継嗣。
え?
もう遅いってどういう……。
「おじさまも知ってるわよね。ここにもちゃんと影が付き従ってること。この部屋個室だけど、それでもちゃんとあたしのこと警護してる王家の影」
「ああ。わかるよ」
「だったらもう今日のこの状況はお父様の耳にも入っているはずよ。当然アリーシアさまのこともね」
「それは……仕方ないな……」
「まあお父様がアリーシア様の不利益になるようなことはおっしゃらないはずだから、一度王宮にいらして説明なさったらどうかしら?」
「そう、だな」
「それにね。わたくしにもそろそろ婚約者を決めろってうるさいのよ。だからね? おじさま」
「誰か好きなやつでもできたのか? しかしお前の伴侶ならそれ相応の身分でないと難しいとは思うが」
「もう、ばか。そんなことはわかってるわ。弟でも生まれていれば良かったのに、そんな兆しもないままここまで来ちゃって。あたしも困ってるのよ」
この国の継嗣はまだ決まらないままだ。
今のままクラウディウス国王陛下に世継ぎの男子が授からない場合、王弟の中から太子を選ばなければならないらしい。
それでも三男までは陛下と年齢も近いため、いずれも公爵家に婿に入る形で結婚し臣籍降下していらっしゃる。
四男エミリオ様は体が弱く独身のまま離宮で暮らしていらっしゃる。
五男ガイウス様は騎士団の副団長をされていらっしゃるけれど、奥様は侯爵令嬢でいずれ王族の籍を離れる意向を持っているとの噂だ。
六男スキピオ様は魔法学にのめり込み、魔道士の塔に篭って研究三昧の日々を送っていらっしゃる、とか。
順番でいけばガイウス様か、それか次男アウグス様のお子をクラウディウス陛下が養子にとるか。
そこで結構揉めているらしい。
まだ国王陛下もお若いうちは男子がお生まれになるよう願う家臣も多かったときくけど、今ではもっぱらアウグス公爵様派かガイウス殿下派かに別れている。
それでも。
クラウディウス様にしてみたら、娘のエヴァンジェリン様がやっぱりかわいいから、彼女と結婚できる年齢の方を次期国王に推したいらしくって。
難しいよね。
「だからおじさまがいいの。あたし。知ってる? 叔父と姪は結婚できるのよ!?」
え? エヴァンジェリン、さま?




