第46話『未来ノ形』
Another View ???
――未来――。
それは誰もが一度は描いたことのあるだろう自分の成長の物語。幾つもの分岐点を越えてようやく辿り着く事の出来る理想の夢。
でも、夢に描いた未来は必ずしも迎えられるものではない。望んだ未来に辿り着けず別の未来を歩む可能性だってあるし、虚しくも呆気なく壊れてしまうことだってある。
誰もが望んだ未来を未来を手に入れることは不可能。
本当にそれを叶えることが出来るのはほんのひと握りの人間だけ。現実なんてそんなものだ。
所詮、私たちは神様に与えられた運命の道を歩んでいくだけ。分岐点があるように見えても、その結果は結局のところ定まっている。
どんなに努力を積み重ねても変えられない現実に挫けそうになるこの世の中で私たちは生きている。そういう運命なのだから当然だ。
勉強や運動の不出来、社会性や親和性。そんなので人は判断されていく。可能性が無ければ即座に切り捨てられる残酷な世界。歪んだこの世界の現実。
人はいつそんな不条理を突き付けられるのか分からないまま生きていくことしかできない。
それでも諦めるわけにはいかなかった。
大好きなみんなの為にも、絶対に。
あの現実を変えるためならば、私は全てを擲ってもいい覚悟で今を生きている。
瞳を閉じれば浮かんでくるたくさんの思い出。
私が諦めてしまえば、その思い出全てが消え去ってしまうことになる。みんなとの絆が消える事だけは絶対に回避しなければならなかった。
歯車の一つ壊れただけで動かなくなってしまう時計のように、誰か一人でも欠けてしまえば私たちは私たちでいられなくなってしまう。
そんなのは絶対に嫌だ。
みんなは私の全て。何よりも誰よりも大切な人たちなんだから。この身がどれだけ傷ついたって構わない。またみんなで笑い合える未来を迎えることが私の夢。私の未来。変えられない現実だって変えてみせる。私のやっていることは決して無駄じゃない。
希望を捨ててはいけない。
もし希望を手放してしまったら、本当に未来が途絶えてしまう。神様の与えた運命であろうと私は諦めずに乗り越えてみせる。私にはそれしか出来ない。
でもね、やっぱりめげそうになる時はある。
私だってただの人間。永遠に生きる神様にはなれっこない。そんな時はやっぱり君の温もりが欲しくなる。
大好きな君に抱きしめて欲しい。
大好きな君にキスをして貰いたい。
大好きな君に私のすべてを捧げたい。
一度意識してしまうと溢れ出した想いが止まらなくなってしまう。
幾度も繰り返してきた恋。
私の想いはあの始まりの日から何一つ変わっていたいけれど、君の想いはいつもリセットされるんだよね。分かっている事だけど、胸を鷲掴みにされるように心が痛くて辛いよ。
君が選んでくれたのは私じゃなかったの? 全てがリセットされる度に君の心は変わってしまう。でもそれはある意味では大きな発見だった。
同じ未来を辿ることしか出来ないのであれば毎回私と君が結ばれる未来になるはず。
でも違った。この夢が繰り返される度に君は違う女の子に恋をして毎回違う運命を辿ることになる。
私じゃない他の子に恋をして、育んで、結ばれるのを見ていくのは辛いけれど、希望があることだけは間違いなかった。
無限にある未来のうち、たった一つの未来を得ることが出来るのであれば、私はこの恋を諦めたって構わないと思っている。
それは心をナイフで抉るような辛い決断だけど、あなたが生きてくれるのならばそれでいい。死んでしまったら何もかもが終わりなのだから。
私の目的はただ一つ。
誰も死なない幸せな結末を手に入れること。
だから私は何度だってこの夢を繰り返す。それが永遠に近い時間であろうとも、私の大好きな人たちが生きる未来を手に入れるためならば耐えられる。
みんなの笑顔のために――。
みんなの未来のために――。
そして――大好きな君のために――。
夢を繰り返した数だけ私はあなたに恋をした。
でも私の恋は叶う時よりも叶わない時の方が圧倒的に多かった。
世界が繰り返す度に事象は変化していく。変わらないのは私の想いだけ。他のものは何もかもリセットされてしまう。
ボタン一つでデータを消すことができるゲームのようにこの世界は単純で、手のひらに乗ったらすぐに溶けて消えてしまう雪のように儚いものなのだ。
私の使命は守ること。
かけがえのない大切なものをこの手で守り通す。
誰にも言えない一人ぼっちの夢物語。それでも私は絶対に諦めない。救いの手が伸びなくても、たくさんの思いを背負っても、これまで私は一人でやってこれた。これからもそれを繰り返していくだけなんだ。
孤独は正直に言うと辛いけれど、この夢の代償だと思えばいくらでも耐えられる。
初めのうちは夢を繰り返す度に泣いていた。そりゃそうだよ。大切な人たちが死んでしまうのはナイフで抉られたように心が痛いんだもの。
でも、何十回、何百回も繰り返すうちに涙なんて流れなくなってしまった。慣れてしまったのだ。誰かが死ぬことに慣れてしまった。
それはとても恐ろしいこと。
悲しいとは思うけれど、また繰り返せばいいと考えてしまう。そんな自分が嫌になる。私が行っていることは命の冒涜なのかもしれない。本来一つしか無い命を望むがままに蘇らせているのだから当然だ。
でも私はやめるわけにはいかない。今やめたら何のためにこれまで頑張ってきたのか分からない。
冒涜であろうとなんであろうと、誰に何を言われようともやめるつもりはない。必ず幸せな結末に辿り着いてみせる。
この世界が誰のための世界なのか大体の想像はついている。少なくとも私と葵雪ちゃんの世界ではない。自分の世界ならすぐに分かるし、葵雪ちゃんの世界なら今頃厄介なことが起きているはずだから。
おそらくここは椛ちゃんの世界。基本的な判断材料は修平くんが引っ越してくる日に誰と一緒にいるかということ。もちろんこれで確定するわけではない。今までに何度かそうならなかった時があった。
「けど、今回に限っては……多分間違いない」
今日の二人を見て何となく確信があった。
ゲームとかで例えるなら好感度上昇中ってところかな。修平くんと椛ちゃんがくっ付くのは時間の問題。きっとすぐに二人は恋人同士になる。
「はぁ……泣きたいな」
本来なら君は私の恋人のはずなのに。
大好きだよ、修平くん。だからこそ、他の女の子と仲良くしているのは辛いよ。
涙が溢れそうになる。
泣いてはいけない――そう強く意識することでようやく涙が引いてくれた。
初めのうちもやっぱり泣いていたけれど、慣れって怖いね。意識さえすれば簡単に堪えることが出来てしまうんだもん。
私は強くなれたのかな?
もしそうだとしても、こんな強さは要らない。泣くのを我慢するだけの力なんて何の役にも立たない。
「……前に進もう。そして――」
後ろ向きなことを考えたら未来も悪い方へ進んでしまうような気がした。
私は前に進まなければならない。どんなものを対価にしてでも叶えなければならない夢があるのだから。だからこそ耐えるって心に決めた。
もし仮にみんなの生きる夢が私と結ばれない夢だったとしてもそれでいい。生きてさえいてくれるのであれば私はそれで幸せなのだから。
「――永遠の夢を……終わらせよう」
to be continued
心音です。こんばんは。
Another Viewはあえて???にしてありますがきっと皆さんは誰のことだかもう分かっているかと思います。次回の追憶ではとあるヒロインについて触れることになるでしょう。
それでは次のお話でまたお会いしましょう。




