写真
「ほら」
アッゼは魔法を放出させた。
鍵がさっきよりも強く光り出す。
と、同時に壁の竜も強く光る。
「おお!」とか「ああ!」とか、ユーテムとルイセはあいかわらず騒がしかった。
「見て見てー、ここの壁画は写実的ー」
「バカだな、ルイルイ、これは写真だよー」
写真というフレーズに、少年は思わずそちらを見ていた。
目に入ったのは、風景の写真。
少年ははっとなった。
かつて、少年は博士とよく風景の写真を見ていた。
思わず、写真の方へと駆け寄る。
「これ……」
声を失う少年。
「森のようね?」と、ルイセ。
「林かも知れないぞ」と、ユーテム。
深刻な表情の少年に反し、ルイセとユーテムはお気楽だった。
「エルフの森に似てない?」とユーテムが聞くと、
「んー??」ルイセが唸っていた。
――違う。これはかつての天空岩。
そんな言葉が出そうになる少年だった。
それは、まだ、地上の大噴火が起こる前。
かつての天空岩には豊かな森があった。
シュウは何度かそこに足を運んでいた。
いつか、地上にもこんな森ができたらいいな、と博士と話もしたりした。
そんなことを思い出すと、少年は泣きそうになっていた。
「自分の生まれた場所のことは覚えてるんだろう?」
いつの間にか、少年のすぐ後ろにアッゼが立っていた。
「懐かしいだろ、ここ?」
少年は振り返ることができなかった。
ここでアッゼの顔を見たら、間違いなく泣いてしまうだろう。
泣いてる顔を見られたら、自分がシュウだとアッゼに完全にバレてしまう。
――泣いてもいいよ。
そんな誘惑に負けそうになる。
でも、泣くわけにはいかない。
ここは天空岩の研究所の中にある魔導エレベータだ。
少年はここで生まれた。
少年にとっては懐かしい場所でも、シムにとっては未知の場所なのだ。
シムとして振舞っている少年としては、ここは自分にとって知らないフリをするべきなのだ。
ふと、少年は写真の下あたりに取っ手があるのに気づいた。
いや、取っ手というより、それはドアノブだ。




