No.8
作戦会議が終わり、俺は警察署を出た。
家に帰るべく俺は駅へと向かっていた。
もう夕方になっていた。
夕陽に見とれていると、突然腕を捕まれボロい家に引きずり込まれた。呻き声を出してしまうほど気を抜いていたのだ。足が引っかかってミシミシという音が出るほど古いのだろう。
「おい、どういうことだよ。CLOWN。」
この声は......カタハか。
後ろに振り向くと、カタハが鬼の形相で仁王立ちしていた。
「どういうこと?CLOWN」
そして、違う声も聞こえる。これは、、ああ、
やらかした。コイツの能力を忘れてた。
大きな帽子を被り、マスクをし、殆ど顔も見えないが。
コイツはユウ。追跡の能力者。
自分と1度でも目が合ったことのある人物の現在地や動きを特定することができる能力。
「何でお前が奴等の本部にいたんだ?」
俺はやはりバレていたか、と思う。
「......お前が本部にいた事を皆にも伝えといた。もうすぐ此処に来るだろう。しっかり話してもらうぜ?CLOWN?」
俺は、仲間に捕まった。
▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒15分後▒▒▒▒▒▒▒
「ねぇ、どういうこと?CLOWN?」
皆が入って来た。その中でも1番お怒りなのはカイユだった。いつもは温厚なカイユがここまで怖いと思うのは初めてだった。
「ああ、俺は《JACK》対策本部にいた。
今さっきまで、な。」
そう言うと、一気に皆の顔が険しくなる。
「もしかして...私達の情報を流してたり....?」
スイでさえも眉間に皺を寄せていた。
「そんなわけあるか!俺は彼奴らに俺達が通らない方のルートを作戦会議でも教えてるし。
ただ雇ってもらって奴等、上層部の情報を探ってるだけだって。」
この通りだから。俺があの人を用いて少しばかり企んでいることまでは教えないが。
「なら、いいんだけど。ああ、寿命が短くなった
気分だわ。まぁ、私はそんな事ないって信じてたけどね。」
スイがほっとした表情を見せた。
他のメンバーも何だ、そんなことか、と言いながら帰っていった。
残ったのは俺とライとカタハ。
「本当に、それだけか、?」
ライが俺に向けて言う。
声は不安を含んでいた。
「......」
「......ああ、そうだよ。」
「ッ!ならいいんだ。帰るぞ、カタハ」
「ああ。」
2人は帰っていった。
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「すいません、資料室の鍵かしてくれませんか?」
「ああ、いいですよ。貴方なら。」
「ありがとうございます。」
《JACK》対策本部に所属する金森捜査官は、資料室の鍵を知人に頼んで貸してもらい資料室に入った。そう、彼のことが気になったのだ。
天崎、と名乗る自分が雇っている高校生。
観察眼に優れており、《JACK》の犯行の時はいつも証拠や抜けている点等を指摘している優秀な彼。何時かは警察官になるのだろうとばかり思っていた。そうして思ったのだ。彼は何かある。
詳しくは分からないが、何処か賢く何か隠されているような気がする。もしかして何か警察官と関わりがあったのではないか、と。
そうして、俺は情報を掴んだ。資料室の奥、そこには不自然な鍵穴があり、その奥には上層部しか入れない特別な資料室があると。警察官の中では都市伝説のような存在になってしまっているがそこまでする価値がある。そう思い、噂の鍵穴に鍵を入れ、入ったのだ。そこはごく普通の資料室だった。だが、1番古い資料から今日までの新しい資料まで分けられている事に気付いた。そして、
まず1つ目から見ていこうと思い、かれは最古の資料を手に取った。日付まで付けられている。
題名には、【No.1】と書かれてあった。
1ページ目を開くと、そこには書類があった。
その内容は彼が信じることが出来ない内容だった。そこには、
「天崎千景、天崎輝夜は天崎凛月を【能力保持検体申し】に同意します......?」
そこには今の彼の面影がある少年の笑顔の写真が貼られており、最後には天崎というくっきりとした判子が押されていた。
「何だ..?この書類は?」
そこには、【天崎凛月】と書かれてある。
これは、彼の名だ。
どういうことだ?【能力保持検体申し】って。
しかも、此処にあるということは、上層部がこんな事をしでかしていた?冷静に考えるとありえない話だ。能力を保持する検体?”検体”ということは何かしらの実験をしていたということか?
あの子は、、、何者なんだ?
そして、恐る恐る次のページをめくる。
次のページには実験内容が書かれてあった。それは無茶苦茶な内容だった。今にも吐き出してしまいそうな内容だ。こんな事を、まだ12歳の彼にしていたのかと思うと上層部を疑わずには居られなくなった。身を削ったり、烏の羽を食わせたり、3日間食事を与えなかったり、薬品を投入したり、その他はもう考える事すら止めてしまいたいほど非人道的な事だった。まるで、マウスにしているような事だ。
そして、烏の羽を食わせる、の後には写真が付いており、少し痩せた彼は上半身を晒しておりその背中には烏のような大きな羽根を広げていた。
彼は、泣いていた。そして、その写真の後にはこう書かれてあった、『飛行』の能力保持。
そして、青紫色の薬品を投与した、の後には
『言霊』の能力保持。と、書かれてあった。
その次の項目にもそれぞれ能力保持。と書かれてあり、
その後もパラパラとめくったが、全ての項目に能力保持。と書かれ続けていた。手が、ブルブルと震えた。そして、稀に写真があったが彼はもう顔に心情が表れていなかった。もう、痛みという概念も彼の中から消え失せてしまったのかもしれない。日に日に笑顔が増えていく彼以外に写る人々の姿。その中には、自分のよく知る上層部の警官も居た。信じられない。もう、何を信じていいのかも分からなくなっていた。そして、最後のページには、こう書かれたあった。丁度最初のページから1年が経っている。1年も......
”彼は我々の最高傑作だ。これから成長すれば警官となり、良い戦力となるだろう!”
怒りが、沸いた。そして、目線を下に移した。
これは、5年前の今日の記録だ。天崎凛月が研究所から逃走。保護命令を出している。
彼は、逃げ出したんだ。研究所という地獄から。
No.1の資料を閉じて、次をパラパラと見ていく。すると、全て、3ページ程で終わっていた。
次も、その次の資料も。そして、全て実験の項目は1つ。そして、最後には孤児院又は施設へ移動。そこで能力のコントロールを身につけ、20になればそれぞれ部署に配属、と書かれある。
そして、No.2以降の資料の最後の文にはこう書かれてあった。
”No.1以降、適合者は現れていない。
これらは全て失敗作である。”
資料の中で稀に孤児院又は施設から逃走と書かれている物があった。彼らは、何をしているのだろうか。能力を隠しながら怯えながら生きているのではないか、と。そう思えたのだ。そして、最新の資料のページを開いた時、閉めたはずの戸がギィィという音を立てて開いた。




