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機械仕掛けの魔法使い~シム誕生編~  作者: チク


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20/48

完成


     *


 シズクとともに眠る少年を見ているのは、ラン博士だ。


 ラン博士が焦っていた。



 シズクはその理由を知っていた。

 機械の少年がいつまで経っても目を醒まさないからだ。


「竜繭で眠るシミュレーションドール、ムリがあったか……」


 シミュレーションドール、元々はドワーフが作り出した機械の人間。人間や竜人が少しずつ改良していった。



 そして、今。

 ランは竜人に近いシミュレーションドールを作りたかったのだ。


 それは成功したかのように思われた。

 シズクもその誕生を楽しみにしていた。

 

 だが、完成したはずの機械の少年は一向に目を醒まさない。


 竜繭に包まったまま眠り続けていた。



 三日目ぐらいまでは、そろそろ目覚めるんじゃないかと思っていた。

 一週間経つと心配になってきた。


 十日ぐらい経つと、強引にでも起こそうかということになる。

 大きな音を出したり、揺すぶってみたりするが、目を醒まさなかった。


 ランもシズクも諦めたわけではなかったが、もう目を醒まさないんじゃないか、もはや眠ってる少年を見るのがいつもの日常になった頃。


 それは突然やってきた。



 少年が目を醒ましたのだ。

 声も出ないシズクに対し、少年は優雅なものだった。

 竜繭を消し、すくっと立っていた。


 そして、シズクの名前を呼んだのだ。

 ということは記憶がしっかりしている。

 何も不具合はなさそうだ。


 その後は駆け付けたラン博士とシズクは、少年に抱きついて喜んでいた。


 それだけ二人は、少年の誕生が嬉しかったのだ。




     *


「シズク?」

 リューオスが心配げに顔を覗き込んで来る。



「……弟ですって?」

 シズクがつぶやく。

 シムなんて子は、シズクは知らない。


「シムが言ってたよ。天空岩で生まれてシズクの弟みたいなもんだって」

「………」

 リューオスの言葉にシズクは黙り込む。


 あの竜繭で眠る少年はシムではない。

 あの子の名前は……


 いや、名前は問題ではない。

 シズクの弟みたいな存在は一人しかいない。


「あの子、生きてたんだ」

 そう実感すると、本当に嬉しいシズクだった。


 その子に会いに行こう!

 と立ち上がるが、急にそわそわしてしまう。

 会って変なことを言ってしまいそう。


 まずは気持ちを落ち着けよう。


 そのためには……


 博士に報告しよう。

 亡くなってる博士への報告、すなわち墓参りに行くことにした。


「そろそろ、おいとまするわ」

 と、シズクは立ち上がる。

「ヤイノもいつでも本を借りに来て」


 言葉をかけるがヤイノはあいかわらず読書に没頭したまま。

「本当に感心だわ」


 シズクのつぶやきに、リューオスも同意だった。


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