今日の東京は平和です
遅くなりました
「暑いな」
友人は隣を歩く青年に話しかける。
今語り掛けられている青年は名を那鋏牧だったと私は憶えている。
この青年の友人、つまり今語り掛けている側の男だが。申し訳ないことに私は彼の名をまだ知らない。
いつか君たちに教えることを約束するよ。すまないね。
「今日最高気温24度だって」
青年は額を肩で拭いながら友人の呼びかけに答えた。
「ひえ!?砂漠みてぇだな」
「砂漠の夏は30度~40度が普通くらいだよ」
友人は「例えだろ」と頬を膨らました。それに対し「男がその顔やると気持ち悪いね」と青年は答えた。
この青年たちは高校1年生の16歳。そして今歩いているのは池袋である。
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★東京都・池袋駅(1月20日・日中)
冷たく不快な金属の擦りつく音とともに男は足を踏み出す。この男、神取一離。高級な女物のコートを羽織ったこの男は後ろで勃発している不良の抗争や、それに怯える人々には目もくれず、歩を進める。
駅を出た男は周囲を見回すと、ある一人の女性を見つけ笑顔で手を振った。
「外付さーーん」
女性は男を見ると静かに微笑み小さく手を振る。
外付窓内。男の恋人だ。この二人、年齢21歳。この物語に振り回される人物でもあるんだが、この物語を振り回す人物でもある。
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★東京都・自由が丘(同時刻)
そこには、先ほど入れた紅茶を飲みながら優雅に本を読む少女の姿があった。
白い髪をもった青い目の少女。
彼女はこの物語の最重要人物だ。憶えておくといいだろう。