12:パト船
ファルコンZ 12
『パト船』
☆……パト船との遭遇
型式不明の宇宙船、左へ寄せて停船しなさい。
「どうします。振り切りましょうか?」
バルスが、ニヤニヤしながら船長に聞いた。
「法令遵守。おれ達はまっとうな交易船やからな」
「では、そのように。ポチ、お巡りさんに噛みつかないようにね」
「退屈だから、警察犬にでもしてもらおうかな」
「ミナホとミナコは、二流のアイドル。情報はポチからもらってくれ」
パト船にバレないように、ミナホはコネクターで、ミナコはハンベをポチの首輪に繋いで情報をダウンロードした。
男女二人ずつの警官が乗船してきた。
「船籍証、積み荷の明細、乗員の身元証明」
最上級の警部補がエラソーに言って。部下三人に船内の捜索を命じた。
「ファルコン・Z……といいうことは、あんたが有名なマーク船長?」
「あんたの息子がサインを欲しがるほど有名やないけどな」
「あいにくうちは娘なんでな」
「ほんで、おれみたいな個人営業になんの用だい?」
「……この船は、火星ツアーの飛行許可だけで、太陽系から出ることは許可されておらんようだが?」
「その、銀河連邦の航行証明、よう見てみい。圧縮変換したあるけど」
「まさか、こんなモグリが……」
「な、文句あるか?」
「本物のようだが……目的地と航行目的が記載されとらんが?」
「失礼やけど。あんたらみたいな立場のお巡りさんには言えんほどの重要任務やねん」
「ちょっと、管制本部に問い合わせるぞ。おい、この航行証明の照合!」
女性警官が、警察用のハンベで照合した。
「……本物です。クラスAの機密で、私たちでは閲覧できません」
「な、言うたやろ」
「なら、なんで冥王星で停まらなかった?」
「あそこの司令は、こんなものじゃ通してくれへん。ちょっとでも、不明なとこがあると罰金や……でや、それが、ここ一年の司令の記録や。保存してくれてもええで」
「いや、閲覧で十分だ。これは見なかったことにする」
「とりあえずの行き先は、三丁目星や。この二人は、ヒヨコやけどアイドルや。で、営業。なんやったら、二人に確かめ」
ミナコは、警部補がやってくるまでに情報を送った。近寄られるのもいやなタイプだ。
「双子でも、個性がちがうんだな。ミナホの方は気にしないようだな」
そう言って、ハンベ同士を接続した。ハンベの直接接続は、警察でも令状がなければできない。個人情報が全部分かってしまうからだ。
「間違いない。興業ライセンスも本物だ。まあ、励むんだな」
「おたく、娘さんやろ。なんやったらサインさせたげよか。人気が出たら、ちょっともらいにくなるで」
「いいよ、おれ達は仕事でやってるんだからな」
そう言いながら、言葉のうらには「売れないアイドル」という侮蔑の気持ちが隠れていた。
「キャップ、積み荷はジャンクばかりです。違法な積み荷はありません」
部下が報告にきた。
「名前の程には、地味な仕事をやってるようだな。ま、ぼちぼちやんな」
クラスAの機密は、見たこと自体記憶から消している。いいかげんな警察だとミナコは思った。
「それからなあ、太陽系出たとこで海賊に襲われたで。そういう取り締まりもやってくれよな」
「船は無事なようだが……」
「我々が撃退しました」
コスモスが無機質に応えた。
「戦闘詳報送りましょうか?」
「それには及ばん。被害が無いのなら、なにも無かったのと同じだからな」
ミナコはあきれた。
「まあ、気いつけて帰りいや。海賊はマグダラや。パト船でも容赦ないで」
「マグダラ……情報をよこせ!」
「すまんなあ。そっちが、いらん言うた時に削除してしもた」
「ゴミ箱に残ってるだろう!?」
「清潔好きなんで、ゴミ箱はいつも空にしてます」
「くそ……」
「船長、0・2パーセクにマグダラの船。接近してきます」
「え、さっさとひきあげるぞ!」
パト船は、慌てていなくなった。
「バルスも芝居うまいなあ」
「ダミーの情報つくっただけです。ちょっと凝りましたが」
「ようでけたダミーや。しばらくパト船追いかけさせとき」
「了解」
「船長、ミナホちゃん、どうしてガイノイドってばれなかったんですか?」
「簡単に言うで……惜別の星に寄ったからや」
ミナホが、かすかに笑った。ミナコに似ているが、ミナコは、こんな笑顔はできないと思った。
「では、三丁目星に向けワープします」
ファルコンZは三丁目星を目指した……。




