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道具のように。

 ■■■


「気が付いたかね、ラインハルト殿」


 飾り気のない白い壁、家具や物がなにも見当たらないそんな部屋に寝かされていたラインハルト。

 そこにあるのは彼が寝ているベッドと、マーカス・エルグランデ前公爵が腰掛ける粗末な椅子だけ。


「マーカス翁、これは一体どういうことなのでしょう」


 両手両足を拘束された状態で寝かされていたラインハルト。

 こんな事をされる謂れはないとばかりに首を振って見せる。


「貴殿がうちの孫娘に剣を向けたことによって、防御の魔法陣が作動したようだ。その爆風で気絶していた貴殿をこちらに搬び治療したという訳だ。何か弁明はあるかね?」


「私がアリーシアに剣を? ありえません、何かの間違いでは!?」


「ふむ。爆発音のあと小屋に立ち入った我々が見たのは、剣を持ったまま倒れている貴殿と、反対側に倒れていた孫娘だったのだがな。魔法陣が刻まれた守り石が作動したのも間違いはない」


「ああ思い出しました。私が剣を振り上げたのはあいつです。あの生意気な従業員と口論になり、以前のように殴られる可能性があった為やむを得ず剣を持って威嚇しましたが……、そこにアリーシアの方から飛び込んできたのかもしれません。そこのところは記憶が曖昧なのですが」


「なるほど。正当な行為であったと、そう主張なされるのですかな?」


「ええ。当然です」


「ふむ。では、あのマクギリウスが平民だと考えた為、と、判断してよろしいか」


「そうですね。私も貴族の端くれ、平民に殴られて黙っているわけにはまいりませんから」


「なるほど。貴殿がそう考えたということは情状酌量の余地がないではないが……」


「翁、随分と勿体ぶりますね。わかったらこの拘束は解いてもらえますか? 腕が痛くてしょうがない」


「そうはいかぬ。貴殿が斬りつけたのは王弟だ。マクギリウスは先代の王の第七王子であったからな。未だ臣籍に降下したわけでもない王族、わしの甥である」


「な!」


「まあそうは言ってもあやつも身分を隠し貴殿の商会に出入りしていたのは事実。勘違いさせた結果の今回であるからの。貴殿ばかりを責めるわけにもいかぬが」


「申し訳、ありません……」


「まあ今回は甥と孫にはわしから言い含めておく。貴殿は王都に帰り家業に励むがよかろう」


「しかし! それではアリーシアを連れて帰れません!」


 ガタン! 椅子を蹴飛ばす勢いで立ち上がり、ラインハルトを見下ろすマーカス。


「ブラウドにその才を見出され、お主の補佐をする為に長年教育を施してきたアリーシアを足蹴にしておいて、今更何を言うか!!」


「そんな……、足蹴になど……」


「幼い時の顔合わせでお主が孫を気に入ったとブラウドに告げたおかげで、あやつも決意が固まったのだぞ。孫のラインハルトにはどう足掻いても商才のかけらも見えぬから、と。どうかアリーシアに自分の全てを教えておきたい、と。教育には人を介したが、その内容は全てブラウドの教えだ。そんな祖父の想いを全て無にしおって!」


「そんな! 私が恋したのはマリアーナの方では?」


「あの時のパーティーにはマリアーナは出していない。お主、どこでそんな勘違いをしたのだ? もしや離婚をしたのもそのせいなのか?」


 顔面が蒼白になりながら言葉を失うラインハルト。


「なんと馬鹿なことを……。結局あの子を道具のように扱ったわしが言える筋合いでもないかも知れぬが、あの子はお主の為に、お主の役に立つ為だけにと刷り込まれ育ってきたのだ。それを台無しにするとは……」

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