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明日なんて来ない  作者: クロット
6章 明日なんて来ない
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第七十四話

「はあっ!」

レンが右手で超高速連打を放つ。


が、所詮チャンピオンには見飽きた攻撃だ。難無くそれを回避する。


「へっ、様子見にしてももうちょいマシなのを・・・!?」

チャンピオンが嘲ろうとした、その時だ。


レンの拳は歪み・・・2つに分かれた。虚を付かれたチャンピオンの体に2つのパンチが直撃する。


右手に宿すは神速の飛龍。・・・そして幻惑の陽炎龍。


怯まずチャンピオンは蹴りを放つ・・・が、レンはそれを左手で受け止めつつその手を捻らせチャンピオンの腹部を叩いた。


左手に宿すは鉄壁の甲龍・・・そして、反撃の剣龍。


攻撃を受けたチャンピオンの腹部は裂け、出血していた。これまで見たレンの4つの拳とは違う不可解な現象に・・・思考を巡らせる。


「何だ・・・?まるで1つの腕で2つずつの戦法を操ってるような・・・いや、そうか・・・俺が述べたそのままの意味か。へっ・・・読めたぜ、レン。てめえはその両手両足に合わせて8つの戦法を仕込んでやがるな?」


ニヤリ。あくまでチャンピオンは不敵に笑った。レンもまた、感服の笑みを浮かべた。たったの2手でこちらの攻撃を看破するとは・・・。この男のセンスには舌を巻くばかりだ。



「そこまで分かっているのならもう何も隠す必要はあるまい・・・受けてみろ、私の新たな究極奥義を・・・!」

叫びながらレンは天高く跳躍した。その四肢が8つの異なる動きを見せる。


(ご明察の通り・・・私は更なる力を得る為その手足1本1本で2つずつ、計8つの戦法を同時に放てるようにした。・・・そして、そこに加えて更にもう1つ。何があろうと私の最強の拳は変わることはない・・・!)


きらり、レンはその牙を剥いた。口で龍天星拳法を放つ為だ。


「九頭・龍星拳・・・!!!」

空中で向きを変え急降下、両手両足・・・更には口で放つ9つの龍がチャンピオンに襲い掛かる。


もはや避ける事もままならない・・・というより、チャンピオンは避けようともしなかった。


拳を打ち出し・・・正面から、それを迎え撃った。


ばばばばばばばば・・・どごおっ!!


2人の影は重なり交差した。


「・・・。」


すたっ・・・と、レンが着地する。チャンピオンは拳を伸ばしたまま動かない。


くるり、レンが振り返りチャンピオンの方を見た。


「・・・見事だ。九頭龍星拳の内8つまでをその身で受けながら、最後の一撃に対して諸刃(ダブルソード)反撃(カウンター)を放つとは・・・やはりあなたは最強のチャンピオンだった・・・。」


瞬間、レンの歯は砕け散り彼は倒れた。


「へっ・・・どうしてもその一撃だけはまともに食らっちゃいけなかったからな。危なかったぜ・・・流石だよ、すげえ技だった。」

そう言いながらニヤリとするチャンピオンの腕は硬直していた。龍天星拳法の効果だ。


「・・・。」

敗北したとはいえ・・・レンは満足していた。


彼が最強と信じる拳を、彼が最強と信じる男が認めたのだ。

長きに渡る因縁に、遂に決着がついた気がした。


幸せそうに失神しているレンを見ながら、チャンピオンはポケットに手を突っ込んだ。


「・・・ふふっ、次は・・・あいつだな。」

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