11:船長のお布施
ファルコンZ 11
『船長のお布施』
☆……惜別の星 その二
あれは、ここから飛び立って行った阿呆どもの墓標さ。
「飛び立った……で、帰ってこなかったんですよね」
「そうだよ……」
「じゃ、墓標の下には何もないんじゃ?」
「誓約書と、阿呆のメモリーが入っている」
「誓約書?」
「ああ、ここから先はレスキュ-もしてもらえない未知の宇宙だった。それで、自己責任で行くって誓約書が要ったんだ……」
「何人ぐらいいるんですか……?」
「それは、知らない方がいい」
意外なことに、無口なバルスが答えた。
「数え方で答が違うのよ……」
墓場から吹き上げる風に、髪をなぶらせながらコスモスが続けた。
「人間だけじゃなく、アンドロイドやガイノイド、ペットロイドも入っている」
「中には、自分のパーソナリティーを船やロイドにコピーして飛ばしたハンパなやつもいてるんや」
「そういうやつらは、コピーが行方不明になると、なぜか間もなく死んでしまった。そういう阿呆も一部混じっておる。だから、わしは聞かれたらバカほど……と、答えている」
「で、バカって、どのくらいて聞かれると、阿呆ほどと答えよる。それが正しい答や」
そのとき、フライングデッキに乗ったひっつめ頭の女の人が墓場からやってきた。
「やあ、船長もみなさんもお変わり無く。コスモス、イメチェンね」
「まあね」
「ティラミス、なんか、すっかり馴染んでしもたみたいやな」
「もう、行くとこもないしね。それに、あたしが居なくなったら李赤のジイチャン困るしね」
「ハハ、そういうことにしとる。ティラミスほどのガイノイドならいくらでも生きていく道はあるんだけどな」
「このお二人さんは?」
「ああ、ミナコ。よろしく」
「あたしは、ミナホ」
「……読めないわね、あなたたちの目的」
「そらそうや。オレかて知らんもんな」
「船長らしい」
「わたしには、使命があるの。なにか、よく分からないけど」
「あたしはバイト。それが、なんの因果か……」
「まあ、マーク船長なら大丈夫だわ」
「ティラミス、墓場でなにかあったの?」
コスモスが聞いた。
「お墓が百基ほど無くなってるの」
「このごろ、この辺の宙域が騒がしいからな、昔の血が騒いで、飛び出したかな……」
「それとも、さらわれたか。あのお墓の住人達の情報は全部解析されてる訳じゃないから」
「まあ、いくらかは戻ってくるだろう。ここの静けさが気に入りだしたやつも多いから」
「ジイサン、少ないがお布施だ。とっといてくれ」
船長が古式ゆかしい『御布施』と書かれたのし袋を渡した。
「すまんなあ……こんなに?」
「ああ、ちょいと火星で儲けたもんでな」
いったい、船長はいくら稼いだのか、呆れるミナコだった。
「あら、ポチの姿がみえないけど」
「船で留守番いうて、出てきよらん」
「ティラミスさんて、付き合い古いの、船長?」
「オレの連れのアシスタントやった。船がやられて、アイツだけが放り出されよってな。それから、あの星に住み着いとる」
船に戻ると直ぐに発進準備に取り掛かった。
「周回軌道、離脱します」
バルスが静かに言った。惜別の星がみるみる小さくなっていった……。




