生駒楓
「あぁ、これが薫ちゃんの採血データです。基準値よりはだいぶ良いから早期治療頼みます。」
出雲が厳重な防護服を着た男たちに薫のデータを渡す。
データを渡された男はうんと頷くと
「ですね。この値なら充分早期治療可能です。本当いつもながら出雲君の対応はパーフェクトですね。アンプル打ちから循環までしてくれてたんでしょ?毎回いってるんですが医療班にきませんか」
「ありがたい話だけど、俺現場仕事が性に合ってるから」
「ですか残念。ではこちらに患者を」
「かおるちゃーんこっちきてー」
出雲に呼ばれ薫が出雲のそばにかけていく
防護服を着た男達に若干怯えながらも出雲の身体を捕まえたまま顔を出す
「あぁ大丈夫だから。この人達はお医者さんだよ。」
「お医者さん?怖くない?」
「うん大丈夫。すぐに良くなるって。後で俺もお見舞い行くし。」
さっきから出雲が話しているのは出雲とは別会社になるハイブリッド治療のスペシャリスト達である。
なりかけを保護したら必ずこの会社に引き渡すことになっており今回もなりかけを発見した時点で依頼をかけていたのである。
医療班にも話を聞いたが薫の容態から見るに退院は早くになりそうだといっており安心した様子で、またタバコに火をつけ一服する出雲。
「じゃあ、後頼みます。」
「ええ、あとはこちらに任してください。」
救護班と共に立ち去っていく薫に向けて「薫ちゃん、またお見舞いにいくからねー!」と出雲は大きな声を出しながら手を振る
その声に薫も反応し後ろを向いて手を振ってから救護班に連れられゲートへと向かっていった。
「さあて、もう一服したら宍道と合流して、本日は片付けして帰りますか」
「あっ出雲、お前はいろいろ報告書もあるだろうし、現場片付けはあと俺がやっとくから事務所にもどっていいぞ。バイブロもセンターに持ってきたいんだろう」
「マジですか。さすが布志名全て分かってんな。愛してる。ではお言葉に甘えて報告書作ったら機材センターいかしてもらうわ」
そういうと出雲は事務所に戻る準備をはじめる。傷のついたバイブロを脱着し、工具袋の中に入れたり、道具がなくなっていないか確認をしたのち、G3地区を後にし歩いて30分でゲートまでたどり着いた。
ゲートのカードスキャンに自分のカードを読み込ませる出雲
『ゲートのロックを解除しました。忘れ物等はございませんか?』
「ないでーす」と
自動アナウンスに意味もなく答えゲート解除のボタンを押し退出した
隔離地区を出た瞬間出雲の携帯に着信が入る
画面も見ずに通話ボタンを押し応答する
「はい、出雲です」
「横見て、よーこ。」
そう言われて横を見る出雲視線の先にはセミロングの髪を後ろで縛り、サングラスをかけ、作業着にインナーはタンクトップ下はダボダボのパンツにブーツ
ただ顔は可愛いというより美しいといった表現が似合う20代半ばの女性が車の横にたって出雲に手を振っていた。
女は携帯の通話を切ると出雲に近寄って喋りかけてくる。
「さっき布志名くんに連絡したら出雲くんは今から事務所に帰るっていうからゲートで待ち伏せしてたよ。私何回か出雲くんに電話かけてるんだけど繋がらないし」
「そうだった熊さんが武器がどうのこうのいってたけど、もしかして新武器できたの?」
「ちょうどさっきね仕上がりましたよ。早く実験したいから。まあ車乗ってよ。」
車の助手席をガチャっと開け乗って乗って合図する
「報告書先にやらないといけないけど・・・いいか。生駒ちゃんに頼み事もあるし出雲いきまーす。」
生駒楓は対ハイブリッド武器の製作者の1人である。
武器に関してはこの人と言われるぐらい若いが有名な武器職人である。出雲の代名詞バイブロ二式などは
この子が考えた武器の一つである
「まあとりあえず立ち話もなんだから車に乗ってよ。」
そう言われてなかば強引に車の助手席に乗り込むことになった出雲
生駒は出雲が乗り込むと今時珍しいスポーツカーのエンジンをかけ車を走らせる。
助手席の窓から外の風景を見ていた出雲だったが、くるりと生駒の方を向き喋り出す
「新武器ってどんなの?凄く気になるんですけど」
「出雲くんが好きそうな武器ができましたよ。ふっふっふ。あとはアレがついにお披露目を」
「おぅ、まさか頼んでたアレですか」
「そう、アレです。」
ハンドルを握りながら上機嫌で語る生駒その生駒の表情を察し機材センターまでの道を助手席でワクワク
する出雲であった。