エンターティメント
「いや、カモじゃなくて……」
困り顔のタツキ。
そんなタツキにみんなが注目している。
「ルウ族のユーテム・テセティア……さんだよね?」
「おおっ!」
ユーテムは感嘆の声を上げる。
「一回、会っただけでよく名前覚えてたな」
「あ、うん、まぁ……」
答えながらも、タツキは不思議な感じがした。
この男と出会った時のことは鮮明に思い出せる。まるで映像を見るかのように。
出会ってすぐにシムがゲートを開けた。そのゲートを通り、ユーテムはエルフの森へと旅立ったのだ。
本当にあっという間だった。
シムがゲートを開ける様は本当にすごかった。
あざやか過ぎるその手際は、なんだか詐欺っぽくも見えた。
だから、うっかりユーテムのことをカモと言ってしまったわけだが……
だが、詐欺などでは断じてない。
異世界へ繋ぐゲートを開けるのは相当なこと。
事実、その後、シムは充電切れしそうになったのだから――。
シムが言うように、まぎれもなくエンターティメントだ。
「タツキも翼が治ったようで本当によかった」
と、ユーテムは親し気にタツキの肩を叩いた。
タツキはユーテムが自分の名前を覚えてたのも驚いたし、翼のことを覚えてたのも驚いていた。
タツキは火山の噴火の直撃を受け、全身火傷を負い、片方の翼が取れてしまったのだ。
あの状態で、本当によく治ったもんだと思う。
それもこれもシムのおかげだ。
ゲートを開いたり、大怪我を治したり、シムは本当にすごいんだと、タツキは改めて思った。
そのシムはといえば、ユーテムたちを道案内すべく階段を登りはじめる。
その足取りは、まるでこの建物に来たことがあるようだった。
*
階段を上る四人と、一台のファニィ。
「器用に階段上るのね」
とは、ファニィを見たルイセの感想だ。
「ルウの地にもそっくりなロボがいるぞ。これ、名前は何て言うのかな?」
とユーテムが疑問を口にする。
「ファニィだよ」
タツキが説明するが、シュウが訂正する。
「これ、ファニィじゃなくて、ファッティだよ」




