ポンニチ怪談 その63 シシュウ制度
世襲政治家たちの無策どころか有害政策の挙句滅びたニホン国。その後、地を這うような惨めな生活を送る国民たちの数少ない楽しみがシシュウ制度襲名式だった…
「さあ旧ニホン国の恒例儀式、シシュウ制度襲名式がやってきました」
トンキョーオリンピックのために建てられた競技場に集まった人々は大歓声を上げた。
“待ってたぞ、この日のため日頃耐えてるんだからな!”
“そうだ、そうだ、早くやれ!“
「お待たせいたしております。ただいま、特別に牛乳とパンの配給を致しておりますので、いましばらくお待ちください」
アナウンスとともに今のニホン国では超高級品となった紙パックの牛乳と菓子パンが観客に配布される。
“おい、本物の牛乳かよ、ゴキブリミルクとかじゃ、ねえよな。…ゴク、う、うまい。やっぱりミルクはいいよな、し、しかもイチゴミルクじゃねえか”
“このところコオロギウエハースとか、ミールワームバーグとかばっかりだったからな。ああ、クリームの入った菓子パンなんて、半年ぶりだ”
“仕事帰りにコンビニよって、新作のパンを食べるのが楽しみだったが。なんてヒドイ生活だと思ってたが、今に比べれば、…それも”
パンにむしゃぶりつきながら、恨めしそうに競技場のグラウンドを見る人々。
怒りが絶頂になったところを見計らったように
「さて、今回は待望のキジダダ総理のご長男、チンタロウ氏のシシュウ制度襲名式です」
わあああ
“待ったぜー。奴か!”
“キジダダの息子か!あのオヤジの七光りで税金を食いつぶしたアレか”
“世襲制度に乗っかったあいつか”
観衆の注目を浴びて引きずられてきたのは元ニホン国最後の総理キジダダ氏の息子チンタロウだった。
首輪と手錠をはめられて、やせこけた体でよろけながら歩いている姿は、父親の現役時代の傲慢な態度と打って変わった惨めなものだった。
その有様を見て、さらに喜ぶ人々。
“あいつ、あんなに威張り腐って、出自を自慢してたくせに今じゃあんなだぜ、ざまあ見やがれ”
“何言ってんだ、まだまだだ。あいつらのお陰でおれらニホン国民がどんな目にあってるか”
“そうだ、世襲の政治家どものトンデモ無い政策のせいで、ニホン国は破綻して、俺たちは虫喰って、老後もないような生活だ、子どもなんかとっても無理だ。だいたい女たちは出てくか、占領のや軍の奴らが取るんだ、将来なんてあるもんか、それもこれも…”
“旧ニホン政府与党の世襲政治家どものせいだ、そいつらを持ち上げた財界だのメディアの奴らも同類だ。好き勝手やっていた、世襲ども、シシュウ制度で天罰を受けろってんだ”
“旧ニホン政府与党の世襲政治家どもガキどもが、オヤジたちの罪を受け継いで血祭りにあげられるっていうこのシシュウ制度襲名式で血祭りにあげられるのをみれば、少しは気が晴れるってもんだ”
“そうだ思い知れ、オヤジの、一族の犯した罪を償え、罰を受け継いで、殺されろ!”
“やーれ、やーれ”
“殺せ、殺せ”
人々の絶叫が競技場中に響き渡る。
それを聞いて目を見開いて、震えるチンタロウ。
目に涙を浮かべ、懇願するように傍に立つ男をみた。
しかし、男は無表情な顔で、チンタロウの腕を持ち
引きちぎった
ギャアアア
チンタロウの悲鳴
それを聞いて歓声をあげる観客。
「さあ、今回の処刑人は人間そっくりのアンドロイド、ヤマカミ君です。世襲どもの無駄な命乞いにも全く動ぜず、次々に刑を執行していきます!」
アナウンスの間にもヤマカミ君はチンタロウの両手、両足を引きちぎって、足で踏みつけ潰していた。
両足を失ってバランスを崩したチンタロウは血まみれになりながら、グラウンドの芝生にゴロゴロころがる。その芋虫のような腹を蹴り飛ばし、局部を踏みつけた。
“いいぞ、もっとやれー!”
“潰しちまえええ”
“頭を引きちぎって投げろー”
その声が聞こえたのか、ヤマカミ君はチンタロウの耳のあたりを両手でつかみ
ボコ
頭を引き抜く
恐怖に怯えた顔を観客のほうに放り投げる
ワアアアア
まるで、ホームランボールのようにその頭を取ろうとする観客たち
『な、なんてことだ、チンタロウ君も』
冷たく狭いコンクリートで固められた地下室で、テレビカメラからその様子をみていたノブンチヨ。
『ああ、怖いですよねえ。じきにアナタもそうなるんですから、ねえ、アベノ元総理の甥っ子で、あのキジ大臣の息子のノブンチヨさん』
ドア越しに監視人が話しかける。
『そ、そんな』
『あなた、家系図までだして、お家を自慢してたじゃないですか。ひいおじいさんが旧ニホン国を最初にダメにした罪人で、外国に命乞いして自国を売ったことや、カルト宗教と癒着し、国民やリベラル勢力を脅しまくり、無能政策を推し進めたオジサンや、何もしないどころか有害な大臣だったお父さんの血筋がいいんでしょう。そんなに阿保で無能で、国民に有害でもいい暮らしができてたんですものねえ。それなら、彼らが犯して逃れた罪も継いでくださいよ』
『ぼ、僕は何もしてない…』
『はあ?しようとしてたじゃないですか。父や叔父を諫めるどころか、それに乗っかって、人を踏みつけにして威張り散らして上に立とうとしてたじゃないですか』
『そ、そんな子供にまで』
『成人して、親の悪行に気づきながら、止めないなら、同罪でしょう?しかも同じ道を歩む、喜んで世襲に乗ろうとしていた、ならば彼らの罪を罰を受け継いでもらいましょう』
絶望して、うつむくノブンチヨ。
『ところで、アナタの襲名式はオジサンの命日に決まりましたよ。オジサンとおなじように銃殺とはいきませんがね、弾がもったないないですから。そのかわり元野球選手たちの剛速球を、しかも石の球で当てる、という案が出てますよ。ああ、観客たちに石をなげさせるというのもいいですね、彼ら、あなた方一族には相当恨みがたまってますからねえ。おばあさんのように串刺しにされて何日も痛みで悶えながら死ぬよりは楽ですよ、たぶん』
あざ笑うように監視人は言いながら、去っていった。
どこぞの国では出生率はさがるは、若人の自殺率は上がるはの反面、世襲の政治家の子息が傲慢極まりないふるまいをしているようですが、それで将来あるんでようかねえ。おりしも金融危機が叫ばれておりますけど。