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明日なんて来ない  作者: クロット
2章 栄光への道
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第二十話

三輪流星・・・彼の父、三輪光星はワールドチャンピオンズファイトの選手であった。


「自分は凄いファイターなんだぞ~、強いんだぞ~!」

それが彼の口癖で、三輪は幼き頃から嫌というほどそれを聞かされてきた。


そして彼は、街のチンピラの喧嘩騒ぎに巻き込まれ亡くなった。

三輪流星は別にその事に対して何も感じなかった。ルールに守られた競技での強さなど何の価値も無い、彼が元々持っていたその考えをより強めただけであった。




・・・暫くして、三輪は轟を蹴るのを辞めると、その場から立ち去ろうとした。


「待てよ・・・。」

背後からの声。そこには満身創痍で立ち上がる轟の姿。


「・・・いけねえわな、何時からか最初の一撃は様子見で浅く打ち込むようになっちまってた。・・・一撃で沈める気で打たねえと・・・。」


ぼごっ!!

ぼそぼそと呟く轟へ、三輪がパンチを放った。

そして今度こそ立ち上がれないように、何度も何度も何度も彼を殴りつけた。


「・・・ふぅ・・・ふぅ・・・」

多少息を切らしながら、目の前で転がる轟を見る。

あれほど打ち込めば、立ち上がる事などできないはずだ。


・・・が、轟は立ち上がった。ズタズタの顔面の奥に薄ら笑みを浮かべながら。


「・・・何故だ。」

ぼそりと三輪が呟く。


「・・・ああ?」

「何故立ち上がる。・・・貴様等のファイトのルールでは十秒ダウンしてたら負けなんだろう?だったら寝転んでれば良いじゃねえか・・・ましてこれは路上の野良喧嘩。負けた所で貴様の名誉に傷が付くわけでもない。」

「・・・何故って・・・へへっ、簡単じゃねえか・・・そんなもんはよ。」

ニヤリ、轟は口元を緩めた。


「負けたら悔しいじゃねえかよ。名誉とかそんなかたっくるしい事はどうでもいい、単純に自分より強い奴がいるってのは気に入らねえじゃねえか。・・・文句あるかよ・・・?」

そう言うと、轟は三輪の頬にパンチを打ち込んだ。先程は微動だにもしなかった彼が今度はよろめく。


(・・・!?これだけ打ちのめされ、何故前より強い一撃を放てる・・・?)


三輪は口内に滲む血をペッと吐き出すと、怒りに満ちた目で轟を見た。


「気に入らない・・・そんな理由で・・・殺してやる・・・!!」

三輪は呟きながら拳を振り上げ襲い掛かった。


・・・ニヤリ。相手のその突撃に、轟は歓喜し震えた。

「待ってたぜ・・・!てめえくらい強い奴なら・・・必ずこいつをお見舞いできると思ってた・・・!!」


どごぉっ・・・!!

突撃した三輪の顎に、轟のムーンサルトが決まった。



「・・・そうさ、ガキの頃から漠然と思い描いてたワールドチャンピオンズファイトへの挑戦・・・。思えばその理由は簡単だった。・・・気に入らねえからさ。ランキングなんてもので指し図られた連中が俺より強いような顔で堂々としてやがるのがな・・・!」

轟はその拳を震わせながら呟いた。


「三輪とか言ったな・・・。立てよ。この程度でくたばるような奴じゃねえだろ。・・・てめえも自分より強い奴がいるなんて気に入らねえ口だろ・・・?」

轟の思った通り、三輪はフェンスに寄りかかりながらもなんとか立ち上がった。


(何なんだ・・・?こんな奴は初めてだ。下らねえままごとに参加してる奴のはずなのに、どうしてこいつはこんなにも・・・。)


相も変わらず、その目は殺意で満ち溢れていた。だがこの時の彼の目には、間違いなく今までとは違う何かが宿っていた。


「・・・貴様、ランキング149位とか言ったな。という事は・・・いるのか?それより上には、貴様のような男が何人も・・・。」

その問いかけに、やはり轟はへへっ・・・と不敵な笑みを浮かべた。


「・・・ゴロゴロとまではいかねえが・・・いるぜ。間違いなく何人かは・・・とんでもねえのがな。」

「・・・そうか。・・・それは少し、面白そうだな。」

三輪もまた、小さく微笑むと、再び轟に向け突撃していった。



父に対して・・・憧れや尊敬とまではいかないが、興味はあった。

いい歳をしながら胸を熱くさせ、彼が挑んでいく世界にはどれ程の猛者がいるのか・・・。

だからこそ三輪はショックだった。そんな父が巷のチンピラ如きにあっさり殴り殺されたのが。

死んでしまった事にでは無い、強いはずのワールドチャンピオンズファイトの選手がたかが不良なんぞに負けてしまった事がだ。

三輪のファイトへの期待は絶望に変わった。

彼が街でワールドチャンピオンズファイトの選手達へ戦いを仕掛け続けたのは、それを否定したかったからかもしれない。

しかし戦った選手達はことごとく取るに足らぬ雑魚だった。結局、その考えを裏付けただけであった・・・。


そして、だからこそ三輪はこの日また新たな衝撃を受けた。轟と戦う事で・・・。自分のこれまで知っていたワールドチャンピオンズファイトの世界など、その片鱗に過ぎなかった事に気付かされた。




「よう、目が覚めたのかい。」

・・・目を覚ました不良のリーダーが見たのは顔をパンパンに腫れ上がらせた轟の姿だった。


彼はその姿を見て、轟は三輪に負けたのだと思った。ボコボコにされながらも、辛うじて見逃してもらったのだと・・・。だから、彼はこう声をかけるつもりだった。

『てめえ良くもこの俺を殴りやがったな!・・・まあ何にせよ、殺されなくて良かったな。』


だが、次の瞬間彼の頭からはそんな言葉は消し飛んだ。轟の前方に横たわる男の姿を見てしまったから・・・。


「うええええ!?こいつは!!お前・・・三輪を!三輪流星を倒したのか!!?」

「ああ・・・まあな。」

けろりと、轟は言ってのけた。


「だってこいつは・・・!ええ・・・」

(日本で一番強い不良って言われてるんだぜ・・・だからそいつを倒したって事は・・・お前は・・・)


最強だ。事喧嘩にかけてはこの波風轟は最強。

不良のリーダーはそれを確信した。故に、やはり疑問でならなかった。何故彼がランク150そこらなのか・・・。


「ギャーギャーうるせえな。そんな事よりとっととずらかった方が良いぜ。いつこいつが目を覚まして暴れ出すかわかんねえからな。」

轟がそう言うと、不良のリーダーは奇声を上げながら大慌てで這い逃げて行った。轟もまた薄ら笑いを浮かべつつそれを追いかけた。


ふと、立ち止まり三輪の方を見る。

「まあ、もうそんな心配も要らねえだろうがな。・・・三輪よお、また今度じっくりやろうぜ。・・・今度はリングの上で、な。」


横たわる三輪の顔は、何処か幸せそうに見えた。

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