気配
「竜人ですって?」
と、ルイセはきらきらした目でアッゼを見ている。あっと言う間に泣き止んでいた。
「翼のない竜人もいるんだ」
と、ユーテムもきらきらした目でアッゼを見ている。
「え? おい!?」
アッゼは尻ごみする。
ユーテムとルイセがじりじりが近づいてくる。
「おい! 来るな! 触るな」
二人は遠慮なしに、アッゼの体をべたべた触り出した。
「翼のない竜人だ」
「翼のある竜人もレアだけど、翼のない竜人も貴重!」
たまらず、アッゼはまたドアの向こうへと戻る。
ユーテムとルイセはそんなアッゼを追いかけ、ドアの向こうへと消えた。
廊下に、タツキと少年の小さな泣き声が響いていた。
* * *
少年はハッとした。
アッゼの気配が消えたのだ。
気配を探ってみるが、どこにもいない。
――大丈夫。テッドの舟にいる。
ふと、少年の脳裏にテッドの舟にいるアッゼが見えた。
どういうわけか、ユーテムとルイセも一緒だ。
実際の映像というわけではない。気配を探って感じたイメージが、脳裏にまるで映像のように感じられた。
(あれ?)
そこで少年はおかしなことに気づいた。
映像に関しては少年のイメージだが、この声は……?
(もしかして、シム?)
咄嗟に自分で気づいたかのように錯覚していたが、それはシムの助言。そうに違いない。
(いるのなら出て来て。タツキは他ならぬシムに会いたがってるんだから)
――………。
シムは、何か語り掛けてるようだが、上手く伝わって来ない。
(シム?)
少年はシムの心の声に集中する。
――……たぶん、大丈夫。タツキはこの状況、気づいてるよ。
(え!??)
少年は絶句する。
タツキがこの状況に気づいてる?
リューオスも他の皆も少年のことを何も疑うことなくシムと呼んだのに?
少年は顔を上げた。
当然ながら、タツキが目の前にいる。
「シム、泣き過ぎだよ」
タツキが袖で少年の涙を拭いた。
「タツキもね」
少年も同じように袖で顔を拭いてやる。
二人はしばらく見つめあって、えへへと笑い出した。




