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明日なんて来ない  作者: クロット
6章 明日なんて来ない
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第七十話

試合開始と同時に、三輪は深く飛び込んだ。


轟のパンチは大振りの一撃必殺・・・ならば距離を詰め当たらぬ位置からコンパクトに攻めるのだ。

ワールドチャンピオンズファイトはこの喧嘩の天才に、理にかなったテクニックをも身に付けさせていた。


三輪が轟の顎下で屈む。轟は何の抵抗もなくそれを受け入れた。


(・・・随分容易く懐に入れてくれるんだな。・・・これでは、このまま打ち込めるではないか・・・!?)

余りに隙だらけの相手に逆に三輪は惑ったが、そのままチャンスを掴むべく・・・渾身のアッパーを放った。


ごきっ!!


『おっと三輪選手強烈なアッパーカット!!これは流石の波風選手も・・・!』


だが、轟は顔だけ上を向いただけだった。すぐに視線を三輪に戻す。

・・・先程と同じ、無機質な目で。


(・・・!その目で・・・その目で俺を見るな・・・!!)

再び三輪が攻撃を仕掛けるが、轟はそれより早く彼の腹部に膝蹴りを入れた。


どぐしゃん!!


次の瞬間、三輪はコーナーポストに磔になっていた。べきべきと音を立てそれもへし折れ、三輪は地に伏した。


『あー!波風選手凄まじい反撃です!!これは立てません・・・。』


三輪を応援する声も、轟を詰る声も・・・その圧巻に完全に止んでしまった。

轟はそのまま、背を向けリングを降りようとした。


「待て・・・殺すぞ。」

彼を引き止めるその掠れた声に振り向くと、まだ三輪は立っていた。口からは大量の血を流し・・・その腕は折れてしまっているのだろう、だらりと虚しく垂れ下がっていた。

誰の目にも、もう戦えないのは明らかだ。


しかしその目にだけは、まだ意思が残っていた。


「来い・・・もう一度だ。」

三輪はニヤリと笑った。




「急げ!担架の用意だ!!」

「出血が激しい、輸血も必要だぞ!!」

「さあ、どいたどいた!!」

大勢の救急隊員が行き交う中、三輪は担架に乗せられ運ばれて行った。


轟はあれから・・・虫の息の三輪へ向け、審判に止められるまで何度も何度もパンチを放ったのだった。


「人殺しー!!」

「2度とリングに上がるんじゃねえ!!」

「帰り道に気を付けろよ!後ろからぶっ刺してやるからな!!」

観客の罵声は開始前をはるかに上回っていた。


『どうか皆さん落ち着いてください!!三輪選手には優秀な医師たちが付いています、どうか落ち着いて!!』

実況のフォローもまるで届きそうに無い。


「お疲れ様です。行きましょう、波風さん・・・。」

蛭川にタオルをかけられ、轟はリングを降りた。


これで彼はチャンピオンチャレンジャートーナメントへの出場権を得たというのに、その目はいくらも満足そうではなかった。


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