「野獣王」ってちょっと可愛い?
「陛下。国王であり将軍であるあなたが、レディに対してそのようなひどい仕打ちをするなどとは」
「陛下。それでなくとも、あなたは他国に評判が悪いのです。やはりそうか、なんて思われてしまいますよ。って、もう思われていますね」
わたし自身がどうなっているのか推察している間でも、パーシーとチャーリーは国王を責め続けている。
「わかっている。レディには申し訳ないが、おれには必要ないのだ」
国王は、ごつい顔を振りながら何度も同じことを言う。
『もっとおれを責めてくれ。それで、おれに渋々『うん』と言わせるんだ』
国王の心を、真の声が心にしみ込んでくる。
自分の力の開花に気がついたいま、それが他人の本音をきける力だとわかったいま、なぜか大きくて強面の国王が怖くなくなった。
人間とは不思議な生き物である。
というか、わたしが単純な思考や感情を持っているだけかもしれない。とにかく、彼のことが怖くなくなったのである。
たとえ彼が謎だらけの人物であろうとも。彼には悪い噂や怖い噂しかないとしても。
「レディに罪はありません。それを追い返すなどということ、まともな男のすることですか?」
「そうだ。であれば、花嫁ではなく婚約者とかにすればいかがですか?」
チャーリーにつづいてパーシーが提案した。
「ふんっ! 花嫁だろうが婚約者だろうが同じだ。おれが虚仮にされていることにかわりはない」
が、国王は頑固に拒む。
『ナイスだ、パーシー。彼女もおれのような野獣に怖れをなしているに違いない。まずは婚約者からお近づきになる、となれば彼女も気持ちがラクになるかもしれん。婚約者推しだ。婚約者で推してくれ』
またまた国王のほんとうの気持ちがわたしの心に流れ込んでくる。
「婚約者! それでいきましょう。考えてみれば、レディも無理矢理ここに派遣されたようなものです。まさしく命じられて派遣されたのです。それをいきなり閣下の妻になどとは、レディもうんざりでしょう。あるいは、めちゃくちゃイヤでしょう」
「そうそう。それどころか、死んだ方がマシだなんて思っているかも。いっそ生贄として殺してくれ、なんてことを思っているかもしれません」
「ちょっと待て、パーシー、チャーリー。おれをいったいなんだと思っているのだ?」
「見た目、野獣でしょう?」
「見た目、野獣でしょう?」
双子の部下に即答され、国王が大きな溜息をついた。
「悪かったな」
いじられてイジイジしている国王は、やはりごつ可愛い。
いじる双子といじける国王が可笑しくて、おもわず笑ってしまった。
そのわたしの笑い声に、三人が弾かれたようにこちらを見た。
「も、申し訳ありません。笑うところではないですよね?」
謝罪しつつも笑いが止まらない。
双子も笑い始めた。
そして、国王も。
しばらくの間、四人で笑い続けた。




