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Life -刻の吹く丘にて-  作者: 心音
Prologue
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プロローグ『夢に見た場所』

注意事項


この物語に登場するキャラクターは全員18歳以上です。


また、物語上に登場する人物、地名、団体名は全て架空のものであり、現実のものとは一切関係がありません。


作中には微流血シーン、微グロ表現があります。苦手な方はご注意ください。


以上のことをご理解頂いた上で、永遠の恋の物語をお楽しみくださいませ。

挿絵(By みてみん)


 ――風車が回っていた。


 風もないのに、くるくる。くるくると。

 そこに何かを感じ取って、その風車たちは回っていた。

 それも一つや二つじゃない。数十、数百といった数の風車が回っている。


 不思議な光景だと思った。

 だって風車って言ったら、風があってこそ回るものだろ? それが無風の状態で、しかもこんなにたくさん回っているなんて自然の原理では説明が出来ない。


 というより……ここは何処だろう?

 何度も見た事のあるはずの場所なのに、何度も歩いたことのある場所なのに――どうしてか思い出すことができない。


 歩いていれば何か思い出すことが出来るはず。そう考えた俺は一歩踏み出そうとした。


「……?」


 だが、足は俺の意思を無視して、そのままそこに立ち続けた。

 まるで動いてはいけないと言われているようで、少し意地になって進もうとしたが結果は変わらなかった。


 とりあえず動くことは諦めた。何か別の策を練ることにしようと思う。

 足は動かないから手のポーズだけロダンの考える人の彫像を真似て見ると、ほんの少しだけ賢くなれた気がする。


「……ん?」


 ふと、視界の端に何かが映った。

 自然とそちらの方へ顔が向く。そこには一人の少女がいた。


「……」


 名前も顔も知らない少女。なのにどうしてだろう? こんなにも懐かしく思えてしまうのは。こんなにも……胸が張り裂けそうな思いになるのは……。






『――お願い。思い出して』






 少女は俺に気づいていないようだった。

 いや、こんな見晴らしの良い場所で気づかないのはおかしい。もしかしたら少女には俺の姿が見えていないのではないだろうか。


 この場所はどうも現実味が無い。

 ここは夢の中だ。そう言われればそれだけで納得してしまいそうだった。

 もし夢だとすれば、少女が俺に気づかないのは無理もない。


 夢は不思議なものだ。自分が観客の時もあれば、主役となって色々と行動を起こしている場合もある。今は前者だろう。

 ならばと、俺は少女のことを観察してみることにした。


 腰のあたりまで伸びた長い黒髪。少女を形成する顔は小顔で、綺麗というよりは可愛いという言葉が似合う。桃色の小さな唇はリップでも塗っているのかぷるんと潤っていた。

 けれど、何よりも目がいったのは少女の瞳だった。深い海のような蒼い瞳。見ていると吸い込まれそうになる魅力があった。


 見れば見るほど何処かで会ったことがあるという気持ちが強くなっていた。

 けれど、俺はこの少女のことなど知らない。一度見たら忘れることの無さそうな外見だ。記憶が抜け落ちているという可能性は無い。






『――思い出して。あなたの存在を』






 少女は足を止める。その足元に一つ、回っていない風車があった。

 風車を手に取り、大事そうに胸に抱える。


「……ごめんね」


 少女は泣いていた。

 震える手に幾つもの涙が零れ落ちる。


「……次は絶対に……約束、守るからね」


 約束……。その言葉が俺の胸を締め付ける。

 何か……俺は忘れてはいけないことを忘れてしまっているのではないかと、そんな不安が頭をよぎる。


 その瞬間だった。一際大きな風が吹き、あれだけ回っていたはずの風車の動きがピタリと止まった。あまりにも不思議な光景に言葉を失う。でもそれ以上に、少女の手元の風車が回り始めたことに驚きを隠せなかった。






『大丈夫。あなたはまだ――』






 視界が白い光で覆われていく。あまりにも眩しくて目を開けていることができない。同時に体が浮遊感に包まれ、自分が今どんな体勢になっているのかすら分からなくなった。

 ただ俺は呑気なもので、ああ、夢から醒めるのか。起きたら妹の小夏にこの不思議な夢のことを話してみよう程度のことしか考えていなかった。


「……」


 それにしても。と、薄れていく意識の中で小さな疑問が浮かび上がってくる。


 どうして俺は夢なんて見ているのだろう――と。


 眠った記憶などない。

 もし眠っているのだとしても眠る以前の記憶が無い(・・・・・・・・・・)のは幾ら何でもおかしい。


 眠る直前まで俺は何をしていた?

 ……ああ、駄目だ。思い出せない。どうしてだ? どうして思い出せない? 頭に靄が掛かったように記憶がはっきりしない。


 消えてしまいそうなほど意識が薄れていく。これ以上考えることはできない。そう思った時、頭の中で懐かしい(・・・・)声が響いた。






『――あなたはまだ、此処にいるから』






to be continued


心音です。こんばんは。

まだ序盤中の序盤ということもあって内容がよく分からないかもしれませんがこれから先面白く進めていきたいと思っていますのでよろしくお願いします。

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