魔人。
魔人!!
それって、もしかして今マクギリウスが調べてるあの魔族がどうこうって言うあの……。
ああ、バカだった。
だからマクギリウスはあんなに危険だ危険だって言ってたんだ。
でも。
だったらだったでなんでちゃんと言ってくれなかったんだろう。
そんなの、魔人が出るだなんて知ってたら、わたくしだってちゃんと大人しくしてただろうに。
「その魔人って、もしかして元は人間だったりするのですか?」
「いや、魔人は外からやってくるに違いないさ。いくらなんでも人間が魔人になったりしたら大変じゃないか」
ああ。そうだよね。
魔人って凶暴で怖い、魔獣が人の形をとっただけの化け物だもの。
そんなのに普通の人間がなっちゃうだなんて、考えるのも嫌だ。
わたくしにしても。
もし自分や周りの人がそんな魔人になっちゃったら、悲しくてどうしようもなくなる。
だから。
「大丈夫だよお嬢ちゃんたち。魔人は暴れてるけど、騎士団がちゃんと退治してくれるから。今までも魔人の目撃情報があるたびにこうして避難勧告も出るけど、半日くらいでなんとかおさまってるからね」
「騎士団、ですか?」
「ああ、王宮騎士団を率いるガイウス副団長閣下が直々に出向いてくださっている。あのかたに任せておけば安心なんだよ」
そっか。
ガイウス様、頑張ってらっしゃるのね。
もしかしてマクギリウスも協力してるのかしら。
なら……。
ちょっと心配。マクギリウスったらそんな危険なお仕事してたのね……。
だからわたくしにもはっきり言わなかったのかな。
お願い。無事でいて。マクギリウス……。
そんな感じでしばらく魔人のことを聞いていたわたくし。
ほんとは話さなきゃいけなかったお仕事のこと、なかなか話せずにいた。
だって、ね?
ここは一応ブラウド商会の店舗だもの。
周りにいる人の中にも従業員の人もたくさんいる。
そんなところで一応ライバル商会になるわたくしがアリリウス商会のお仕事のお話するのって、どうかなぁ。
そんなふうに考えちゃった。
だけど。
「そうだ。あんたたちアリリウス商会なんだろ? 仕事の話はしなくていいのかい?」
会話が途切れたところでラウールさんの方から切り出されて。
周囲の目が一斉にこちらに向く。
なんだか目が怖い。
うーん、アリリウス商会は敵視されてるのかなぁもしかして。
それはちょっと悲しいけど。
「アリーシア様! アリーシア様ではありませんか!!」
え?
「わたくしはトマスと申します。セバスさんの部下でしたが彼が辞めた後ブラウド商会を任されております」
ああああ。そっか。この間マクギリウスが言ってた方。
「え? アリーシア様? 親父が生前お世話になったと言ってたアリーシア様ですか!?」
「ああそうだよラウール。この方がアリーシア様だ」
いつの間にかわたくしたちのそばに現れたトマス。
でも、どうして? そんな偶然?




