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明日なんて来ない  作者: クロット
3章 挑戦者たち
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第三十七話

「良かろう・・・ならば見せてやろう。しかし後悔する事は無い・・・最強の拳を相手にするのだ、敗北さえ光栄に思うといい。」


途端、再度レンは構えを変えた。

掌を突き出し、曲げた4本の指は牙・・・親指は顎を表す。

龍だ。レンの手に龍が現れた。

そしてこれこそが、龍天星拳法の構えである。


「ハアッ!!」

叫び突進するレンは、噛みつきのようにその手で攻撃を仕掛けた。


「・・・!!」

翠は素早くそれを左手で防いだ。しかし次の瞬間、その手に異変は起きた。

だらり。突然彼の左手は感覚を失い垂れ下がってしまった。


「フフフ・・・それこそが龍天の戒め。」

バックステップで距離を取りながら、レンは説明した。


「龍天星拳法・・・拳さばき自体は指先を使ったごく古典的な咬拳のアレンジだ。だがその真髄はその指で気の流れを断ち切る事にある・・・。つまり、脳からの信号を遮断するのだ。これにより攻撃を受けた箇所は一時的に機能しなくなる。」

「・・・何!?」

彼の言う通り、確かに翠は左手をピクリとも動かせなかった。


「先程は防ぐ左手があったが・・・次はどうかな!?」

レンは翠の無防備な左から・・・その首筋へ向け、再びその牙を放った。


カァァアン!!


攻撃が決まるとほぼ同時に、ラウンド終了の鐘が鳴った。


「翠君!!」

冷や汗をかきながら満田らセコンド陣がリングに駆け込む。すると翠は、どさりと崩れ落ちた。慌ててそれを抱きかかえる。


「おい、翠君!!しっかり・・・大変だ、息をしていない!!ドクター!ドクターを・・・!」

満田が叫ぶと、こんな時の為にリング際に配置されているドクターが大急ぎで駆けてくる。


「離れて、至急救急車を呼ぶ必要があるやもしれん・・・」

しかし、その瞬間翠は目を覚ました。咳と共に呼吸を取り戻す。


「げほっ!!げほげほっ!!」

「あ、翠君・・・!!大丈夫か!?」

「ああ・・・それより、試合はどうなった!?」

翠は身を起こしきょろきょろと辺りを見渡した。


「え・・・ああ、今はインターバルじゃが。いや、そんな事より病院に・・・」

「まだ負けてないんだな・・・?ならその必要は無い。・・・次のラウンドで決着をつける!」

そう言うと彼は立ち上がり、ドクターの静止を聞かず再びリングに舞い戻った。



「始めようか・・・これで最終ラウンドだぜ。」

ニヤリと翠は笑った。



レンは翠の様子を注意深く観察した。

呼吸はすっかり取り戻しているようだが、左手はどうやらまだ使えそうにないようだ。


(流石だな。・・・先程の一撃、首だけを僅かにずらして直撃を防いだのだろう。故にほんの少しの時間で意識を取り戻すことができたという所か。やはり全身全霊、出せる全てを発揮せねば君は倒せないようだ。)


「ハッ!!」

叫ぶとレンは、突然その左足を振るった。仕込まれた無数の鞭が再び翠に襲い掛かる。


「・・・っ!」

意表を突かれた翠は何とかそれを躱すも、体勢を崩してしまった。その隙を逃さずレンは右足を地面に叩き付けた。強烈な振動が翠を縛り付ける。


しかし彼もそう何度も同じ手を食らう男では無い。激しい衝撃に見舞われながらも何とか全身を捻り、逃げようとする。そして足の痺れが少し薄れた瞬間に距離を取るのだ。


だがそれよりほんの少し早く、レンは攻撃を仕掛けた。

「貰うぞ・・・その足を!!」


がっ!!逃げ遅れた翠の右踵に、竜は牙を向いた。


右足の感覚が無くなる。

だが翠は片足でも何とか踏み止まり、ダウンは免れた。


「あの桐生もやってのけた事だ・・・片足だろうと倒れはしない。」

力強く言い放つ翠だが、レンはニヤリと笑った。


「むしろ好都合・・・片足ではこれを躱せまい!」


ズシン!!


唯一残ったその足へ・・・レンはグラウンド・ショックを放った。

これにより翠は・・・完全に移動不能となってしまった。


「翠君!」「にーちゃん!!」

満田らが悲痛の声を上げる。


「ふっふっふ・・・このまま遠距離からいたぶる手もあるが・・・君には一瞬のチャンスも危険だ、一撃で葬らせて貰う!」

するとレンは気合いを入れ飛び上がった。その手を再び龍の形に変え・・・。

彼の狙いは頭だった。どれほどの相手だろうと龍天星拳法を脳に受ければ、もはや何もすることは出来なくなる。


瞬間、翠は四肢で唯一自由のきく右手を振り上げた。


(なるほど、せめて反撃を繰り出そうと言う訳か・・・残念だな、そんな見え見えの攻撃など空中でも躱すのは容易い!この勝負・・・私の勝ちだ!!)

右手一本で打てる位置などたかが知れてる。レンは空中で身を翻し右手の届かぬ位置に移動しながら、翠の頭へその拳を放った。


・・・だが、翠のパンチは思わぬ所へと繰り出された。

翠自身の頬にだ。


自らに攻撃を放ち・・・彼は頭の位置をずらした。対象を失った龍の牙は、そのまま翠の右腕に噛み付いた。


(なんと・・・そんな手で私の拳を躱すとは・・・。だが、今ので万策は尽きた!もう君には腕一本残ってなど・・・!)

レンは着地し、再び攻撃するべく振り返った。しかしその時にはもう・・・翠は行動を起こしていた。


痺れが薄れた左足で・・・思い切り地面を蹴り、自身をミサイルのごとくレンに向けて打ち出した。


ぼごおっ!!

全体重を乗せた頭突きはレンの鼻先にぶち込まれた。


「あがっ・・・!!」

あまりの衝撃に・・・レンはそのまま意識を失った。

今ここに・・・勝負が決したのだ。



両手両足の自由を奪われ絶体絶命の翠だったが・・・辛うじて彼はレンに勝利した。

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