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エレクトリカ  作者: ハリマトモアキ
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ミーティング 2

定刻の会議の時間になると出席者がどんどん集まり、並べられた長机に着席していく。


出席者は年齢が様々な10人くらいである。


みんなが揃ったのを出雲は名簿で確認すると、一番前の席から軽く頭を下げてから喋り出した。


「えーと、めんどくせー・・・じゃなくて、定刻の時間になりましたのでG3地区の対策会議を始めたいと思います。今度のG3地区のプロジェクトを取り仕切る出雲です。よろしくお願いします。」


「知ってる。知ってる有名人!」


いきなり一部の周囲からヤジが飛ぶ。

そのヤジに出雲はハーとため息をつくとヤジを入れてきた人物をギロっと睨みつけた。


「あーそこうるさい。出禁にするぞ宍道(しんじ)!」


出雲から穴道と呼ばれた男は、そのいかついドレッドヘアーを右手でかき上げると、怒られているにも関わらず満面の笑みを出雲に向けた。


「ほーい、出雲代理人。作業責任者、穴道。以後気をつけまーす。」


「マジで黙っとけよ宍道!こっちは資料作ってたからフラストレーション溜まりまくりだからな。」


「ははっ、お疲れさーんです。」


宍道は今度の作戦の作業責任者であり、チームの直接の統率を行うポジションについている。ドレッドヘアーが目立つイカツイ男であるが、出雲から信頼を得ており、見かけとは裏腹に与えられた仕事以上の事ができるやつではある。


ちなみに出雲の現場代理人というポジションは、全ての工程や安全などの管理を行い、請負人に代わって行使する権限を授与された者であり、実は結構偉いポジションなのである。


「えーと今度のG地区のハイブリッド殲滅作戦につきまして、わかっているとは思いますがハイブリッドについて簡単に説明させていただきます。わからないことがあったらその場で質問していただいて結構ですのでよろしくお願いします。」


出席者たちは出雲の方に視線を持って行くとウンウンと頷いてプロジェクターの資料に目を通して行く。


「知ってると思いますが、人が鉄化する現象を引き起こしハイブリッドと呼ばれる生物が20年前うまれました。そしてハイブリッドとなった人は自我を失い人間を襲うようになりました。この鉄化する現象をハイブリッドフェノメノンといいます。」


「ほうほう、それからどうなったの?出雲くん。」


「別に合いの手挟まなくていいぞ宍道。それで政府はすぐに対策に乗り出しましたが、ハイブリッド化する人が多すぎて、街はぐちゃぐちゃに人は散り散りになり、人口も5割は減りました。そんな世界で生き残るために機械壁で隔離した隔離地区と、一切の処理を放棄した閉鎖地区、あと私らの住んでいる解放地区をつくりなんとか生活をできるようにはなりました。」


プロジェクターに現況の様子がわかる地図が映し出されると出雲はポインターをつかいここは解放地区、ここは閉鎖地区、隔離地区とわかりやすく説明していく。


「えーとそれで、ハイブリッドにもいろいろな種類がいまして、鉄とか、鋼とか呼び方が強さや大きさによって分かれています。鉄はノーマルなハイブリッドのことで、鋼はその鉄が何体かくっついたさらに硬い個体です。まあその上のクラスもありますが今回の作戦では関係ないと思いますので、割愛させていただきます。」


長い説明の後、フーとひとつため息をつくと喋り疲れたのか、北条の入れてくれたコーヒーを休憩がてら飲みしはじめる。

徐々にではあるがめんどくさそうな顔をしはじめた出雲は、ポインターの光を宍道の頭に当てると机に片肘をつけた態勢で「あーもうめんどくさい。」とついには言い放った。


「めんどくさいはないと思います。出雲現場代理人。」


「だっていっつもおんなじことはじめに説明してる俺のみにもなれよ、宍道ぃ。毎回おんなじ説明してんだよ。」


「それはそうですけど、基本は肝心ですよ出雲君。」


「それはそうだけど・・・。」


渋々と説明を続けていくことにした出雲だが、ため息の数は増えていき、チラチラと時計を気にしてはだんだんと態度はいい加減になっていく。


「・・・じゃあ続けまーす。今回気をつけて欲しいことは2点、2点だけ‼︎これだけは覚えといて欲しいのが、まず調査報告によるとハイブリッドの数がおよそ50体くらいいること!」


「50体かぁ、結構きついっすね。」


宍道が間髪入れずに言葉を挟む。


「まあ数は多いがそこはなんとかなると思ってる。頑張れ宍道‼︎」


イヤイヤという顔をし手でムリムリと合図する宍道に

出雲は頑張れっと右手の拳を突き出し合図し話を続ける。


「だけど問題はもう一点のほう。『なりかけ』の救出がありそうです。」


出雲がでかい声を出して今回のミッションの1番重要に思える注意点を強調する。

そうすると手前にいた新人の子が手を上げて出雲に質問をしてきた。


「はい、えーと・・・」


「この前入りました。八雲といいます。」


「はい八雲君、質問どうぞ。」


「すみません『なりかけ』って何ですか?」


その言葉に一瞬固まる出雲だったが、スーと息を深く吸い込むと宍道の顔を睨みつけた。

そして、「責任者指導がなっていない」と言い放ち机をバンバンはたく。


それを見た宍道は出雲の顔をみながらニヤニヤすると軽口を叩いた。


「すみませーん。今日代理人の方から説明があると思ってほっときました。出雲くんから説明したほうがいいでしょ。資料もいっぱい用意してくれてるし。」


「あーしますとも説明しますよ。私現場の代理人ですから。えーとねわかりやすくいうとまだハイブリッドに体全体を支配されていない人たちを『なりかけ』といいます。鉄化しかけてるんだけど自我がある状態の事ね。」


出雲が今度はプロジェクターにハイブリッドの基本についてという資料を映し出しみんなに説明していく。


「このように『なりかけ』を救出するのもエレクトリカの使命です。救出の仕方などは現場のツールボックスミューティングの際に詳しく説明します以上!』


そういうと出雲はプロジェクターを片付ける準備を

はじめる。

様子から察するに出雲の限界が来たらしく早く会議を終わりたかったらしい。

たしかに1時間は喋り通していた出雲


宍道達もそのことをわかってか出雲には話しかけず、仲間内で話しながらこんどの作戦のメンバーを割り振りしている。


「最後に質問。今度来るのは出雲君とあとは・・・」


「俺と布志名‼︎」


そういうと会議室を颯爽と出ていく現場好きな出雲であった。

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