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01...もう一回説明してくんない?



「ごめん。いやもうほんとごめん。ちょっと展開がすごくて。もう一回説明してくんない?」


「分かりました。暫く寝たきりであったあなたに、ここ最近の話から聞かせてあげましょう」


 魔王城謁見部屋の石畳の上で無様に寝そべるオレの横に立って、返事を待つでもなく銀髪の魔族は続ける。

 だいたいまとめるとこんな感じ。


 魔王は勇者に討たれた。と、伝えられている。

 長い戦いの末、彼ら人間を代表する勇者に討たれた、と。


 彼ら人間は、魔王を倒してからというもの三日三晩と言わず幾日にも渡って騒ぎに騒いでいた。あるだけの食料を、酒を振る舞って、全員で乾杯と勝利の美酒を掲げて。

 今まで響かせてきた悲鳴を歌声に変えて、その日々を美しく彩る。広大な全ての土地が我らのものだと刻むように、街から山道へ続いて次ぐ街まで、道行くみんなが踊り明かす。

 平和を謳う。明日も、明後日も、永久に続く平和を。


 我ら魔族はといえば。

 もともと魔族の体を形作る魔力は、魔王から放出されている。故に、魔王が居なくなったあとの世界なんぞ想像に容易い。滅びの一途。とはいえ、まだ滅んでない。ただいつしか滅ぶであろうって感じ。

 王を始めとする数多の人間たちを、遂には絶滅させることができなかったのだから。

 魔力の枯渇した魔族は恐るるに足らず。魔王の敵討ちをしようものなら返り討ちに合うだけだ。実際それで多くの魔族が散っていったとか。


 しかし個人主義に傾向しがちな魔族が、復讐という一つの目標にはじめて群がったのだ。

 どうせ遅かれ早かれ魔力が枯渇して魔族としての器を保てず、消えいく命でしかない。街の一つ滅ぼせずとも、戦場の中心で勇ましく戦う勇者ひとりを討つことのみは可能だった。



 勇者は討たれた。


 人間と魔族の大規模な戦いの場で、魔族に討たれて。


 多くの魔族の死と引き換えに。




 生き残りの魔族であるオレの物語が、始まる。



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