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明日なんて来ない  作者: クロット
4章 遥かなる頂点
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第四十八話

『さあ今井さん、先程のはカウンター・・・なのでしょうか?チャンピオンらしからぬ強引な攻めでしたね。』

インターバルの間に実況が皆が抱いているであろう疑問を投げかける。


『らしからぬ・・・確かに殆どの人はそう思っているでしょう。しかし、私を含めた往年のファンは知っているはずです。・・・あれこそチャンピオンの真の姿なんですよ。殴られても構わないから一発でも多く殴り付ける・・・それが彼の本来のファイトスタイルなのです。』

解説の今井にも若干の興奮が見える。


『・・・さて、先程の一撃ですが・・・あれは立派なカウンターですよ。本来、カウンターというのは相手の攻撃を躱しつつ放つじゃないですか?すると相手は当然自分の攻撃が外れた事に気付くから、慌ててその手を引っ込め反撃に備える訳です。結果としてカウンターの威力は半減してしまう・・・トップランカーの試合となれば尚更です。』

自分の両手を選手に例えて身振り手振りで説明する。


『しかしチャンピオンのカウンターにはそれがない。敢えて相手の攻撃を躱さないんですよ。・・・するとどうなるか、相手は当然自分の攻撃が命中しているから、その手を引っ込める事はしない。つまり、チャンピオンはそのまま無防備の相手にカウンターの威力を100%伝える事が出来る・・・。おまけに普通のカウンターの様に相手の攻撃を読む必要も無い。何処から来ようが受けてから放てば良いだけですからね。』

『なるほど・・・では普通のカウンターの上位互換という事ですか?』

しかし今井は首を大きく振ってそれを否定した。


『いやいやまさか・・・だって相手の攻撃を食らわなきゃいけないんですよ?普通は初撃を受けた時点でよろけるかダウンしてしまう。・・・あんな事、ずば抜けたタフネスを持つチャンピオンじゃなきゃできませんよ。まさに諸刃の両刃剣、・・・ダブルソードカウンターとでも言いますか。そして、恐らくその真の恐ろしさが現れるのはこれからだ。・・・さあ、始まりますよ。』


カァァアン!!第7ラウンドの鐘が鳴った。


手痛い一撃を受けた翠は警戒し手を出せずにいた。

それもそうだ、半端な攻撃を仕掛ければまた例のとんでもないカウンターが飛んでくるのだから。

そんな様子を見てチャンピオンはニヤリと笑う。


「どうしたよ・・・?来ねえなら・・・こっちから行くぜ!」

そう言いながら彼は猛然と拳を振り回した。翠は回避に専念し、ただじっとそれを耐える。


『ああーっとチャンピオンラッシュ、ラッシュです!御影選手防戦一方だ!!』

『そう・・・これこそがあのカウンターの恐ろしい所だ。別にチャンピオンは相手の攻撃を待つ必要なんて無い。自分からも攻撃を仕掛けられんです。そしてそうなると・・・』

解説の今井はごくりと息を飲んだ。


ひゅんひゅんと、翠の全身を攻撃が掠める。このままでは直撃を食らうのも時間の問題だ。


(くそ・・・黙って食らうくらいなら・・・!!)

翠は一か八か反撃を試みた。鋭いキックをチャンピオンの胸に叩き込む。


・・・にやり。

しかし彼は動じず、足を伸ばしきって隙だらけの翠の顔面に蹴りを返した。ダブルソードカウンターだ。


「がはっ・・・!」

凄まじい威力に翠の体が吹っ飛ぶ。


『御影選手再びダウンです!!これは立てるか・・・!?』

『そうなんです・・・例えやられると分かってても最後にはこちらから仕掛けるしかない・・・。全く、とてつもない技だ、あのダブルソードカウンターは・・・。』

冷や汗を垂らす今井とは裏腹に、会場の熱気は最高潮に達していた。


「ワン!ツー!」


「・・・く、くっ・・・」

あまりのダメージに翠は悶えた。無常にカウントは進んでいくが立ち上がる事はできない。


いや、それに立ち上がった所で・・・

翠の胸に一筋の諦めが生まれ初めていた。


しかし、その時・・・


「立てや翠!!!!」

会場中に響き渡るかというその大きな声。それは客席の更に奥の入口から発せられていた。



そこには、走ってきたのか息を切らした轟がいた。

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