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明日なんて来ない  作者: クロット
4章 遥かなる頂点
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第五十話

「ナイン・・・テン!!!!」


審判の宣言と共に試合終了の鐘が鳴り響く。

見事にテンカウント。チャンピオンは起き上がらなかった。


・・・しかし彼もまた最強と言われた男。1分とかからず意識を取り戻した。


「へへ・・・まいった・・・負けたよ。まさかあそこであんな必殺技を隠し持っていたとはな。」

そう言うと彼は握手の様に翠の右手を自身の右手で握りしめた。


「・・・チャンピオン。」

「なーに言ってやがる、そいつは今日からお前の肩書きだぜ。・・・そら見なよ、チャンピオン・・・!」

すると彼は握った翠の手を高く掲げた。皆に見えるように・・・新たなチャンピオンの誕生を祝うように・・・!


瞬間、会場が拍手と歓声に包まれる。


「やったな・・・ボーイ。」

「お前ならまさかとは思ったが・・・。」

「アサギ・・・君に先を越されてしまうとはね。」

客席のダルベス、聡、レンも拍手と共に翠を讃えた。


「遂にやりやがったな・・・にーちゃん!」

リング際で拳を振る遠藤。その横で、飛岩も拍手をしていた。しかしその目に宿るのは賛辞の意だけでは無い。


(流石だな・・・翠。・・・来年は、来年こそはこの俺が・・・!)

彼の胸では決意の炎が燃え盛っていた。


「おめでとう、翠君!!それからチャンピオン、良い試合だった!!・・・本当に!!」

満田が2人の肩に手を乗せながら涙を流し始める。


「だから俺はもうチャンピオンじゃ・・・まあいいか。」

彼は困ったように顔を掻きながら笑った。


そんな中、翠はきょろきょろと辺りを見回した。しかし、目的の人物は見付からない。

(轟・・・行ったのか。・・・親父。これは親父に捧げるベルトだぜ・・・。)


会場の熱は、まだ暫くは冷めそうに無かった。




病院、手術室の前。

大急ぎで戻ってきた轟は、手術中のランプが消えるのを今か今かと待ち望んでいた。

チクタクと、静かな廊下に時計の音だけが響く。


(オッサン・・・翠は勝ったぜ。次はあんたの番だろ・・・なあ・・・。)


ぶつん。手術中のランプが消える。


「・・・!!」

慌てて立ち上がった轟の前に医者が現れた。

緊張した表情で医者を凝視する。


・・・しかし彼は・・・無念そうに首を横に振った。


「手を尽くしましたが・・・残念ながら・・・。」

「・・・っ!!」

轟はへなへなと、再びゆっくり座り込んだ。


そして俯き、何も答えなかった。

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