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明日なんて来ない  作者: クロット
1章 始動
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第十話

どかっ!ばきっ!どちゃっ!!


何度も何度も、轟は飛岩に倒された。

しかしその度、彼は立ち上がりぎらぎらとした視線を向けるのだ。


飛岩がうんざりしたように振り返る。

「・・・どこかおかしいんじゃないのか。これ以上やったら再起不能になってもおかしくないぜ。・・・オッサン、あんたもあんただ。目の前で自分の教え子がぶっ壊されるってのにだんまり決め込んでるとは、コーチどころか人間失格だぜ。」


しかし厳八は何も答えなかった。代わりに轟が煽りを入れる。

「どうした、そんなもんかよ・・・」


飛岩は面倒くさそうに舌打ちすると、またもや轟を吹き飛ばした。しかしそれでも彼は起きあがってくる。


顔は原型を留めぬほど腫れ上がり、体は内出血の雨霰。満身創痍なのは間違いないのに、それでも立ち上がってくる。


厳八はただじっとその様子を見ていた。

(飛岩とやら、お前さんは強いよ。轟と翠がこれまで戦ってきた誰よりも・・・。だがそれゆえに見る事になるぜ。ファイトの真骨頂をな・・・!!)


彼が止めなかった理由はただ一つ、轟に勝ち筋が残されていたからだ。そしてその瞬間は、着々と近付いてきていた・・・。


「ええい、わかったよ。もうどうなっても知らんぜ。この飛岩の最大の一撃を受けるといい。ぶっ殺されてから後悔するといいさ・・・!」

何度も立ち上がる轟に、飛岩は痺れを切らせ一直線に突っ込んで行った。

そしてこの瞬間こそが、轟がずっと待ち望んだものであった・・・!


ふわり。飛岩が攻撃を繰り出す瞬間、轟の体は後ろに舞った。そして飛岩が状況を理解するか否かの刹那、その一撃は彼の顎に突き刺さっていた。その体が打ち上げられる・・・。


どちゃり!これまでで一番の轟音を上げながら、飛岩の体は地面に激突した。


「出た・・・ついに、ついに・・・必殺のタイミングのムーンサルトが!!」

厳八はわなわなと震えながら叫んだ。翠もまた、身を起こしながらその様子に目を奪われた。あれほどの強さを誇った飛岩が・・・今まさに横たわっているのだ。


「へっ、やったぜ・・・。見たかよオッサン、完璧だったろ。」

流石に堪えたのだろう、轟はよろよろと泥酔者のように厳八達の方へ歩き出した。


「ああ、轟よ・・・よく耐えた!よくここまで我慢した!本当によくやって・・・」


だがその瞬間、翠が叫んだ。

「轟!後ろだっ!!」


呆気に取られながら轟が振り向くや否や、その顔面に凄まじい一撃が決まる。今度こそ轟の意識はぶっ飛んだ。


「・・・はあっ・・・はあっ。」

大きく肩で息をしながら飛岩が立っていた。厳八が悲痛の叫びをあげる。

「馬鹿な・・・あれでも決まらねえなんて・・・!!」

「・・・・・・ふうっ。」

轟が完全に立ち上がってこないのを確認すると、飛岩は静かに手を拭いた。


ふと、土手の上に止まる外車と、その傍らで誰かがこちらを見ているのに気づく。


・・・満田ファイターズジムオーナー、満田源三郎だ。彼はゆっくりと土手を下ってくる。


「おお飛岩君・・・これは?」

満田は地に転がる轟と翠を見ながら尋ねた。


「・・・なんて事はありません、貴方の思い通りでしょう?。全く、とんだ策士だ・・・。」

「・・・という事は・・・。翠君、見たのかね?飛岩君の強さを。」


「・・・。」

満田の問いかけに翠は答えない。


「いやはや済まない。だが君にはこうしてウチの選手の力を見てもらうのが一番手っ取り早いと思ってね。どうかな?飛岩君は強かったろう?」

「・・・ああ。」

ぼそりと返す。


「そうだろうそうだろう。・・・して、どうかな?少しでも気持ちは変わったかね?」

「・・・。」

翠はまただんまりを決め込みながら、今度はちらりと厳八の方を見た。


そして・・・


「わかった。取り敢えず案内しろ。あんたのジムへ・・・。」

「そうか・・・!!いや、そうかもしれんと思ってな。車を用意してある、早速乗りたまえ。」

満田は年甲斐もなくはしゃいだ。飛岩、翠も彼に続いて車へ向かう。


「翠・・・。」

かれるような声で、厳八は彼の名前を呼んだ。翠の心情を察したのだろう・・・彼は寂しげな目をしながら、じっと立っている。


「オヤジ・・・すまない。」

そっと呟くと、翠は振り返らず歩き出した。



「最近取り入れた物に超回復装置という物があってな、これがまた・・・」

ジムへ向かう車中、満田は嬉しそうにずっと喋っていた。翠は話半分、ぼうっと窓の外を見ていた。


(確かに飛岩は強かった・・・だが轟は・・・)


「・・・このままでは俺は一生轟には勝てない。」

ぼそりと翠は漏らした。


「この二つの道具を組み合わせて・・・ん?翠君何か言ったか?」

「・・・いいや、何でもないさ。」

聞き返す満田に翠は首を振った。


一方、助手席に座る飛岩も一人、物思いにふけっていた。

(傍から見れば・・・いや、これが単なる路上の喧嘩騒ぎなら・・・確かに勝ったのは俺だろう。

だが、もし正式な試合だったとするならば・・・

奴が最後に放ったムーンサルト、俺は十秒以上起き上がれなかった。テンカウントダウンを取られていた・・・。つまり、負けていたんだ。)


くしゃりと、飛岩の鋭い目元に皺がよる。

「波風轟か・・・憶えておこう。必ずやいつかまた決着をつける事になるだろう・・・。」

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