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エレクトリカ  作者: ハリマトモアキ
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レネゲイズ

出雲がハイブリッドを倒し、地下を探索している時だった。


突如オペの熊本から通信が入る。


「出雲くん、聞こえるかい?なりかけの反応が出たよ!」


地下に遠隔ビットを飛ばし、なりかけの少女を探索していた出雲はその言葉にいち早く反応した。


「熊さん!位置は?!」


「後方右側に500。建物で見えないと思うけど、その位置にいるよ。」


それを聞いた出雲はビットへのリンクを急いできると

言われた方向にすぐさま走りだした。


「はぁ、はぁ、クッソ装備が重すぎる。」


そう呟き右手につけていたダウンザホールハンマーを取り外すと地面に投げ捨て、少し身軽になった身体でさらに全力疾走する。


(俺は敵を倒すよりも、人を助けたくてエレクトリカになったんだろうが。あの人みたいになりたくて、こんぐらいで疲れてんじゃねーぞ、俺!!)


自分に強くそう言い聞かせ懸命に走る。


しばらくすると前方にもぞもぞと動く物体が出雲に見えてきた。挙動不審なその影は何かに怯えるようにキョロキョロと辺りを見渡しては、瓦礫の中に隠れを繰り返していた。


「見つけた!」


出雲はそれを、なりかけと判断し岩陰に身を隠すと様子を探る。


慎重に、逃げ出させないよう。


ゆっくりと距離を詰めていく。


「なりかけは視認できたみたいだね。」


「はぁはぁ・・・視認できました。あとはロストしないようになんとかして捕まえます。熊さん!念のため布志名に急いでこっちにくるように再度伝えてもらえますか。」


「了解。布志名君には早急にって、再度俺から伝えとく。」


「お願いします。」


なりかけを視認した出雲は慎重にビルの影や瓦礫に隠れながら捕まえるタイミングを伺っていた。


「頼むから逃げるなよ。」


捕まえるまでにはまだ距離が足りない出雲は少女が動きを止めるチャンスを伺う。


ゆっくりと歩みを進めていく出雲だったが、その際足元の注意を怠り瓦礫が崩れ周囲に音を鳴らしてしまう痛恨のミスをしてしまった。


「ダレ?」


「やべっ。」


なりかけの少女もその音で人の気配に気づき、警戒するように地下へと逃げ込もうとする。

たまらず出雲は大声をあげ、少女を呼び止める。


「言葉がわかるんならまってくれ。俺は君を助けたいんだ。」


その言葉を聞いたなりかけの少女は一度立ち止まりこちらを振り向いた。


宍道から聞いた通りの見た感じ10代半ばの少女は、髪も衣類も身体もボロボロで体のあちこちがまだらに鉄になっていた。


少女は距離を取ったまま出雲と見つめ合うと、出雲に喋り出す。


「嘘つき、あたしもミンナみたいにコロス気でしょう。みんな、ミンナ死んじゃった。」


そういうと地下に入って逃げていくなりかけの少女。


「待ってくれって!」


出雲も少女を追うように地下に飛び込む。

逃げる少女を見失わないよう、薄暗く視界も悪い地下で急ぐ出雲だったが、少女に気を取られ過ぎたのか足元の瓦礫が崩れバランスを崩すと、前のめりに倒れ込んでしまった。


助けたいと言う出雲の気持ちも届かず、なりかけの少女はどんどん奥へと逃げていく。


このままではいけないと思った出雲は、なりかけの少女に転んだままの状態で精一杯の大声で叫んだ。


「俺は『レネゲイズ』みたいに君を殺したりはしない!俺はエレクトリカだ!俺は君を助けたいだけなんだ!ちくしょー聞いてくれよ話を!」


なんの応答もないその声に、出雲は地面を右手で殴ると行き場のない自分への怒りに顔を歪ませ立ち上がった。


「ここで諦めるかよ!」


そう言い放つと出雲は再び足場の悪い地下を走り出す。


「俺は君を直してやれるから!頼むから答えてくれ!」


出雲が叫んだその時だった。


奥の方から少女のきゃーという悲鳴が聞こえる。

地下道に響き渡るその声は少女の身に何かが起きたことを明確に知らす。


あわててその声の方向に走り出す出雲が次に捉えたのは少女とその少女の首を右手で掴み上げた女の姿だった。


金髪の派手なトゲトゲした髪に、顔をマスクで隠しているが派手な化粧、そして全身をパンクな黒い衣装で着飾った女。

ギラギラとした野生の獣のような鋭い目つきは、明確に殺意を伝えると、なりかけの少女の首をもって宙に浮かした。


「はっはー、ようやく見つけたぜ。腐れハイブリッドまがい、手間取らせやがって。」


そういうと女はその少女の首を圧し折ろうと力を右手に入れようとする。


「やらすかよ!」


その刹那、出雲が両端のコードがつながったドライバーを女に向かって投げつける。

一直線に女に向かうドライバーだったが、女は後ろを向いたままの姿勢でそれに気づくと、左手に持っていた日傘のようなものでドライバーをなぎ払う。

バチバチと閃光したドライバーは地面へと転がると光を失った。


「あぁん、誰だテメェ?あたしの邪魔すんじゃねーよ。クソが!」


女がなりかけの少女を地面に乱暴におろすと、半身の状態で首だけ出雲の方へ振り向く。

闇の中でもギラギラとしたその瞳は、見るものを恐怖におとしいれるよう殺意を撒き散らすと不気味に女は微笑む。


「あぁん、てめぇ、もしかして腐れエレクトリカか?

カカッ、ちょうどいいや、2人まとめてあの世に送ってやんよ!!」


女は日傘のようなものの先端を出雲の方に向け身構えると、再度不気味に微笑んだ。


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