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この先の人生を。

「お嬢! 山小屋の片付け終わったぜ」


 ちょっとコワモテだけれど以前よりも爽やかさが増したマクギリウスがそう真っ白な歯を覗かせ笑った。

 妹マリアーナがラインハルト様と婚約したことで、マクギリウスもそのままブラウド商会に残るのかとも思っていたけど、彼はそんなそぶりは見せずふらっとシャトルブルクに現れて。

 あの時はほんとびっくりした。おまけにラインハルト様を殴ってきたって聞いた時はその光景が目に浮かび思わず吹き出してしまって。

 笑ったら悪い、そう思いつつもついつい笑顔になってしまっていた。



「ありがとうマクギリウス。じゃぁ今日は山小屋でお昼ご飯を食べましょうか? フィリアと二人でお弁当をつくったのよ」


「それは嬉しいね。お嬢の料理を食べれるなんて」


「ふふ。頑張ったんだから」


「お嬢様も随分お料理上達しまたからね」


「ありがとうフィリア。まだまだ下手だけど、フィリアにそう言ってもらえると自信になるわ」


「そうかそうか。それは期待値が上がるな」


 そう言ってがははと笑うマクギリウス。


 わたくしも、釣られて笑顔になる。


「その笑顔だよ。お嬢はほんと、笑った顔の方が可愛いんだから」


「そ、う? かしら?」


 ほおが熱くなるのがわかる。


「ちっちゃい頃のお嬢はいっつもコロコロ笑ってて、本当に可愛ったからね」


 え?


「ちっちゃい頃、って?」


「ちっちゃい頃はちっちゃい頃さ」


「マリアーナの間違いじゃなくて?」


「ああ。あっちの嬢ちゃんはもっと小さかったからね。間違えないよ」


 優しい瞳でわたくしを見つめるマクギリウス。

 真っ赤なルビーのような綺麗な瞳が真っ直ぐにこちらを覗き込む。

 何もかも見透かして、何もかもあらわにして。

 わたくしの心の底まで届くようで。


 そっか。

 彼はわたくしのことを子供の頃から知っていたのか。

 彼は、彼だけは、マリアーナではなくわたくしを選んでくれたのか。

 そう思うことがとても嬉しくて。

 彼のその視線なぜかとても心地よくて。

 好きだな。そう思った。




 ♢ ♢ ♢



 マクギリウスに片付けて貰った山小屋は、わたくしの趣味の彫金に使う予定。


 この先の人生をどう過ごしていこうか。

 そう思った時に思いついたのがこれ。ブラウド商会を経営しているときは、天候を読み必要な食材を仕入れたり、流行りのデザインを考え服飾のお店を出したり、アクセサリーや魔法具を揃えて販売したりと、主にそういった内容でお仕事をしていたけれど、商会を立て直すために利益をあげようとするとやっぱり安値で仕入れ高値で売る、機を見て買い占め機を逃さず売るといった事をしていかなければならなくて。正直、あまりやりたい仕事ではなかった。だからかな、実際の実務はみんなマクギリウスにお願いしていた形。

 そういった商売の肝みたいな事はお爺さまに仕込まれていたから、そんな知識を活かして働いていたわけだけれど、そんな中でもアクセサリーや魔法具に関わっている時だけは心が癒されて。


 一生の仕事にするならそんな魔法具アクセサリーを作るお仕事がいいな。

 そう思い至ったのだった。

 まあお仕事というか、趣味? のレベルだけれど。

 彫金を勉強して自分でそういったアクセサリーを作れるようになれば良いな、って。

 そう思ったから。


 あとはまあどうせアクセサリーを作るならやっぱり魔法具にしたい。

 簡単なお守り程度でもいい。願いを込めたものをつくりたいな。そう思って。

 綺麗な魔石を散りばめて、錬金でつくった金やプラチナ白金にシルバー。そんな綺麗をふんだんに使った魔法具のアクセサリー。

 商売、じゃ無くて、趣味だっていうのは、やっぱり安いものを量産したいわけじゃなくてこれしかないっていう一品物を作っていきたいから。

 マクギリウスとフィリアがいてくれたらもうそれでいい。

 結婚なんて、もうしなくてもいい。

 そんな魔法具を作って、まったりと過ごせれば、それでいいの。

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