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ファルコンZ  作者: 大橋むつお
7/29

7:火星ツアーは最終テストだった

ファルコンZ・7 

『火星ツアーは最終テストだった』         




 コクピットに行くと、ちょうどマーク船長が寝癖の付いた頭を手櫛で撫でながら出てきた……そして、その後ろから、ミナホがトレーナー風の上着を「いま着たとこ」という感じで襟元から、セミロングの髪を出しているところだった。


「そんな、スケベオヤジ見るような目で見んといてくれる」

「ミナホちゃん動くようになったのね」

 ミナコは、二人が船長室で何に励んでいたのか想像して顔が赤くなった。

「船長、ミナコちゃんには説明してあげた方がいいんじゃないですか?」

 コスモスがフォローしてくれる。

「ああ、ジャンク屋でパーツを見つけたんで、ついさっき直したとこなんや。ガイノイドは動かなきゃ、ただのお人形やからな」

「こんにちは、ミナコ。動けなかったけど、あなたのとはずっといっしょだったのよ」

「え……?」

「ミナホの意識はポチにシンクロさせといた。せやから、ミナコのことは基礎体温から知っとるで」

「え、じゃあ、ポチは?」

 よたよたとポチが船長室から出てきた。

「やっぱ、ミナホの意識を同居させるとくたびれるわ。オレのCPUは犬用なんだから。もう勘弁してくれよな、船長。ミナホのテストも過激やったからな。ちょっとクールダウンしてくるわ。ミナコ、またな……」

 ポチは、そう言うと後脚で首を掻いて船長室に戻った。

「ミナホ、テストを兼ねて、ミナコに説明したって」

 船長は、専用シートに座ると、リクライニングをいっぱいに倒して目をつぶった。


「わたしを見てくれる、いっぺんで理解して欲しいから」

 わたしと同じ顔のガイノイドに見つめられるのは、気持ちの良いものではない。

「とりあえずのバイトはこれで終わり。バイト代は今振り込んだわ、確認して」

「……え、なにこれ!?」

 ハンベが教えてくれた数字は6の下に0が八つも付いていた。

「ミナホ、順序立てて説明してあげなきゃ」

 コスモスがアドバイスする。


「火星ツアーは、最終テストだったの……ミナコのね」


「あたしのテスト?」

「ええ、これからの任務のね」

「ちょっと、これからって、バイトはもう終わったはずよ」

「バイトは、今日の昼過ぎまで。そうよね」

「だけど、火星ツアーは終わった……」


 その時、コクピットから見える地球が、だんだん小さくなっていくことに気づいた。


「地球が……」

「この船の動力は、通常反重力エンジンだけど、火星でチュ-ンしてコスモエンジンにしたの」

「ちょっと、バイト代、こんなに要らないから、地球に帰して!」

「もちろん、昼過ぎには帰してあげる」

「だって、地球時間じゃ3月12日の午前5時よ。あんなに地球が遠くなって……」

 地球は、もう月ほどの大きさになってしまった。

「船長、月の管制局からコース離脱の警報です」

 バルスが落ち着いて言った。

「よし、テスト兼ねて、ちょっとジャンプするか」

「では、冥王星まで」


 一瞬目の前が真っ白になった。


「各部異常なし。冥王星の60度200万キロです」

「これって、ワープ……?」

「時計を見てご覧なさい」

 ハンベが地球時間を教えてくれた。


 3月11日午後11時半……5時間30分戻っている。


「これは、ミナコの知識にあるワープとはちがうの……#&%*@@*:*|¥##?」


 ミナホが、たかがH系ガイノイドが、あたしの知識をはるかに超えたことを喋った。かろうじて最後の一言が「分かった?」というニュアンスであることだけが分かった。


 船長が眠そうな顔でニヤリと笑い、ミナコのスタートラックが始まった。



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