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32話 3番目の職業

 次の日、フィリアはアルタとエルザと一緒にダンジョンに行ってもらい、ポチは1人といっても暇をしていたスフィアといつものノームとオリオニスの森へ来ていた。昨夜作ったミスリル武器をためすのもかねている。


 まあ短剣は単純に火力が上がっているくらいだからこれはおいおい試せばいいか…問題は短銃のほうだよな。射程がどれほどあるのかまったくわからないし、火力にいたっては魔力次第。今日は短銃で狩りながら進んでみるか。


「…っとそうだノーム今日は迷いの森どのへんだ?」

「……少し右に入っていけばすぐだな。」

「右ね。」


 どうやら今日の迷いの森はすぐ右のほうにあるらしい。試し撃ちをするためにも迷いの森は後回しにして少し森の奥へ進むことにする。この辺にいる弱いモンスターを処理しながら少し進むと初めてこの森で見かけるモンスターに遭遇した。



  名前:ミニボア

  レベル:10

属性タイプ:木属性、動物

 アイテム:ベルペル草、ミニボアのぬいぐるみ、属性『木1』



 ドロップアイテムの種類が少ない…見た目がウリボウみたいなところを見ると肉とか牙とかを解体して手に入れることが出来そうだ。それに初めて見る属性がついている。


「さて…とりあえず魔力1くらいでいいかな。」


 あまり魔力を込めすぎるとこの間のように武器自体が壊れてしまうかもしれない。ポチは警戒して魔力1でまずは試してみることにした。ミニボアは今のところこちらに気がつかず落ちている木の実を食べるのに夢中になっている。そーっと狙えそうな位置まで近づきポチは頭を狙って引き金を引いた。


「…をっ」


 少しだけ反動を感じるくらいで弾を打ち出すと音もほとんどなくミニボアの頭に命中した。


「ピギイィィッ~~!」


 流石に魔力1では仕留められなかったらしくミニボアは頭から血を流しながら暴れている。そしてポチを見つけるとこちらに向かって真っ直ぐ走ってきた。ポチは再び銃を構えると今度は魔力3で引き金を引いた。短銃から打ち出された弾はミニボアの耳を粉砕した。


「ピギュアァーーッ」

「外れた!」


 ふらつきながらも速度を落とさずミニボアはこちらに向かってくる。ぎりぎり突進を交わすとミニボアはその先にあった木の幹に頭を打ち付けた。どうやら止まることができなかったようだ。そのままその場でミニボアは崩れ落ちた。


「終わった…かな?」


 そっと近づき確認をしてみるとまだ胸が上下している。念のためにストレージにしまえないか試すと無理だったのでまだ生きていることがわかった。立ち上がる前にポチはミニボアの頭に短銃を突きつけると引き金を引いてしとめる。


「はぁ~…」


 猪みたいだったから真っ直ぐ来るのはわかってたけど、思ったより走るのが速くてこれは危ないな…初めからもっと魔力込めたほうがよさそうだ。


 ストレージにミニボアをしまいドロップアイテムを確認するがどうやら何もでなかったようだ。


「じゃあこの近辺でもう少しだけ短銃試したら迷いの森へいきますかね…」


 モンスターを狩るのがメインではなく薬草の採取を集めるのが優先なので、あと数匹狩ったら迷いの森へ向かうことにした。


「ふぅ…こんなところかな~」


 目の前には3匹ほどミニボアが転がっている。あの後近くにいたらしく次々とポチに向かって走ってきたのだ。そのいずれも頭が吹き飛び体しかない状態だ。


 急に出てくるから火力の調節失敗して頭がなくなってしまった…牙とか使えたかもしれないのにもったいない。要練習だねこれは。


 すぐ近くでスライムと戯れていたスフィアに声をかけ迷いの森へ向かうことにする。来た道を引き返し迷いの森があるほうへと足を向けると割りとする霧が出始めた。


「よし…スフィア、ノームまずはここで採取だね。」


 ヌグル草とグルルム草をみんなで採取しているといつの間にか門の前に来ていた。あわててポチはペンダントを首から提げるとすぐにユミリアがやってきた。


「あら…数日ぶりね。」

「はい、もっとこれるといいんですけどなかなか…」

「ポチはよく来てくれてるほうよ?普通こんなにこれないものね。」


 ユミリアと軽く会話しながら長老の下へと案内された。


「待っておったぞ…今日はどのような話を聞かせてくれるのか?」


 長老の目の前に通されると流石に3度目の顔あわせとあり覚えていてくれた。というか気のせいか前より距離が近い…


「おや…今日は1人じゃないのだな。」

「え?」


 振り返るとスフィアがついて来ていた。初めてきた場所に興味を示しキョロキョロと周りを見ている。


「ここ…気持ちいい…」

「ふむ、精霊か。ポチとやらは商人じゃなかったのかえ?」


 店の話をよくしていたのでポチのことは商人だと思われていたようだ。


「あーメインは錬金術師なんですが、商人もやっています。」

「ふむ…だが精霊と契約しているのだろう?」

「そうですね。」

「ちなみにいくつ契約しておる?」

「えーと…4人ですね。」

「そんなに契約しておるのか…ふむ。」


 長老は腕を組みなにやら考え込んでいるようだ。ふらふらとどこかへ行ってしまいそうなスフィアをなだめながら少し待つと、


「教会でもう一度調べてみたほうがよさそうじゃぞ?」

「調べなおしですか?」

「うむ。職業が増えているかも知れんぞ。」


 職業が増える?聞いたことはないけど…


 眉を寄せ首を傾げていたせいか村長が説明をしてくれた。どうやら職業は増えることもあれば適正が変わっていることもあるとかで、何か変化が起きたときは調べなおしたほうがいいということだ。


「知らなかったです…」

「そりゃそうじゃろう…普通人は職業が決められたら大人しくその職業につくからのう。」


 いいことを聞いた。帰ったら早速教会へ行ってみよう。


 村長とその後最近の店のこと町の様子などを話すと帰ることにした。会話の間スフィアはここの環境が気に入ったようでずっと昼寝をしていたので、どうにか起こして連れ帰る。


「お帰りまたいってたのか。」


 門の外へ出るとずっと採取作業をしていたらしいノームが待っていた。


「ノームばかりに仕事させてごめんね。」

「問題ない。それよりまだ集めるのか?」


 ノームが集めてくれた薬草の量を確認するとかなりたくさん集まっていた。これなら今日はもう集めなくてもよさそうだ。そのことをノームに言うと町へ戻ることにした。




▽▽▽▽▽




 町へ戻るとそのまま店へ戻らずポチは教会へと足を運んだ。


「ようこそアリストテレス支部へ。今日はどのような御用でしょうか。」

「適正職業の再確認にきました。」

「再確認ですか…銀貨1枚いただきますがよろしいですか?」

「お願いします。」


 ポチは銀貨を1枚取り出すと修道女に差し出した。最初来たときは無料でできたがどうやら2回目からは有料のようだ。案内された部屋に入ると一番最初に職業を確認したときと同じ大きなパネルが壁にかかっていた。


「ではこちらに触れてパネルのほうを見ていてください。職業名が表示され、上から前衛職、後衛職、特殊職と全職の名前が一度表示されます。その後順に消えていき、最後に消えず残っていたものが適正職になります。」


 目の前にある水晶のようなものに触れ画面を眺める。前と同じように前衛職はすべて文字が消えた。次の後衛職の項目に入り上から順番に消えていくのを眺めていると、精霊術師という文字が残っていることが確認出来た。その後特殊職に移り、これは前回と同様商人と錬金術師が残っている。


「精霊術師か…」

「ステータスの更新もしますので今度はこちらの部屋へお願いします。」

「ステータスの更新?」

「はい、新しい職業が表示された場合は更新しないとその職業の項目が登録されません。」


 なるほど、そりゃ更新しないとだめだね。



  名前:ポチ

   性別:男

   年齢:16

   職業:錬金術師(精霊術師)(商人)


  レベル:21

   体力:220/220

   魔力:1620/2540


    力:112

   速さ:138

   知力:1371

    運:94

物理防御力:88

魔法防御力:301


固有スキル:チュートリアル 鑑定3

   称号:スライムに倒された男 精霊の契約者


***** 錬金術師アルケミストスキル *****

調合3 練成1 分解1 合成1 生成1 (操作)


***** 精霊術師アルケミストスキル *****

契約2 精霊召喚1 通信1 精霊魔法1 同化 (精霊進化)


***** 商人マーチャントスキル *****

話術1 ストレージ増加3 開店1 値切り1 経営1 (雇用)



 ステータスプレートでステータスと新しく増えた精霊術師のスキルを確認すると、商人より先に精霊術師がきていた。まあ商人スキルは元からそんなに使うものでもないから第3職業に落ちたのかもしれない。


「久しぶりに職業の追加みましたわ。」

「そうなんですか。」


 修道女にお礼をいって教会を出た後はそのまま真っ直ぐ店へ戻り、倉庫に荷物を置いた後自分の部屋へ戻った。


「ポチ様お帰りなさい。」

「あ、ただいま。」


 そうだった部屋にはアンジュとレムがいることをすっかり忘れていた。


「何か変わったことや困ったことはなかった?」

「はっきり言って退屈だ。」

「レム…っ…ごめんなさい部屋においてもらっているのに。」

「アンジュの魔力回復してるだろ?外に遊びに出ればよかったのに…」


 姿を消して窓から出れば誰にも気が疲れずに出られるのになんで出なかったんだ…?


「アンジュはついさっきまで寝てたんだよ!」

「わーーーっばらしちゃだめでしょっ」


《シンスキルノカクニンヲオススメシマス》


 にぎやかだな~なんかついでに聞こえたけど、ほんと最近はたまにしか出てこないね。


 まあなんにしても新スキルは確認するけど、アンジュ達には出かけるなら書置きしていくようにつげポチは仕事部屋のほうへ移動した。


「さて、順番に確認していくかな。」



契約…精霊と契約出来る。1でお互いが許可で契約。2でスキルの持ち主が強制的に契約ができる。


精霊召喚…契約している精霊を呼び出す。スキルレベルで精霊の現在位置から呼び出す場所までの距離が伸びる。


通信…契約している精霊が目の前にいなくても会話が出来る。レベルで通信距離が伸びる。


精霊魔法…契約精霊が覚えている魔法を直接使うことが出来る。1で初級魔法、2で中級魔法、3で上級魔法、4で超級魔法、5で神級魔法。


同化…契約精霊と同化し、精霊自身の能力を使うことが出来る。



 お…精霊と関わらないと出来ないことばかりだけど中々便利そうだ。ためしにサラマンダーに声掛けてみるか。


『サラマンダー聞こえるか~?』

『うぇ?マジで??こちらサラマンダーちゃんです!!』

『今どこにいるんだ?』

『えーと…手紙を届けに行った場所?の村長さん?の家??』


 なんでそんなところにいるんだ…でもちゃんと使えるみたいだしこれはいいね。


『今どうなってるの?』

『手紙を読んでもらって今どうするか話あっているね。』

『サラマンダーは何してるんだよ…』

『なんか歓迎されてます!』

『ふむ…なんか状況が変化したら連絡して。』

『わかりましたーっ』


 ふむ…アンジュとレムに教えておくか。


 ポチは再び部屋へ戻ると出かけずに部屋にいたアンジュ達に今の状況を話しておいた。


「もうしばらくかかりそうだな…それまでこのままか…」

「レム…しかたないよ~?」

「わかってるよっ」

『こちらサラマンダーちゃんです!』

『ん、どうした?』

『手紙を預かったので帰りまーすっ』

『あーちょと待てこっちに呼び戻せるから。』


 サラマンダーが帰ろうとするのを止めるとポチは『精霊召喚』を使用し、サラマンダーを呼び戻した。目の前に薄っすらと光る魔方陣が浮かび上がるとそこからサラマンダーが現れた。


「サラマンダーちゃんもどりましたーっで、これが預かった手紙です~」


 戻ってきたサラマンダーは手紙を差し出すとそれをアンジュに渡した。

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