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機械仕掛けの魔法使い~シム誕生編~  作者: チク


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36/48

写真


「ほら」

 アッゼは魔法を放出させた。


 鍵がさっきよりも強く光り出す。

 と、同時に壁の竜も強く光る。

「おお!」とか「ああ!」とか、ユーテムとルイセはあいかわらず騒がしかった。



「見て見てー、ここの壁画は写実的ー」

「バカだな、ルイルイ、これは写真だよー」


 写真というフレーズに、少年は思わずそちらを見ていた。


 目に入ったのは、風景の写真。

 少年ははっとなった。

 かつて、少年は博士とよく風景の写真を見ていた。


 思わず、写真の方へと駆け寄る。


「これ……」

 声を失う少年。



「森のようね?」と、ルイセ。

「林かも知れないぞ」と、ユーテム。


 深刻な表情の少年に反し、ルイセとユーテムはお気楽だった。


「エルフの森に似てない?」とユーテムが聞くと、

「んー??」ルイセが唸っていた。



――違う。これはかつての天空岩。

 そんな言葉が出そうになる少年だった。


 それは、まだ、地上の大噴火が起こる前。

 かつての天空岩には豊かな森があった。


 シュウは何度かそこに足を運んでいた。

 いつか、地上にもこんな森ができたらいいな、と博士と話もしたりした。



 そんなことを思い出すと、少年は泣きそうになっていた。


「自分の生まれた場所のことは覚えてるんだろう?」

 いつの間にか、少年のすぐ後ろにアッゼが立っていた。

「懐かしいだろ、ここ?」


 少年は振り返ることができなかった。

 ここでアッゼの顔を見たら、間違いなく泣いてしまうだろう。

 泣いてる顔を見られたら、自分がシュウだとアッゼに完全にバレてしまう。



――泣いてもいいよ。

 そんな誘惑に負けそうになる。


 でも、泣くわけにはいかない。

 ここは天空岩の研究所の中にある魔導エレベータだ。

 少年はここで生まれた。

 少年にとっては懐かしい場所でも、シムにとっては未知の場所なのだ。


 シムとして振舞っている少年としては、ここは自分にとって知らないフリをするべきなのだ。




 ふと、少年は写真の下あたりに取っ手があるのに気づいた。

 いや、取っ手というより、それはドアノブだ。


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