研究所
* * *
タツキはメノウの手を引き、なんとなく研究所の方に来ていた。
すると、メノウはタツキの手を振りほどき、
「テッドの舟には帰らないから!」
あーそうか、とタツキは納得した。
研究所の向こうに、テッドの舟がある。
メノウはタツキがテッドの舟に帰すつもりだと思ったんだろう。
「違う違う、たまたまだよ。テッドの舟と同じように、天空岩にも研究所があるんだ」
タツキは下を指さす。
「本当だ」
メノウは目を丸くした。
テッドの舟にもある研究所とまったく同じ建物があったのだ。
タツキは研究所へと降りて行く。
メノウも着いて行く。
研究所のすぐ外にシズクがいた。
シズクは飛んでる二人に気づき、手を振っていた。
そんなシズクのそばへ、まずタツキが舞い降りた。続いてメノウも舞い降りた。
「どうしたの?」
と尋ねたのはシズクだった。
タツキが元気なさそうに見えたのだ。
「メノウが家出するって言ったら、リューオスが怒っちゃって……」
「だって! カマボコ食べたお父さんが悪いもん!」
メノウが力説する。
「カマボコ食べるなんてひどいお父さんだよな!」
と、タツキは同意しかけたが、そもそもそのタツキはメノウの桃を食べたのだ。
「……お父さん、よほどお腹空いてたんじゃない?」
「どっちの味方なの!」
タツキの煮え切らない態度は、メノウの怒りに油を注ぐ。
「あ、いや、テッドの舟にも研究所があるなーと思って」
タツキは、自分でも訳の分からないこと言ってると思った。
どっちの味方なの?という問いに対する答えが、研究所があるなーはどう考えてもおかしい。
「そうよ。設計した人が同じなの」
と、シズクが言った。
「だから、同じような建物なんだ」
と、メノウが納得しかけたが、自分は今怒ってたんだと思い出し、すぐまた不機嫌になった。
「まあまあ、落ち着いて」
と、シズクが言う。
「ちょうど、カマボコがあるから、味見してって」
シズクの言葉に、タツキもメノウも従うのだった。




