呪言。
あの人たちからかけられた言葉はみんな呪いだと思っていた。
お母様の孤独。お母様の悲しみを思うと、彼らの善意であろう言葉もみな真綿で首を絞められるように感じて。
でも一番の呪言は、お母様の言葉だったのかもしれない。
「憎しみ、悲しみ、嫉妬、そんなマイナスの感情に呑まれないで」
そんなお母様の言葉。
幼いわたくしはそれを、感情を持つことはいけない事なのだ、と、すり替えたのだ。きっと。
憎むことも悲しむことも嫉妬することも。
恋することも喜ぶことも、そして、慈しむことも。
そんな感情をすべて押し殺して押し潰して生きてきたから。
だからか。
他人の感情をも信じることができなかった。
人との間に常に殻を置いて、避けていたんだ。わたくしは、ずっと。
そう。
マクギリウスの温かさに触れるまでは。
今にして思えば、ラインハルト様が言ったあの言葉。
「君はもっと自由に生きるべきだ。いや、私なんかではなく、もっと君にふさわしい相手と恋をするべきなんだ」
この言葉だって、彼の本心がどこにあったにせよ、結果的には正解だった。
マクギリウスに恋をして、わたくしの心は満たされたから。
ひょっとしたらこれも祝福の言葉だったんじゃないかって、今ならそう思えるから。
♢ ♢ ♢
「アリーシア!!」
あれ。目の前にマクギリウスがいる。
マナを放出しすぎてちょっと意識が朦朧としてるせい?
もしかして、これは夢かも、しれない。
ほっぺたをぎゅうと押してみる。感覚があんまりない?
痺れたようになっている身体。
やっぱり。
わたくしは夢を見ているんだ。
そうに違いないもの。
ああ、でも。
だんだんと近づいてくるマクギリウス。
おかしい。
なんだか怒ってる?
どうして……。
「このバカ! なんでお前がこんなところにいるんだ! 絶対に外に出るなって言っただろ!!」
ああ、ああ。
やっぱり怒ってる。
ごめん、なさい。
マクギリウス、わたくしを嫌いにならないで……。
「ほんとに、このバカ……」
そう言いながら夢の中のマクギリウスはわたくしの身体を優しくその腕で包んでくれた。
いつの間にか目から涙がぼろぼろと溢れてて、彼の上着を濡らしてしまう。
ごめんなさい。マクギリウス。
好きよ。だから。
わたくしのこと、嫌いにならないで……。




