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ファルコンZ  作者: 大橋むつお
19/29

19:☆………コスモス星・2

ファルコンZ 19

『☆………コスモス星・2』        




「コスモンド抽出開始。アブストラクター(抽出機)インサート」


 軽い衝撃があった。不安な顔をしていたんだろう、マーク船長が説明してくれた。

「大昔の注射針刺すようなもんや。コスモンドっちゅう鉱石が、この船のエネルギーでな。そのコスモンドをミクロン単位のサイズに砕いて、船の燃料庫に備蓄するんや」

「アブストラクターには、何重にもフィルターが付いているから、ソウルなんかは、入ってこないわ」

 ミナホが答える。

「ソウル?」

「アブストラクトチェック」

「オールグリーン」

「スタート」

 微かに音がしたが、それもすぐに消えた。作業は、とても静かに流れている。

「ソウルというのは、このコスモス星の精神のようなもの」

「星の精神?」

 星に精神があると、話が飛躍したので、ミナコは思わず声をあげた。

「そうや、この星には心がある。えらい寂しがり屋でな。この星に降りた船の多くが逃がしてもらわれへん。せやから、パッシブは全て切る。関心があると思われるさかいな」

「船長、重量に微妙な変化があります」

「……僅かに減っとるなあ。船体の熱膨張との差し引きは?」

「まあ、誤差の範囲です」

 船長は安心した顔になったが、ミナコは不安だった。

「どのくらい、違うんですか?」

「1グラムちょっとやな……気いになるか?」

「なんだか胸騒ぎ……」


 それは、突然やってきた。


「アブストラクター停止……あ、再起動しました」

「船長、重量マイナス47キロ。異常です!」

「47キロ……コスモスのキャビンの閉鎖解除。モニターに出せ!」

「やられました、コスモスさんがいません!」

「星に取り込まれたか!?」

「解析……最初の1グラム減少は、コスモスさんを分子分解したときのものです。今アブストラクターが緊急停止したときに、分子分解したコスモスさんを一気に取り込んだようです」

 

「そんなことって……」


 ミナコは愕然とした。そして、ミナコの家に迎えに来てくれてきてくれたときから、今までのコスモスの思い出が、懐かしさと共に蘇ってきた。

「全員、コスモスに関するメモリーをブロックせえ!」

「あ……!」

 ミナコは怖気が走った。自分の指先が透け始めてきた。

「ミナコ、火星のコンサート記録のチェックと解析をしろ! 観客一人一人のデータまでな!」

「なんで、今!」

「言うこと聞け!」

 船長は、古典的なヘッドマウントアナライザーをミナコに付けさせ、火星ツアーのデータバンクに直結させた。奔流となってデータがミナコの頭に流れ込んできた。

「あと何分かかる」

「アブストラクト、80%。あと一分です!」

「アブストラクター緊急停止!」

「アブストラクターから、何かが上がってきます。圧縮情報のようです。フィルターが破られます!」

「ミナコ、目えつぶれ!」


 コックピットにコスモスの3D映像が現れた。ニコニコ笑いかけながら、みんなに近寄ってくる。


「ミナコちゃん……」

 ホログラムは、実体化して、ミナコのヘッドマウントアナライザーに手を掛けた。

「アブストラクト完了」

「アブストラクター引き抜きました!」

「緊急発進!」


 ファルコンZは、磁石が同極同士で反発しあうような早さで、コスモス星を離れた。

 実体化していたコスモスは3Dに戻り、星の重力圏を離れる頃には消えてしまった。


「ミナコ、ヘッドマウント外してええぞ」


「ああ、頭パンクするかと思った」

 ミナコは、解析情報を振り払うかのように頭を振った。

 

「コスモスの情報、各自インストール。バルス、コスモスのバックアップデータ復元」

「船長、コスモスさんは?」

「再生する。ちょっと時間はかかるけどな」

「船長、コスモスの外見は以前のままでいいですね」

「ああ、あれが完成形やさかいな」


 そして、十時間ほどして、コスモスがキャビンから現れた。


「ああ、よく寝た。船長、異常はなかったですか?」

「全て、順調。次いくぞ」


 ファルコンZは、次の宇宙を目指した。

 



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