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カラカラ

作者: ぐろーりあ

身体を重ねた。

昔、私が胸を焦がした男だった。

私の身体が温かいと言ってその男は私を抱き寄せた。それが始まりだった。


男は甘い言葉を私の上に落としていく。

あまりにも愚直な言葉を恥ずかしげもなく繰り返す。だから私も絆されていくのだ。


気遣いが細やかで、初めての事だったが、私は怖がらずに男にしがみつくことができた。

そして過去の私のことを思い返していた。


この男のことを好いていた時、抱きしめられたことがあった。私は男に好きだと伝えた。結果玉砕だったが、男は私を離してはくれなかった。


ズルい。そんな気持ちが溢れそうなのに、私の心は幸福感でいっぱいで、だからこそ辛かった。


何故この人は私を好きになってくれないんだろう。

好きじゃないのに何故こんなに愛おしそうに抱きしめるのだろう。

何を考えているのか分からず、ただ男の腕の中、幸福と絶望で胸が張り裂けそうだった。


けれど、今の私は知っている。この男はただ仲睦まじいやり取りが好きなのだ。気持ちがなくても、そんな雰囲気を楽しみたい人だと言うことを。


だからちょうど良かった。

私はもう誰のことも愛せそうになかったが、セックスや恋人らしいやり取りは経験してみたかったのだ。


ズルい男だが、乱暴するような人ではない。実際男はとても優しく私を抱いた。


男は時々私に下心をチラつかせていた。曖昧な関係に葛藤はあったが、流れに逆らわなければ、男といい関係になるのは予想がついていた。


流れるプールに入るのは、流されたい人間だけだ。

私は戸惑う振りをしていただけで、本当は望む方向に自ら進んで行っていた。


人生で一番好きになった人だった。未だに他の誰かを愛せないくらい。


そんな男に抱かれた私の心はカラカラだった。


既にこの人になんの感情もないのだなと、放心に近い感覚で思いながら快感に身を任せていた。


男は一緒に居る時は楽しいが、いない時には、都合のいいことしか言わない、いわば空っぽな人間性が浮き彫りになる人だった。


自分から抱かれたくせに、酷い言い様だと可笑しくなる。


好きでもない人間とするセックスは、合理的じゃないと言うのが感想った。

そんな淡い後悔を知られたので、そう後悔していない。


男の空虚さと私の乾燥した心が布団の上で重なっていた。

読んでいただきありがとうございます。

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