No.3
シャッターを開け、埃が立つ。
3ヶ月経つのか。
中に入るとジャリジャリと砂と靴の底が擦れる音がした。
「うぃーっす!元気にしてた?坊ちゃん?」
此処は、《JACK》のメンバーの溜まり場だ。
大阪、新世界。シャッター街の一角。
あまり知られてはいないものの《JACK》はメンバーが何人かいる。
中に入ると久々に会ったメンバーが声を掛けてきた。赤く髪を染め、両耳にピアスをし、ぶかぶかの白いTシャツに黒ズボン。銀の輪が二重になっているネックレス。
「坊ちゃんって呼ぶな、、」
「そうそう、キミタチ高校通ってるんだって?」
そうふざけた【ライ】に、
「互いに探るなと言わなかったか?」
「おお、ゴメンゴメン。【CLOWN】、オレも抜けたくないしね。《JACK》から」
「それよりライ。セキリュティはどうなってる?」
聞くとライはドヤ顔で言った。
「ああ、万全だ。全部いつでも解除できるぜ。」
ライは、インターネットを自由自在に解除・設定できる能力を持っている。防犯カメラや、通信機器まで解除できる。
《JACK》は、そんな化物じみた能力者の集まりだ。
「ねぇ、CLOWN。今回は何故呼ばれたの?私達。」
【スイ】が俺に言う。
「ああ、これから俺達《JACK》は活動を再開する、徹底的に奴らを叩きのめす。協力してくれるか?」
「「「「「「「「了解、我らがCLOWN」」」」」」」」
「OK、例のホテルだ。向かうぞ。」
俺は自然と微かに口角が上がっていた。
彼は自然と微かに口角が上がっていることなど気付いていない。
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「おい、逃げ出したぞ!追え!」
忌々しい奴等の記憶。
腕、足首に残る枷の痕。
「た、すけて。助けてよ...う、ッッッ」
物陰に隠れ、必死に息を潜め過ぎ去ったのを見計らい逃げ出した。
駐車場はガソリンの匂いが充満していた。
嘔吐いてしまいそうだった。
今でもあの時を思い出し気分が悪くなる時がある。
走ってる間に脱げてしまった靴。
足の指、足の裏からは血が流れていた。
痛みも忘れ走った。
遠い何処かへ。
奴等の手の届かない場所へ。
その事だけを考えて。
この時ほど奴等を
両親を
そして能力者となってしまっていた自分を
恨んだ時があっただろうか。
未だ12歳だった俺には負担が大きすぎたんだ。
「俺は、化物だ。」
もうすぐ夏休みが終わる。
ゲリラ豪雨の最中だった。
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「お、ぃ 起、きろ」
「お、ぃ 起、きろ」
「お、い起きろ」
「おい、起きろ。CLOWN」
寝て、いたのか。
俺は助手席に座っていた様だ、後部座席にはカタハが座りイヤホンを付け洋楽を口ずさんでいた。
窓の外を見ると、夜景が広がっていた。
「おーいCLOWN。もうすぐ着くんだから。
やっぱり坊ちゃんだねぇ」
運転席からライが言ってくる。
目線を下げ、ナビの左下を見ると時刻は7時30分とデジタル数字で映っていた。予告時間まであと20分か。
「五月蝿いぞ、ライ。余計なお世話だ。」
そう言うと、
「魘されてたぞ、例の夢を見てた?」
....!核心を突かれた。
「....ああ、奴等の夢だ」
正直に話す。
車が大きな交差点で止まる。
「そう、か。」
「、!」
「大丈夫だ、オレらが付いてるから。」
そう、俺には皆がいるんだ、あの事は忘れて、今は仕事に集中しろ。
俺は《JACK》《黒羽》の【CLOWN】!