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ファルコンZ  作者: 大橋むつお
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2:ミナコのバイト

 ファルコンZ 


 2《ミナコのバイト》  



 自動車からタイヤが無くなって100年になる。


 タイヤのない自動車は、それ以前も開発されていたが、反重力エンジンではなく、風圧制御によるものであった。だから巻き上げる風というか空気の量がハンパではなく、街中で使用できるようなものではなかった。

 主に軍事用に使われていたが、120年前に反重力動力が開発され、20年かけて自動車に応用され、今では特別な許可がないと、タイヤ付きの自動車は使えない。まあ、時代劇のロケや、高い付加税が払えるお金持ちの道楽になっている。


 ミナコが乗っているのは20年前のホンダの中古車。慣性エネルギーの相殺システムが無く、旋回や上下動のGをまともにうけるので、車酔いしやすく、スピードもそんなには出せない。


「ミナコちゃん、気分悪くなったら言ってね。なるべくやさしい運転はするけど」

「いえ、大丈夫です。でも、大阪までマニュアル運転なんて大変ですね」

「慣れると、今のオートの車より扱いやすいわ。こっちの方が、自分の体の一部のようでね。ただ同乗者には辛いけど」

 コスモスのスキルは凄かった。東名高速(四代目)に入った時には800㎞になっていたけど、ほとんど加速のGは感じなかった。


 一時間ちょっとで、大阪の八尾空港に着いた。


 その間にコスモスはバイトの内容や条件を詳しく伝えてくれる。それも口で! なんというアナログ。この24世紀では、ハンドベルト式の端末で瞬時に情報は送れる。

 でも、こうやって会話していると、相手の個性や理解力が高まる。ミナコはコスモスに好意を持った。


「やっぱ、もう3センチはないと、居心地悪いな、ミナコの胸」


 ドッグロイドのポチは、いただけない。


「やあ、ほんま助かるわ。今時AKBの古典音楽に詳しい女子高生なんかおらんもんな」

 船長であり、プロダクションの社長であるジョ-ジ・マークが握手の手を差しのべながら言った。

「AKBのことなら、任してください。彼女たちの現役時代のことなら、まばたきの平均回数まで分かってます」

「火星じゃ、空前のAKBブームらしくてな。もう出来合いのデジタルショ-じゃ満足してくれへん。『恋するフォーチュンクッキー』なんか、大島優子と篠田麻里子のコマネチのタイミングと角度にまでうるさいって凝りようや。並のデジタルメモリーのショーは、すぐに見破られてブ-イング。やっぱり制御は、あんたみたいに詳しい子にリアルタイムでやってもらわならなあ。客の求めてるんは、真のコミュニケーション。よろしゅう頼むで。あ、こいつが助手で、コパイロットのバルス。ドンクサイ奴で大阪弁は、よう喋らんけどな」

「よろしくミナコ。世界で、このファルコンZのオペレートできるのは、ぼくと船長ぐらいのもんだからね」

「宇宙一のジャンクシップだからな」

「ポチ、今度言うたら、オシオキに声帯とったるからな」

「それは、止してよ。キャンキャンワンワンうるさいから」

 コスモスがフォローして、ジャンクシップのファルコンZは火星を目指して離陸した。


 そう、あたしのバイトは、古典芸能の趣味を生かした、デジタルショ-のディレクター。


 文化祭や区民祭りでは、みんなに喜んでもらった。まあ、ローカルなオタク。でも火星は、空前のレトロブーム。それも火星開拓以前の21世紀初頭の文化。AKBや乃木坂は、その中でももっともクールだと評判なのだ。


 ミナコの一泊二日、ギャラ6万円のバイトが始まった……。



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