【Side】マクギリウス。
第七王子だなんてあたりでもハズレでもないそんな人生を引いた俺。
幼い頃は本当に何も考えてなかった。
自分の人生がほぼハズレに近いと悟ったのは、好きな子ができた時、だったから。
「アリーシアが好きだ」
ませたガキだった俺がそう周囲に漏らした時。父上から呼び出され諭された。
「あきらめろ、マクギリウス。あれはお前の姪だ。血が近すぎる」
もっともらしくそう言う父王。
でも、その時にそれだけじゃないことを同時に理解して。
俺のこの第七王子という中途半端な立場がまずいけない。
公爵令嬢でもあり、王家の血を色濃く受け継ぐアリーシア。
そんな彼女を娶るということは王位継承レースにおいて他の兄弟に一歩先んじることとなるのだと。
長兄クラウディウスにあとをとらせたい父母にとって、俺にそこまでの後ろ盾ができることは望まないのだと。
そういうことだったのだ。
投げやりになった俺に回ってきたのは王国の影としての仕事。
暗部であり密偵であり、表の騎士団に対して裏から国家を守護する仕事。
そんな役割だった。
上司はマーカス叔父。
エルグランデ公として臣籍降下した父の弟。
彼に付き従い国内を周り、それこそいろんな経験をした俺は、いつしか自分が王族であるという足枷を外したくなっていった。
そんな時、だった。
アリーシアがマーカス叔父の元にやってきたのは。
母親を亡くしすっかりと変わってしまっていた彼女。
その容姿は幼いながらも花が開くように日に日に美しくなっていった、けれど。
それに反して彼女の心は閉ざされていくように思えた。
商人の心得、そんなものが彼女に施された教育の要。
どうしてそんなものを。そう尋ねる俺に帰ってきた返事は、
「アリーシアはブラウド商会の後継者、ラインハルトに嫁ぐことが決まったのだ。彼を支え商会を発展させるために、どうしても必要な教育だ」
と、そう。
心を閉した彼女はもう、俺に笑顔を向けてくれることもなかった。
いや、俺のことなんて眼中にない様子だった。
大好きだった姉に瓜二つのアリーシア。
笑顔がとても可愛らしかったあのアリーシアはもういないのだ。
それがとても悲しくて。
それ以降彼女を避けるようになっていた俺。
彼女が婚姻しトランジッタ家に赴くまで、そんな調子で、同じ屋敷にいるのにもかかわらず、俺と彼女はほとんど接触もせず過ごしていたのだった。




