表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファルコンZ  作者: 大橋むつお
10/29

10:墓標の群れ 

ファルコンZ 10 

『墓標の群れ』         




☆……惜別の星 その一


「なんで、この星に寄らんとあかんのかね……」

「ファルコンZの意思です」

「クライアントの注文か?」

「区別がつきません。船長のチューンがデリケートなんで。それにしても、何もない星ですね」


 コスモスが、珍しく機嫌が悪い。 


「ここって、なんの星なんですか?」

 タバコをふかしだした船長と、機嫌の悪いコスモスの代わりにバルスが言った。

「百年ほど前は、人類が到達できる、もっとも遠い星だったんだ。だから、ここから先に行く奴は命の保証がない。それでも宇宙の魅力に取り憑かれたやつらは、ここから旅立って、その大半は帰ってこなかった」


 それで、この星は寂しいんだ。西部劇のゴ-ストタウンみたい。ミナコは、そう思った。


「取りあえず、宿へ行こか……」

「ここに泊まるの?」

「ああ、そういうシキタリでな……」


 二階建ての酒場と宿を兼ねたような建物だった。


「おーい、だれか、おらへんか!」

「船長、そこのボードに……」


 フロントのボードに色あせた紙が貼ってあった。

『下の畑にいます』

 不思議なメモで、日本語にも英語にも中国語にも、ミナコには分からない言語にも見えた。まるで宇宙港のインフォメーションボードのようだったけど、なんの仕掛けもない。ただの日に焼けた紙きれだった。

「船長みたいな男は、他にもいるってことさ」

 バルスは、そう言いながら出口に向かった。嫌がっている船長以下を促すように。


 灌木の坂道を下ると、広い麦畑に出てきた。


 弁髪の老人が、よちよちと蟹歩きをしていた。ミナコたちに気づくと、ウロンゲに見つめたが、何かに気づいたようで、パッと明るい表情になり「こっちへ来い」というサインをした。

「いやー、マークのボウズじゃねえか。その稼業でここに寄っちゃ、足がつくぜ」

「それがなあ……」

「今回は、正式なクライアントからの輸送業務なんです。これが依頼状です。ちゃんと連邦政府の認可が下りてます」

 コスモスが、空中にバーチャルモニターを出して見せた。

「こんな畳みたいな大きさにせんでも見えるよ。コスモスは気を遣いすぎる」

「わたしのこと、分かるんですか!?」

「以前とはボディーが違うが、個性はコスモスだ。このボーズがイジリ倒しても、ワシには分かる。以前は、もっとコケティッシュなガイノイドだったが」

「このバルスとコスモスは化けもんや。このごろは自分で勝手にバージョンアップしよる。今はうるさいカミサンと、親類のオッサンみたいなもんや」

「いいトリオだ。しかし、この依頼状は正式だが、こんなクライアントは存在せんぞ」

「一部上場企業だぜ。運輸局の審査も通ってる」

「壮大なダミーだ。運輸局の審査を通ったってことは、地球規模のイカサマだ。マークほどのボウズが知らんわけじゃないだろう」

 船長は苦笑いするだけだった。コスモスの機嫌はいつのまにか直っていた。

「そのお嬢ちゃんたちは? 一人はガイノイドのようだが」

「今度の積み荷の一つさ。もっとも届け先は、もっと先に行かなきゃ分からんが」

「ということは、輸送目的も分かってないな」

「ああ……」


 ミナコは、その言葉に不安になった。


「ちょっと、ちゃんと約束通り帰してくれるんでしょうね!」

「そりゃあ間違いない。依頼状にもミナコは帰すように書かれてる」

「こういう書類は、読み方次第なんだが……まあ、マークの読みは間違いなかろう。大きなところではな。そうでなきゃ、ここに無事に立っているわけがないからな。まあ、つもる話は麦踏みをやりながらやろう。あの畑の端まで手伝ってくれ」

「ああ、いいよ」

 畑は、歴史遺産の東京ドームの倍ほどあった。ミナコはゲンナリした。

 オジイサンの名前が李赤ということは、そのあとの自己紹介で分かった。

 で、「昔はなあ……」という枕詞が付く話を百ほど聞いて、やっと、麦畑の端まで来た。


 そして、息を呑んだ。


 町の下に麦畑、さらにその下に広がっていた。


 一面、地平線までもあろうかという墓標の群れが……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ