19:☆………コスモス星・2
ファルコンZ 19
『☆………コスモス星・2』
「コスモンド抽出開始。アブストラクター(抽出機)インサート」
軽い衝撃があった。不安な顔をしていたんだろう、マーク船長が説明してくれた。
「大昔の注射針刺すようなもんや。コスモンドっちゅう鉱石が、この船のエネルギーでな。そのコスモンドをミクロン単位のサイズに砕いて、船の燃料庫に備蓄するんや」
「アブストラクターには、何重にもフィルターが付いているから、ソウルなんかは、入ってこないわ」
ミナホが答える。
「ソウル?」
「アブストラクトチェック」
「オールグリーン」
「スタート」
微かに音がしたが、それもすぐに消えた。作業は、とても静かに流れている。
「ソウルというのは、このコスモス星の精神のようなもの」
「星の精神?」
星に精神があると、話が飛躍したので、ミナコは思わず声をあげた。
「そうや、この星には心がある。えらい寂しがり屋でな。この星に降りた船の多くが逃がしてもらわれへん。せやから、パッシブは全て切る。関心があると思われるさかいな」
「船長、重量に微妙な変化があります」
「……僅かに減っとるなあ。船体の熱膨張との差し引きは?」
「まあ、誤差の範囲です」
船長は安心した顔になったが、ミナコは不安だった。
「どのくらい、違うんですか?」
「1グラムちょっとやな……気いになるか?」
「なんだか胸騒ぎ……」
それは、突然やってきた。
「アブストラクター停止……あ、再起動しました」
「船長、重量マイナス47キロ。異常です!」
「47キロ……コスモスのキャビンの閉鎖解除。モニターに出せ!」
「やられました、コスモスさんがいません!」
「星に取り込まれたか!?」
「解析……最初の1グラム減少は、コスモスさんを分子分解したときのものです。今アブストラクターが緊急停止したときに、分子分解したコスモスさんを一気に取り込んだようです」
「そんなことって……」
ミナコは愕然とした。そして、ミナコの家に迎えに来てくれてきてくれたときから、今までのコスモスの思い出が、懐かしさと共に蘇ってきた。
「全員、コスモスに関するメモリーをブロックせえ!」
「あ……!」
ミナコは怖気が走った。自分の指先が透け始めてきた。
「ミナコ、火星のコンサート記録のチェックと解析をしろ! 観客一人一人のデータまでな!」
「なんで、今!」
「言うこと聞け!」
船長は、古典的なヘッドマウントアナライザーをミナコに付けさせ、火星ツアーのデータバンクに直結させた。奔流となってデータがミナコの頭に流れ込んできた。
「あと何分かかる」
「アブストラクト、80%。あと一分です!」
「アブストラクター緊急停止!」
「アブストラクターから、何かが上がってきます。圧縮情報のようです。フィルターが破られます!」
「ミナコ、目えつぶれ!」
コックピットにコスモスの3D映像が現れた。ニコニコ笑いかけながら、みんなに近寄ってくる。
「ミナコちゃん……」
ホログラムは、実体化して、ミナコのヘッドマウントアナライザーに手を掛けた。
「アブストラクト完了」
「アブストラクター引き抜きました!」
「緊急発進!」
ファルコンZは、磁石が同極同士で反発しあうような早さで、コスモス星を離れた。
実体化していたコスモスは3Dに戻り、星の重力圏を離れる頃には消えてしまった。
「ミナコ、ヘッドマウント外してええぞ」
「ああ、頭パンクするかと思った」
ミナコは、解析情報を振り払うかのように頭を振った。
「コスモスの情報、各自インストール。バルス、コスモスのバックアップデータ復元」
「船長、コスモスさんは?」
「再生する。ちょっと時間はかかるけどな」
「船長、コスモスの外見は以前のままでいいですね」
「ああ、あれが完成形やさかいな」
そして、十時間ほどして、コスモスがキャビンから現れた。
「ああ、よく寝た。船長、異常はなかったですか?」
「全て、順調。次いくぞ」
ファルコンZは、次の宇宙を目指した。




