気が流れる。
そうして、翌日の訓練計画は決まった。