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エレクトリカ  作者: ハリマトモアキ
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ダインスレイブ

「咲、行くぜ!」


「おっけー。ボスー!」


 空中にいる2人はお互いに合図を取り合うと、咲は背中に背負っていた先端の尖った鉄の棒と、二股に分かれたコイルの巻いてある長い鉄の棒の様なものを取り出す。


 そして、先の尖ったその棒をコイルビット8つの中心に入れると、その棒の周りをコイルビットがクルクルと回転し始める。そして、二股に分かれている磁石のような外見の棒の中心に突き刺し、なにやら簡易型の武器が出来上がったのだった。


 咲は完了と同時に出雲に手で合図すると、咲はケーブルのついたゴーグルを被り、ホバリングのようにその場に静止した。


「おぉっと!王寺隊員ここで武器?を取り出し、空中に静止しました。ところで城ヶ崎さん、なんですか、あの王寺隊員が持っているゴツい武器?は?」


 吉隠が城ヶ崎に不思議そうな顔で尋ねると、城ヶ崎はフッと微かに笑うと答える。


「...面白い物をだしましたわね。なるほど、確かに王寺隊員なら...」


「えぇ?城ヶ崎さん!1人で納得しないで教えてくださいよー!」


「ふふふ、あれはコイルガン。ガウスキャノンと呼ばれる物ではないかと推測しますわ。」


「コイルガン?銃みたいな物ですか?」


「ええ、そんな感じですわ。火薬使わない銃ですわ。」


「あぁい。ただ、あれ一つで重阪隊員のフィールドを破れるとは思えないがな。」


「ふふ、ですわね。ここからはどう展開するかを見せてもらいましょうか。」


 実況の3人が咲の持つコイルガンの推測をする頃、出雲は空中に手を翳し、スカイボルトをどんどん増殖させていくと、雪乃を左目のバイオニックアイで捉え、数式のような言葉をブツブツと呟き始める。時折、由里香に謎の暗号みたいな言葉を囁くと、咲と雪乃の位置を何度も再確認していた。


「しゅとくん、咲ちゃんの位置決まったよ。後はしゅとくんのスカイボルト待ちやよ。」


「こっちも今組み立てれた!いつでもいいぜ!」


 出雲が右手の親指を立て、準備が整ったことを由里香に合図する。


「わかった。咲ちゃんに合図すんな。咲ちゃん、聞こえる?」


「聞こえてるよー、由里香さんー。」


 咲はいつもの間延びした口調で答えると、その場をフワフワ浮いていた。


「了解だよ。10秒後にスカイボルト発射するよ。しゅと君、カウント開始するよ?」


「オッケー!カウント頼む。」


「了解!カウントダウン開始するよ。10、9...」


 由里香のカウントダウンが始まる。


 上空のスカイボルトは、空を埋め尽くすと、先端を雪乃のいる方に向きを変え、点火し始めた。


 対する雪乃だが相変わらず、引き攣った笑いを浮かべながら、自分の前にあるものを重力により押しつぶしていく。気に入らないものを全て押しつぶすかの如く、黒い重力フィールドは周りを包むと、理不尽なまでの力で全てを破壊していく。


 その範囲は凄まじく、雪乃の作ったフィールドは自分の周りを囲うように黒い結界は侵入するものを無慈悲に地面にすりつぶしていた。


 由里香も画面越しから見る光景に驚きの表情を隠せなかった。由里香が以前見た、自分の記憶にある雪乃のグラヴィティワールドとは、違って見えたからだ。


 前より更に乱暴に、乱雑に、力を抑えられない凶暴な重力は、生きているように蠢くと、大地を蹂躙していた。


 以前の雪乃を知る由里香は、複雑な心境を胸に秘めるが出雲には何も言わぬまま、カウントを続ける事にした。

 

「カウント5、4、3、2、1、0!」


「いくぜぇ!霰のように降り注げ!」


 由里香のカウントダウンが終わり、出雲は右手を振り下ろす。

 直後、無数のスカイボルトは空中から解き放たれ、地面に向かい降り注ぐ。


 無数の星が落ちてくるような、轟音を鳴り響かせながら、スカイボルトは対象に向かい高速で迫る。


「でました!!出雲隊員、得意のスカイボルト!空を埋め尽くしていた巨大なミサイル群は雨のように対象に降り注いでいく!」


 吉隠が実況するなか、左鎧は怪訝な顔で言葉を続けた。


「あぁい、何考えてんだあいつ?重阪隊員のグラヴィティワールドの前じゃ、スカイボルトはフィールドに触れた瞬間爆発するぞ。」

 

 左鎧が言うように雪乃の重力フィールドは円状に広がり、それは上空にも及んでいた。スカイボルトを無数に放とうが、左鎧が言う様その重力場の前ではミサイルは誘爆しそうにも思える。


 雪乃はその無数に降り注ぐミサイルに、ふふっと引き攣った笑みを浮かべると、両手を上空にかざす。


 雪乃の眼光が鈍く光ると、カッと見開いた瞳を対戦する2人に向けた。


「ふふっ、ふふふ...みんな、私の邪魔ばかり!押し潰して、グラビティワールド!アクトワン。ヘビーウォール!!」


 雪乃の叫べに応えるよう、重力場は更に黒く、濃くなると、更に歪曲した空間を作り出す。スカイボルトがその空間に触れると、ベコッと先端が下に折れると、最後には爆発し粉々になった。


 それは左鎧の言うように何発当たっても同じで、雪乃に届かないどころか、フィールドに触れた瞬間に爆発していくスカイボルトは周りを巻き込みどんどんと連鎖のように誘爆していく。


 まるで高出力のバリアのように、何も通さない黒い壁は、徐々に範囲を広げてゆくと、スカイボルトの爆風だけがあたりを埋め尽くす。


 あたりはその爆風のせいで、視界の利かない空間を作り上げ、モニターにも砂嵐のような砂塵と爆炎が舞い、モニターからは何も見えない状態を作り出していた。


 それでも、出雲はスカイボルトを発射し続ける。無限に作り出されるような錯覚に陥るほど、出雲のスカイボルトは上空にウィルスのように増殖しては、対象に向けて無意味にも見える発射を繰り返していた。


「咲!あれの発射準備にかかれ。」


「オッケー、ボスー。」


「了解。咲ちゃん、電磁加速式リトルロッズ『ダインスレイブ』の発射準備にかかって、かけられる時間は30秒以内。」


「まーかされたー。いくよー。コイルビット回転開始ー。」


 咲の声にあわせてコイルビットが緩やかに鉄の棒の周りをグルグルと回転し始める。キュイーンと高音を鳴らしながら、真ん中の鉄の棒も徐々に回転数を上げていく。


「コイルビット回転確認。咲ちゃん、座標データ。」


「オッケー由里香さんー、座標データインプットー。」


 咲のつけているゴーグルにターゲットマーカーと、座標をあらわした数字、変数などが映し出される。以前白石が使ったエクスカノンのシステム、イグザシステムにもよく似たその外観と構造。


 咲はその数字を確認すると、銃にも似たその兵器を雪乃に向け構える。その、やけに長い刀身はチリチリと帯電しては、放電を繰り返す。

 

「D2システム起動ー。ダインスレイブ、ターゲットロック開始ー。」


『ok。D2システムスタートアップ。ダインスレイブ、アクチュエーション。ターゲットチェッキング。』


 機械的な自動音声がゴーグルから流れると、咲はその兵器のトリガーに右手の人差し指をかける。


 スカイボルトが降り注ぐ中、咲は一呼吸を入れた。


「...すーーー。」


 咲は深く息を吐き出すと、真剣な顔つきでターゲットマーカーを何度も確認し、銃口を微妙に上下し、あるところでピタっと止まる。


「咲ちゃん!」


「咲!頼んだ!」


「ふーわ。いけなーい、あくび出ちゃったよー。いくよー。ダインスレイブー、...発射!!!」


『ok、ダインスレイブ、ファイリン』


「いっけぇーーー!」


 咲がトリガーを握り込む。そうすると、高速回転していた先端の尖った棒は、咲の掛け声にあわし、レールのような外見のトンネルを抜け二股の棒から高速射出され、地上に向かい衝撃波を伴い対象に迫る。


 その速度は凄まじく、空気を切り裂き突き進み、その弾道は爆音を鳴らしながら、地上へと落下していく。まるで、小隕石でも降ってきたかのような速さで赤く光る、その弾丸は、雪乃の作り出す黒い重力の世界へ入り込んでいった。


「簡易型ロッズ、ダインスレイブ。あの速度と回転なら雪乃のグラヴィティウォールも突き破るはずだ。後は...」


「目標通り進むかやんな。」


「だな。後は神頼みだ。」


 その発射に後方に大きく弾き飛ばされた咲も、弾丸の行方を見守る。みんなに託された一発の弾丸は、それぞれの想いを乗せ重力の壁を突き破った...


 かに見えた。


 そう、見えた。


 光速の光の矢が地上を照らし、闇が晴れると皆思っていた。


 視界の利かない空間、スカイボルトが舞い踊る中、一条の矢が雪乃に迫るものだと。


 しかし、見えていないはずの雪乃は、両手を上空にかざすと、ボソッと呟き、目を見開く。


「..グラヴィティワールド!アクトスリー、ナイトフォール!」


 雪乃が呟いたその瞬間だった、重力の渦は巨大な滝の様に、地上へ向け舞い降りた。以前よりも強い黒い渦は大瀑布のような黒い波となり、舞い降がった砂塵も無理矢理に、地面に向かい引きつける様に落下させていく。


 黒い大瀑布。


 この表現がぴったりの光景だった。


 水が重力に逆らえず、下に落ちる様に、夜の帳が下りるよう、暗く、深い、黒い幕は理不尽な力で崖の急斜面から水が流れ落ちる様、全てを直下に落下させていく。


 咲の放ったダインスレイブも、例外なくその波に飲み込まれることになる。


「!!?」


「なっ?!なんでダインスレイブの発射がわかったん?こんなに撹乱してるのに?!」


 由里香から驚きの声が上がる。無限に発射されるスカイボルトで撹乱もしていた。ある意味賭けだったが、その群の中に咲を隠し、スカイボルトが咲に当たる心配があるほどスレスレを出雲のコントロールで操っていた。ましてや発射した弾の音も、スカイボルトの爆音で隠していたのに、雪乃は微かな違和感に気づいたのである。


「くそっ!戦闘感鈍ってねーじゃねーか。ここでナイトフォールかよ!」


「しゅとくん!プランBに変更や。多分ダインスレイブは...悔しいけど、はずれる。」


「由里ちゃんの読みがそうなら、しゃあねーな。切り替えは迅速に、だな。出雲儚が本当のロッズを見してやるよ。」


 出雲と由里香が会話する中、咲の放ったダインスレイブは、雪乃の前方10メートルの地面に着弾し、深々と突き刺さり地表を揺らす事になる。


 D2システムで、雪乃が作り出す重力による変数軌道も計算したのに、結果は大きく外れたのだった。


「ダインスレイブ目標より10メートル先に着弾。対象にダメージは無し。」


 由里香が即座に結果を報告する。


 そして、出雲と由里香は2人その場で頷くと、迅速に作戦を変更する。


「不本意やけど、プランBに変更や。」


「了解。」


 もし、こうなったらこうすると言うのを何回と繰り返し、叩き出されたプランB。それは、出雲の理不尽なまでの力を示す、作戦だった。


 その武器の正式名称。


 Rods from God。


 神からの杖と例えられ、運動エネルギー爆撃とも呼ばれる、その一撃。


 重量はタングステンでできた約8tの金属棒に小型推進ロケットを取り付け、低軌道上から発射し、地上へ投下するというもの。


 その威力は馬鹿げたもので、核爆弾に匹敵するとも呼ばれている。


 いくら雪乃がグラヴィティワールドを展開していても、この一撃なら、頭上から一直線に最短でたどり着き、粉砕することができる。


 痛みを感じる間もないほどに、降り注いだ金属は周囲もろとも無に返すのである。


「しゅとくん!ロッズの準備は?」


「いつでも発射可能だ。一番初めに作っておいたからな。」


 どこか哀愁漂う顔で呟く出雲に、由里香何か察したのか問いかける。


「...でも、しゅとくん。ほんまにええんやな?」


「いいもなにも、俺がやるしかないだろ。まあ、任せとけよ。」


 粋る出雲だが由里香は知っていた。いや、誰も気づいていた。出雲の本心がそうじゃないことに。出雲の小刻みに震える体は、頭で理解しても、体がついていかない様な、嫌々行動をする子供の様だった。


「...しゅとくん。」


 由里香が悲しそうな声で出雲の名前を読んだ時だった。


 ブブブブ


 ブブブブ


 無線に雑音が入った後だった。


「...待ってー!!ボスー!やりたくなかったらやらなくてもいいんだよー!今、全然ボスらしくないよー!」


 それは咲からの通信だった。


「...咲。でも、誰かがやらなくちゃなら、俺がやらなきゃいけないだろう。」


 グッと拳を握る出雲に咲は続ける。


「ボスー!雪乃さんに届けるのは攻撃じゃなくて、言葉だよー!ボスの気持ちだよー!想いは届くよーーー!」


 咲には珍しく渾身の力を振り絞り、言葉を言い放った。


「...やな!そうやな咲ちゃん。倒さなくていい相手、倒さなくてもええやない、しゅと君。いつものしゅと君らしく、むちゃくちゃしてきーや。」


「...由里ちゃん。」


「ボスー。言葉は武器だよー。ボスの言葉は絶ーー対届くからー。」


 雪乃を見つめた後、出雲は空を一度拝むと、咲に少し泣きそうな顔で微笑むのだった。


「ありがとな!お前ら!どうかしてたぜ出雲儚は!俺の無茶苦茶さ今から見せてやるよ!!」


「よーしー。ボスー、咲に掴まってー。」


 咲の伸ばした手に、出雲は捕まると、咲を抱き抱える様な姿勢で空中に乗り出した。


「咲!いくぜ!!」


「おうー、だよー!」


 そう言い放ち2人は、雪乃の作り出す重力場の中に空中から飛び込んで行ったのだった。

更新遅くなりました。読んでくださっている方には大変申し訳ないです。

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