第二十一話
満田ファイターズジム。
会長の満田源三郎はいそいそとジムの中を動き回っていた。
「どうしました、会長・・・翠のヤツを探してるなら、ほら・・・」
筋力トレーニングに励んでいた飛岩がその手を止め、くいくいっと親指で背後を指差した。そこには休憩用の椅子でじっと座り込む翠がいた。
「おお、そうか。済まない飛岩君、恩に着るぞ。」
素早く礼を言うと満田は翠の方へ向かっていった。
「・・・翠君。今日は練習はお休みかな?何でももう一週間もそうしているそうではないか。コーチが練習してくれないと嘆いていたぞ。・・・今やこのジム一番の実力者とはいえ、コーチの指示には従わねばいかんぞ。」
じっ、翠は不満気に満田を見た。
「言われずともやるさ・・・それが必要とあればな。・・・そんな事より会長さん、アンタがわざわざ俺の所に来るって事は、何か用事あって来たんだろ?それこそ練習が必要になるような・・・!」
「ほっほっほ・・・流石、察しが良いのう。その通りじゃ。・・・このワールドチャンピオンズファイトのシステムは知っておるな?入れ替わりのランキング制・・・では、チャンピオンへの挑戦はどのように行われるか知っておるかな?」
「・・・。」
だいぶ前に厳八が語っていた気がする。まだ先の事と、詳細には話してくれなかったが。
「何かトーナメントの様なものをやるんだろう?挑戦資格を持つ者で・・・」
「その通りじゃ。正確には年に一度、ランキング2~9位の八人で・・・チャンピオンへとその座を掛けた挑戦をする者を決めるトーナメントだな。チャンピオンチャレンジャートーナメント。そろそろその時期が近づいてきた・・・。」
「・・・それが俺にどう関係あるんだ。大きくランクを上げたとはいえまだランキング12位、俺はそのトーナメントには参加出来ないはずだ。」
ぷいっと、翠は興味無さそうにそっぽを向いた。
「それが大ありなんじゃよ・・・!ランク10位、江崎山はどういう訳か意識不明の重体で入院しておる。ランク9位、入野は先日歳で引退、よって9位は空位となっている。そして・・・」
満田は少し溜めながら言った。
「そしてランク4位、凍城は体調不良により今回のトーナメントには参加しないそうじゃ。・・・これが意味する事、君にはわかるじゃろう?」
その言葉に翠はハッとしながら満田の方を向き直した。
「つまり、繰り上がりで俺に挑戦資格が回ってきたって事か・・・!!」
微笑みながら、満田は大きく頷いた。そして懐から何か封筒を取り出す。
「つい先程案内書が届いてな。無論・・・君は挑戦するじゃろう?」
「当然・・・!断る理由は無い・・・!!」
満田は思惑通りとばかりにニヤリとすると、封筒を破った。
「そう来ると思ってもう申し込みを済ませてある。この封筒は必要ないな。ほっほっほ。」
「ふふ、それは助かる。・・・こうしちゃいられねえな、早速練習しないと。・・・済まないが会長さん、腕の良いコーチを片っ端から集めてくれないか。」
燻っていた炎が・・・翠の目に再び宿る。
「・・・勿論だとも。」
満田はニコニコしながら了承した。
「か、会長!!大変です!!」
・・・数日後。満田ファイターズジム・・・会長室。
ゴージャスな椅子に腰掛ける満田の元へ、一人のマネージャーが飛び込んできた。
「ほっほっほ、どうしたのかね。・・・もしかして決まったのか?翠君の対戦相手が。」
「は、はい。それなんですが・・・チャンピオンチャレンジャートーナメント、御影翠の第一戦の相手は・・・」
次の瞬間、その名を聞いた満田は飛び上がった。日頃落ち着いた雰囲気を醸し出し、声を張り上げることもない満田が、飛び上がったのだ。
「な、何だとっ・・・!!?」




