懺悔
水難事故に関する描写があります。
パニックになったヤイノは上に上がろうとするが、なぜか上がれない。
片方の翼が倒れた柱の下敷きになっていた。
助けを予防にも水中では声も出せない。
ヤイノは水の中でもがいていた。
タツキに嫉妬したからこんな罰を受けたのか、とヤイノは自分の行動を悔いていた。
スティナの気を引きたいがために犬に絡まれたタツキを無視したこと、翼も魔力も大きくなっているタツキに嫉妬したこと、次に会えたらタツキに謝らなきゃ。
だが次はないだろう、水の中でヤイノは思った。
ヤイノの脳裏に、水の中を犬の背に跨っているスティナの姿が浮かぶ。
赤紫に輝く髪がこの世界の何よりも美しかった。
――これって走馬灯ってやつ?
苦しみながらも、ヤイノはどこか客観的だった。
『ゲートの管理よろしくね』
脳裏のスティナがそんなことを言った。
――うん、ボク、するよ。ゲートの管理……
ヤイノがそんなことを思った時だった。
不思議なことが起こる。
――本当? 嬉しい!
そんな声が聞こえた。
――え? 思い出のはずの相手が話しかけてきてる?
そこで、ヤイノは水を吐き出していた。
ゲホゲホ水を吐き出しながら、ヤイノは誰かに背中をさすられているのを感じていた。
そこは水の中ではなかった。
水を吐き切ったヤイノは安堵していた。そこで意識を失っていた。
* * *
天空岩は雨が降っていた。
気を失ったヤイノをおんぶしながら、栗色の髪の少年が歩いている。
その傍らにはドラム缶型のロボがついてきていた。
「ファッティって水陸両用だったんだね」
少年がそんなことを言った。
「しかし、久々に天空岩に来たよ」
少年はどこか感慨深げだ。
「……うん、ボク、するよ。ゲートの管理……」
ふと、ヤイノがそんなことをつぶやく。
「本当? 嬉しい!」
少年はそう返事した。
「ゲートの管理をしてくれたら、僕も助かる。シズクも喜ぶだろうし、博士も……あれ?」
少年はヤイノが起きたのかと思ったが、違った。
返事がないので、背中のヤイノを見ると、ヤイノは寝てた。