第十九話
少し時は流れ僻地田町。
偶然、いつぞやの不良達と出くわした轟は、裏通りに連れ込まれていた。
十人あまり・・・並んだ不良達を一通り見ると、轟は溜息を付いた。
「勘弁してくれよ、俺はおめえらみてえなぼーふら共と違って忙しいんだぜ。」
「うるせえ!!ここで会ったが百年目って奴よ。てめえだけはこの手でぶっ殺してやる!」
リーダー格のリーゼントの男がバットを向ける。すると、轟は観念したように両手で構えた。
「・・・分かったよ。正直筋トレでもしてたほうがよっぽど有意義だが、相手になってやるぜ。・・・掛かってきな。」
「おああああ!!」
唸り声と共に、不良達は一斉に襲い掛かった。
ひらひらり。轟はそれを華麗に避けると、一人、また一人とノックアウトしていった。
・・・ぱん、ぱんと、手を払う。
「思ったよりは良い運動になったぜ。・・・まあ、次やんなら千人は連れてくるんだな。」
転がる不良達を見下ろしながら轟が言った。
唯一意識の残っていた不良のリーダーが口を開く。
「ぐ、ぐう・・・強え。けどおかしいな、前はもっと強かった気がするぜ。この野郎ワールドチャンピオンズファイトに手を出してから腑抜けたんじゃねえか?」
「ああ?知ってやがったのか。・・・それよりも、前のが強かっただと?どうやら殴られたりねえようだな。」
ごきごきと、轟が指の骨を鳴らしながら邪悪に笑う。
「・・・俺はランキング90位だなんて言うイキリ野郎とも戦った事がある。お前はそいつより全然強かったぜ。・・・なのに、なのによ・・・。」
不良のリーダーは声を震わせ続けた。
「何だっておめえはランキング150位なんて彷徨いてやがんだ!?」
ぴくっ、その言葉に反応した轟の表情が変わる。なまじ冗談めいていたその目に怒りが宿る。
「・・・うるせえな、てめえに何の関係があるってんだよ!てめえに何がわかるってんだ・・・!!」
グッ!不良の胸ぐらを掴み叫ぶ。もう一度殴り倒さんばかりの勢いだ。
その時・・・。
がしゃんん!遠くの方から金網が大きく揺れるような音。
すると音の方から青年が四つん這いで逃げてきた。
「ひいっ!頼む勘弁してくれ!!俺が何をしたってんだ!?」
叫ぶ青年を追うように出てきたのは・・・先程江崎山を殴り倒した少年だ。
彼は無言で青年に蹴りを入れた。そして、蹲る相手に対し、再び拳を振り上げる。
がっ!轟が後ろから少年の腕を掴み、攻撃を止めた。
「よせよ。喧嘩ってのは相手が立てなくなったら辞めるもんだぜ。何があったか知らねえが・・・わっ!」
突然、少年はこちらへ蹴りを放った。既の所で轟はそれを躱す。
「あぶねえな・・・何だってんだいきり立ちやがって・・・」
飛び退いて距離を取りながら轟は眉を顰めた。
「あれは・・・三輪流星じゃねえか。」
背後から不良のリーダーが呟く。轟はそちらの方を向いた。
「あん?知ってんのか?」
「ああ、危険な男だよ。ふらりと喧嘩場に現れては見境なくその場の全員を叩きのめして去る。・・・あいつのせいで俺達の仲間も何人やられたか。」
「・・・そうかよ。じゃあ当然俺達もターゲットにされるって訳だな。・・・良いじゃねえか。まだ物足りなかったんだ・・・へっ、相手になってもらおうじゃねえか。」
そう言うと、轟は構えをとった。慌てて不良がそれを止める。
「待て轟・・・駄目だそいつは・・・ぎゃっ!」
瞬間、轟は当て身で不良を失神させた。
「待たせたな。横でぱーちく騒がれたんじゃうるさくてかなわねえ。これで誰にも邪魔されねえぜ。」
「・・・。」
三輪は無言で轟をじっと見た。その目に明確な殺意を宿らせながら。
「ちょっと俺はワールドチャンピオンズファイトの選手だって話をしてただけなんだ。そしたらこの男がいきなり襲いかかってきて・・・」
三輪に襲われてた青年が説明する。轟はあちゃーという顔をした。
「そうかまだこいつがいたのか・・・おいあんた、とっととこっから消えちまいな。じゃねえと今度は俺が殴り倒すぜ。」
「えっ・・・ひいっ!」
青年は困惑しながらも一目散に逃げていった。その様子を三輪はじっと見る。
「へっ、これで今度こそ邪魔者はいねえぜ。・・・そんな物惜しそうな顔すんなよ。かくいうこの俺もワールドチャンピオンズファイトの選手なんだぜ。ランキング149位、波風轟ってんだ。」
ぴくっ。轟が放ったワールドチャンピオンズファイトの言葉に明らかに反応し、三輪の目の色が変わった。
「へへへ・・・そう来なくちゃな。・・・そんじゃまあ、こっちから行くぜ・・・!」
轟が勢い良くパンチを打ち込む。
ごっ・・・!
なんと、その一撃は見事に三輪の頬に決まった。あまりの呆気なさに、むしろ轟がたじろいだ。
(あ・・・?何だ?避けられると思ったのに・・・うっ!?)
次の瞬間、三輪の膝蹴りが轟の腹部に突き刺さった。よろよろと、前のめりに倒れそうになる。・・・が、三輪はそれより先に轟の髪の毛を掴むと顔面へ拳を何度も叩き込んだ。
「が・・・は・・・。」
轟は額から流血しながらその場に崩れ落ちた。
三輪はそんな姿を眺めながら、相手の弱さに辟易していた。
(やはりこの程度か。ままごと遊びの選手など・・・)
彼は小さく息を吐くと、無表情に何度も何度も、轟を蹴りつけた。




