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貴族らしい。

「できません。わたくしには事業というものがどんなものなのかよく分かってはおりませんが、それでも内容も聞かずに出資するなど、お父様にも説明ができませんもの」


「お前はこの家が潰れてもいいのか!? お腹の子が将来路頭に迷うことになっても構わないというのか!」


「この子は……。トランジッタ家の後継となる子。そんな言い方をしなくても……」


「ええい、毎日毎日社交だお茶会だと贅沢ができるのも商会の稼ぎがあってのこと。それすらもわからぬお前でもないだろう」


「贅沢、だなんて……。わたくしは貴族の妻の本分は社交だと、そう思って頑張ってきましたのに……。ひどいですラインハルト様。婚約前はあんなに優しかったのに……」


 よよ、と泣き崩れるマリアーナ。

 そういえばこいつも最近笑わなくなったな、と、そんな思考がラインハルトの頭をよぎる。

 初恋の女性はマリアーナではなくアリーシアだった。

 そんな事実が発覚して以降、それまでのマリアーナへの気持ちもさめてしまった。

 初恋の、あの時の、あの記憶に残る甘酸っぱい思い出だけがマリアーナに対する気持ちのすべてだった。

 いざ婚約してみると、アリーシアとは違い商会の仕事には全く興味を示さず、そして結婚後アリーシアのように仕事をさせようと促しても彼女には全くといっていいほどそういった知識がなかったことがわかり。

 まるでラインハルトの両親と同じレベルで「商い」といったものに対する知識も熱意も何もなく。

 かといって、一般の従業員のように言われた仕事をこなすだけのことでさえ、できなかった。

 働く、ということに対しての意識が全くなかったのだ。


 家庭内でも、お茶ひとつ入れることもできない。

 料理などももってのほか。厨房に入ったこともなければ厨房にある機器が何に使われるのかも理解をしていない、というか理解をしようと努力することすらしない。


 貴族らしい、といえば貴族らしい。

 そんな典型的な貴族令嬢。それがマリアーナであったのだ。


「まあいい。ではエルグランデ公爵に直接話をさせてもらうとしよう。マリアーナ、日程を調整しておけ。なるべく早く会えるように面会の予約をとっておいてくれ」



 ラインハルトは吐き捨てるようにそこまでいうと、まだ泣き崩れたままのマリアーナをそのままに、足早に部屋を出ていった。

 執務室には決済待ちの書類が山のようにうずたかく積まれている。

 処理をしなければ、と、もうそれしか意識に無かった。

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