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王子様。

「ごめん、お嬢、俺のミスだ」


 気がついた時。

 目の前にあったのは、わたくしの顔を覗き込むマクギリウスの真っ赤な瞳。


 少し頭をあげて周囲を見渡すと部屋の隅にラインハルト様が横たわっていた。死んじゃった? ううん、息はある。

 爆風の衝撃で気絶しただけ、かな。


「ああ、良かった。マクギリウスが無事だった……」


 あの爆発の中、誰よりも、彼が無事だったことが嬉しくて。


「バカやろう。俺の事より自分の心配をしろっていうんだ。今回は上手くお守りが作動したから良かったものの、一つ間違えば死んでたんだぞ! そうでなくともお前の大事な顔に傷でもついてたら、俺は一生後悔する。だから頼む、無茶だけはしないでくれ」


 泣きそうな顔でそうわたくしを抱きしめる彼。

 ああ。やっぱり好きだ。


「わたくしはあなたが大事なんだもの」


「俺だって。お前の事が大事だから。だからあのとき叔父さんに頼み込んでアリーシアのそばに居させて貰ったのに……。どうせ俺は外に出る身だからって、父も自由にさせてくれたから……」


 叔父さん、お祖父様のことか。じゃぁやっぱりマクギリウスは……。


「マクギリウスって、王子様、だったの?」


 思い出した。

 小さい頃に王宮で遊んでもらった王子様。

 金色の髪が綺麗で、とても凛々しいお兄さん。

 お祖父様は元々先代王の弟で、エルグランデ公として臣籍降下した身。

 そんなお祖父様を叔父と呼ぶのなら、マクギリウスは今の国王陛下の弟君になる。


「俺は第七王子だったからね。兄王が即位したのをきっかけにマーカス叔父さんのところに居候をきめこんでたのさ。昔から可愛がって貰ってたからね。君のそばに居させてもらったのも俺の方から頼み込んだんだ。迷惑だった、かい?」


「ううん、そんな事、ない」


「流石にね、俺には爵位も地位も何もない、ただの王族それも冷や飯食いだから。君にプロポーズもできやしなかった。それでもただそばにいられたら、それで良かったんだ」


「わたくしは、誰でもない、マクギリウスが大事で、好き、だから」


「俺で、いいのかい?」


「うん。あなたがいいの」



 初夏の香りがあたりに満ちて。

 爽やかに、わたくしの心を攫っていった。気がした。


 マクギリウスがいつもおっしゃってくれていた、

「お嬢はほんと、笑った顔の方が可愛いんだから」

 というその言葉。


 その言葉がわたくしにとっての言祝ぎになってくれていたから。

       

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