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もう遅い。

 ♢ ♢ ♢


「遅い、もう遅いのだよアリーシア」


 翌朝、朝食の場で。

 わたくしは別にラインハルト様との結婚を嫌がっていた訳ではなかったと、誠心誠意尽くしてきたつもりでいたけれどこんなふがいない結果になり申し訳ありません、と、そうお父様に頭を下げところで。



 返ってきたのが父のこんな言葉だった。


「お父様?」


「お前は親父の犠牲になっていると、ずっと不憫に思っていた。まだ成人前のお前を嫁にやらなくてはいけなくなった時は大変歯がゆい思いをしていたものだ。だからか、先方からの離縁の申し出にも快く了承してしまった。すまない。まずアリーシア、お前の気持ちを確認しなくてはいけなかった」


「いえ、それは……」


「どちらにしてもだ。あの家はお前にふさわしくなかった。その点に関しては今でも考えは変わっていない。しかし、だ」


 お父様は、一瞬両目を閉じ、何か考えるように頭をふる。


「本当にすまなかったな、アリーシア。もうお前は我慢しなくてもいいのだよ。お前が離婚をしてもあの家との関係が壊れることもない。大丈夫だからね」


 あれ?

 お父様、何か言い淀んだ?


 しかしの後と、最後の言葉がなんだか繋がらない。


「もうお前は何も心配しなくてもいいから。そうだ、学園に戻ることも考えてもいい。社交ですぐに婚約者が見つかるとも限らないからね。途中編入になるが、通えなかった最後の一年分を取り戻すことも選択肢に入れてみたらどうかな?」


「ありがとう、ございます、お父様」


 なんだか、変。

 お父様、が、優しい。

 義母様も、兄様も、マリアーナまでもが同情的な視線をこちらに向けている。

 それがなんだか居た堪れなくて。


 わたくしは早めに席を立ち部屋にもどった。


 みんながわたくしのためだという。

 みんながわたくしにとって良かれと、という。

 ラインハルト様もそうだった。

 マリアーナも。お父様も。

 でも、わたくしは……。

 そんなこと、望んでいなかったのに。

 自由になることなんて、望んでいなかったのに。

 何が悪かったんだろう……。

 なんでこんなことになってしまったんだろう……。


 わたくしが、悪かったんだろうか。

 そう考えると心の奥がきゅっと痛くなる。


 そのまま。


 ろくに着替えもせずベッドに倒れ込んだ。

 枕に涙が滲んでいくのを止めることはできなかった。



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