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5話 宿に泊まろう!

「さて、困った…」


 2人と別れて1人になってしまったのだが、これからどうすればいいのだろう?とりあえずそれほど多くはないがお金は確保した。問題は今晩の寝床ってとこだろうか…こんなことならアルタに地図を見せてもらっておけばよかったといまさら後悔する。

 そしてこんな危機に限って声がしないときたもんだ。ため息をつきつつギルドの受付のお姉さんに尋ねてみることにした。


「ねえ、おねーさん。この町の宿ってどこにあるのかな?」


 カウンターの順番を並び自分の番が来て宿を場所を聞く。女性は少し驚いていたようだ。


「この町の入り口で地図を売っているから買っておくといいわよ?」

「入り口で売ってるの?」

「ええ、3つの門のどこでも売っているから。」


 この町門が3つもあったんだね、知らなかったよ!


 お姉さんにお礼をいい早速東の門に地図を買いに向かった。この門に向かったのは一度行ったことがあるし、なんといっても近いからだ。衛兵から地図を買い早速開いてみる。思ったよりも安く銅貨2枚で買えた。右下にマークの説明が書いてあり、宿は家の形をしていた。どうやら7軒の宿がこの町にはあるみたいで、この東側にも2軒ほど家のマークが書いてある。ひとまずこの東門から冒険者ギルドの間にある宿に行ってみることにした。


「エルフの囁き亭…?」


 とりあえず入ってみるか。入り口に書いてある名前を読み上げると中に足を踏み入れる。なんというか…閑古鳥が鳴いている。


「お客様…?お客様ですかーーーーっ!?」


 テーブルに伏せていた女性が立ち上がり大きな声を上げた。その対応に驚き流石に後ずさりをする。


「一応宿を探してはいるけど…?」

「ほんとに、ほんとにうちに泊まるのですねっ」

「……ここは宿じゃないの?」

「宿です!ええ、もちろん宿ですとも!!」


 なに、なんなのこのひとーーっ泣きながら僕の両手掴んできたんだけど???というか耳が尖っててどうみてもエルフだよね。

 ひとしきり泣いた後やっと落ち着いた女性はポチに宿の説明を始めた。


「ほんとうにありがとうございます。エルフの囁き亭へようこそっ私はエレノアといいます。」


 さっきまで泣いていた人には見えないくらいしっかりとした挨拶をする。金髪でサラサラなボブカットがまぶしい。そこから覗く尖った耳もなかなか魅力的である。


「ここって支払いとかどんな感じなんですか?」

「はい、1日銀貨2枚になります。食事をつけますと銀貨3枚ですね。」


 なるほど…今日の稼ぎだと大体3日分になるのか…安定した稼ぎになるまでしばらくあのダンジョンの1階でうろついたほうがよさそうだな。


「じゃあひとまず2日でお願いします。」

「わかりました!食事は朝と夜の2回になります。出来ましたら声を掛けますので下に来てくださいね。」


 部屋の場所を聞き3階へ上がる。部屋は2階と3階部分にあるようで、指定された場所は3階の一番奥だった。

 まず2日はこの部屋を利用することになるから安全確認…かな?

 ガサゴソと引き出しという引き出し開けられるところは全部開けてみる。まあ何もない。あっても困るのだが…次にベッド。薄いがマットがひいてある。それをはがしマットの間、ベッドの下も覗く。もちろん何もなかった。

 

 ゲームとかだと何かあるのに何もない。ちょっとガッカリ。


 最後に壁と床、天井の確認だ。窓を開けて外を見るどうやら表の通り側の窓だったようだ。壁を叩いてみる…うん、全部おんなじ音がする。変わったとこはなさそうだ。床も同じように確認をすると一箇所ベッドの下辺りに窪みを見つけた。


「なんだこれ?」


 手をかけ引っ張ってみると床が開いた。恐る恐る覗き込んでみる。中はどうにかはってなら通れるかもくらいの広さだった。なんのための空間なんだろうか?まあ…閉じておこう。

 残すところは天井だけだ。見るからに怪しい取っ手がこれもやはりベッドの上辺りにある。そっと手にかけ引くとあっさりと開いた。椅子を台にしてその中を覗きこむとちょっとした部屋になっている。女性物の服がかけられてるのが目に入った。誰かの部屋なのだろうか??


「まあ…後で聞けばいいか。」


 天井も元に戻し、ベッドに腰掛ける。食事までどのくらいの時間があるのかわからないが荷物整理でもしておこうか。まあ…大して荷物もないのだけどね!

 ストレージを開き確認する。本が4冊と銀貨3枚銅貨8枚。後は生物『魔法3』だけである。


 ああそうだ。図鑑確認してみよう。じゃあまずはモンスター図鑑から…



   名前:スライム

  レベル:2

属性タイプ:無属性、魔法生物

 アイテム:スライム玉、ベルペル草、ポーション、スライムのぬいぐるみ、ナイフ、(生物『魔法1』)


   名前:キノコノコ

  レベル:3

属性タイプ:毒属性、植物

 アイテム:キノコ、ギルギル草、(毒消し薬)、キノコのぬいぐるみ、(属性『毒1』)


   名前:ポイズンスライム

  レベル:10

属性タイプ:毒属性、魔法生物

 アイテム:スライム玉、ギルギル草、(毒消し薬)、(ポイズンスライムのぬいぐるみ)、リング『毒』、(属性 『毒3』)、生物『魔法3』



 うん、3体載ってるね。()で区切られているのはまだ出てないアイテムのようだ。ちゃんと鑑定したから全部表示はされたのかもしれないな。

 じゃあ次はアイテム図鑑も見てみようかな…こっちは前は白紙だったやつだ。


 アイテム図鑑は鑑定で見た内容とまったく同じことが書かれていた。とくに変わったことはない。


 こっちは鑑定内容そのままなんだね…あ、そういえばタイトルすらなかった本はどうなったんだろう?


 手に取ってみると『錬金術師指南書』と書かれているのが目に入る。どうやら職に就くことによってその職業に関する本になるものだったようだ。商人の本はないのかというのが気になったが、まあ商人はそれほど難しそうな内容も思いつかない。本を開き中を覗いてみる。スキルの扱いと調合の内容が書かれているようだ。調合のレベルは最大で10で、レベルごとに作れるアイテムがことなるらしい。


 …ん?レベル2になると低レベルだけどステータス増強系の薬も作れるのか。これは調合レベルあげるしかないじゃないかっ




▽▽▽▽▽




 食事の間中エレノアがひたすら絡んできた。名前、職業、年齢はもちろん冒険者のランクなども気になるらしくひたすらたずねてくる。しまいには自分の愚痴まで話す始末だ。もう少し食事ぐらい静かにすごしたいものなんだが…


「…で、今じゃほとんど私1人でこの宿やってる状態なのよ。」

「はぁ…じゃあその『エルフの微笑亭』に文句いってくればいいんじゃないのか?」


 話しによるとこの近くにもう一軒ある宿『エルフの微笑亭』はエレノアの姉が2人で経営しているらしく、大変繁盛しており、こちらに客が流れてこないそうだ。そして父親は寝込んでしまいエレノア1人でやっていたということだ。


「とりあえず、まずは1人雇ってみたら?この食事じゃだめだとおもうよ…」


 豆を煮たもの(おいしくない)、サラダ(見た目が汚い)、スープ(味がしない)、パン(固い)これでは誰も来ないのは当たり前だ。


「ぐっ…料理は父の専門だったから。」

「目をそらしても解決しないと思うけど?」


 おもに冒険者が泊まるのだろうし、ガッツリ系のが受けがいいだろう。


「意見はありがたくもらっておくわ…」


 机に上半身を預けるようにしてエレノアは突っ伏してしまった。少し言い過ぎてしまったのかもしれない。


「はぁ~しかたないなー…」

「だってぇ…」

「僕も料理はそんなに出来ないけど。1品だけ作ってあげるよ。」


 厨房を借り、そこにある材料を眺める。まあよくわからないものが多いこと…簡単に出来てここにあるもので出来るものを考えないとね…知らないものが多すぎて肉とか怖くて手も付けられないな…


「ねえ、エレノア調理済みの食材も少しいただいていいかな?」

「え、うんいいわよ。」


 調味料はわからないから片っ端から味を見る。その中から使えそうなものを選び、作業を始める。といってもほとんどそのまま使い、ポチが作ろうとしているのはたったの2つのものだった。


「よし、下準備できたよー」


 混ぜられた半個体状の液体が2つ並べられ他には野菜や果物、よくわからない焼いた肉、調味料関係がおかれている。液体の1つをよく熱せられた鉄板の上で伸ばすように焼き、裏返す。液体が終わるまで何枚も何枚も焼いた。それを積み重ねておいてあるものだからエレノアはひたすら首をかしげている。


「エレノア、この上に肉や野菜を適当に食べたいの乗せて。」

「この上に乗せるのか??」


 言われるままいくつかエレノアが選び乗せる。その上にもう1つの液体をかけくるくると巻いた。そう、ポチが作っていたのはクレープだったのだ。その形状に驚きながらエレノアは受け取る。


「まあ食べてみてよ。」


 エレノアに薦めつつポチは自分もエレノアと同じ組み合わせを乗せ食べてみる。


 うん…まあ照り焼きっぽい感じかな?何の肉かわからないけどっ


「もごっポッ…さん。これおじゅっ…」

「何言ってるかわからないよ…」


 口の中を空にしてからエレノアは再び口を開いた。


「ポチさんこれとってもおいしいです!」

「うん、好きな組み合わせ考えて巻くと楽しいしね。」


 よくクレープ焼いてしまっておいて仕事から帰ってから適当になんか巻いて食べてたからな…おもに残り物とか残り物とか残り物だけどな?


「この白い液体は調味料だったんですね…」

「ん?ああ、マヨネーズね。」


 えらく感心してみているがはっきりいって何チャってマヨネーズだ。それっぽく作っただけのものである。


「じゃあこっちも食べてみる?」


 今度は果物やフルーツソース、生クリームは液状であったのでそれに砂糖を少し加え泡立て一緒に巻いて渡す。


「……!」


 さらに気に入ったのか目をキラキラと輝かせている。まあ甘いものは女の子は好きですよね大概。すごい勢いで食べ終わってしまった。


「ふわぁ~なんですかこれ~甘いのやばいです!」


 物欲しそうな目でこちらを見ているが、このまま別の形に仕上げる。最後はクレープの間にクリームとスライスした果物をはさみ層を作ったミルクレープというケーキのようなものを完成させ上から砂糖をまぶしカットして渡した。これはフォークで食べてもらう。


「…んっ味は同じだけど形が変わるとまた違った感じがするわね。」

「食感も少し変わるからね。」


 結局そのあとクレープを全部食べ、堪能した2人は跡片付けをしている。室内にはカチャカチャと食器の音が響いていた。


「そういえばこの宿にお風呂とかある?」

「お風呂はないな~…桶にお湯あげるから体を拭くといいよ。」


 ないのかー残念。


「手伝ってくれてありがとう。それよりこのレシピ教えてもらっていいの?」

「ん?もちろんいいよ。たいしたものじゃなくてごめんね?」

「そんなことないよっ初めてみたよこんな料理!」


 ……ここの料理事情がわからないからなんともいえないな~今度『エルフの微笑亭』の食事でも見に行ってみるかな。


「それはいいのだけど、ちゃんと料理できる人だけでも雇ったほうがいいよ?」

「検討してみますっ」


 エレノアと別れ3階の部屋に戻る。


 …あっそういえばステータスプレート見てなかったけどレベルは上がったのかな?




  名前:ポチ

   性別:男

   年齢:16

   職業:錬金術師(商人)



  レベル:2

   体力:20

   魔力:365


    力:25

   速さ:60

   知力:243

    運:56

物理防御力:18

魔法防御力:122



固有スキル:チュートリアル 鑑定2

   称号:スライムに倒された男




 おっ1レベルだけ上がってた!よーし明日はがんがん狩って調合レベルもあげるぞーっ


《チュートリアル、ヤドニトマルヲシュウリョウシマス。》


 



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