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明日なんて来ない  作者: クロット
6章 明日なんて来ない
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第七十二話

『さあいよいよ始まります年に一度の一大イベント、チャンピオンチャレンジャートーナメント!!栄光のチャンピオンに挑むのは今年は一体誰になるのでしょうか!?』


超満員の観客の中、早速その第一回戦が始まろうとしていた。


『まずはこの男・・・その邪悪な拳はチャンピオンにも届きうるのか?ファイトきっての嫌われ者・・・ランク7位、波風轟選手だーっ!!』


轟と蛭川はまたも無愛想に入場してくる。もうブーイングにも慣れたものだ。


『対するは・・・蘇った機械の体、今年もまたチャンピオン御影選手との激戦が期待されます・・・ランク3位、桐生聡選手だーっ!!』


聡が佐々木コーチと共に入場してくると、辺りは一転して大歓声に包まれた。



「ふふふ、皮肉なもんですね・・・機械の体と薬漬けの体、人の手によって培われた物に変わりはないのにこうまで反応が違うとは・・・」

楽しそうに語る蛭川を轟は一瞥した。


「くだらねえ・・・。」

不幸にも手にした悲しき力と自ら進んで手にした邪な力・・・その違いだと轟は考えていた。


(関係無いさ・・・結局は勝利こそ全てだ・・・。)


向かいにいる聡を睨む。すると、彼は轟の方へ歩み寄ってきた。


「波風轟・・・周りはあれこれ言うが俺はお前の勝利への執念は有りだと思っているし、尊敬すらしている。・・・良い試合をしよう。」

轟は何も答えず、視線を逸らした。


聡は自身のコーナーへと戻りながら、リングの下にいる蛭川を睨んだ。この男の謀略が絡んでいる事は間違いない。

蛭川は微笑みながら一礼を返す。


(ふふふ、見せてもらいましょうか。かつてのプロジェクトとどちらが上かをね・・・。)


カァァアン!試合開始の鐘が鳴った。



開幕、聡は猛攻を仕掛けた。機械仕掛けの強烈な拳が轟の胸に決まる。


・・・しかし、彼はまるでダメージを受けていない。

(やはり効かないか・・・ならば!)


瞬間、聡は口から炎を吐いた。轟の体が爆炎に包まれる。


『ああーっと!桐生選手火炎放射だ!!流石の波風選手もこれは厳しいかー!?』


だが、轟は何も無かったように炎から現れた。


その様子に蛭川はニヤリと笑った。

(ふふふ・・・あの薬には痛覚を遮断するような効果もある・・・並の炎なんかじゃ止まりはしませんよ。・・・さあ桐生さん、どうします?)


しかし、当の桐生にはまだ秘策があった。

例え鋼のような肉体を持ち、炎ですらダメージを受けないとしても・・・相手が人間である以上その内側まで頑強とはいかないはずだ。

電撃。その手に仕込んだ改造スタンガンから放たれる強烈な電撃を体の内側に流し込めば、轟ですらひとたまりは無い・・・聡はそう考えていた。


「喰らえ・・・!」

聡が手を伸ばそうとしたその時・・・!


「ゴホッ!がはっ!」

突然、轟は吐血した。後ろを向き咳き込み続ける。


(・・・!?いや、何かは知らないがチャンスだな・・・!!)

隙だらけのその背中を掴もうと・・・聡が手を伸ばす。


瞬間、轟はそのまま身を翻し手刀で薙ぎ払った。攻撃のモーションに入っていた聡は避けきれず、その脇腹に直撃する。


(・・・む!だが、まだ吹き飛ばされてはいない。これで・・・!)

聡はそのまま怯まず轟に掴みかかろうとする。


・・・しかし、彼の視界は歪んだ。景色が斜めに流れていく。


「・・・何!?」

彼は気付いた。先程の轟の攻撃で脇腹から肩にかけ、体を斜めに切断されてしまっていたのだ。地に立ったままの胴体を置き去りに、上半身が地に落ちる。


「聡!!大丈夫か!?」

慌ててセコンドの佐々木が飛び込む。・・・それに続いて、蛭川もリングに駆け上がった。

「波風さん!」


『おおっーと、これは桐生選手真っ二つにされてしまいました。堪らずセコンドによる試合終了宣言です。・・・しかしこれはどういう事でしょう?波風選手側も同様にトラブルの様ですが・・・』


「波風さん、大丈夫ですか・・・?」

尋ねる蛭川に、轟はロープにもたれつつ応えた。


「ああ・・・なんて事はねえよ。」

そう言うが、リングに撒かれた夥しい血溜りがその異常さを示していた。


「・・・。」

「何でもねえって・・・帰るぜ。」

不安気にこちらを見る蛭川を窘め、轟はリングを降りた。


まずは1勝。轟はトーナメントの駒を次に進めた。

とはいえランク3位の聡を倒したのだ。残る敵は実質2位のレン1人と言えよう。


ついに翠の・・・チャンピオンの影が見えてきた。


だが・・・煮え滾る彼の意志とは裏腹に・・・破滅の影もまた彼の肉体にじわじわと侵食して行っていた。


どくん・・・!



そんな様子を客席から観察する姿が一つ。

ランキング2位、レン・ウェンシアだ。


「あの強さ・・・どうやら決勝の相手は彼になりそうだな。」

(フフフ・・・だが、倒せる。今の私なら確実にな・・・!)


ニヤリと笑いながら彼も会場を去っていった。


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