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四情狩林  作者: 戌尾 昴
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それぞれの苦しみと意い~第四章~

全員が病院に集合した! そして意外な人物が病院に駆け付ける! 日太の命は助かるのか!? 日太を轢いた犯人は一体誰なのか!?

  四情狩林~それぞれの苦しみと意い~


 ~第四章~

 辰岐摩病院――

(山海)「二人とも!」

 山海達は何とか病院に着いて丹波と淡堕に合流した。

(淡堕)「界男、完素、山海」

 淡堕は三人と話をした。

(山海)「淡堕、日太は?」

(淡堕)「今、緊急手術でまだ終わってない」

 日太はまだ緊急手術の最中だった。

手術室――

(担当医)「どうだ?」

 手術担当医師が看護婦に言った。

(看護婦)「駄目です! 輸血に余裕は在りますが内臓の損傷が激しくて助かる見込みは…」

 助手の看護婦は諦めかけていた。

(担当医)「…あの人を呼ぼう…」

(看護婦)「あの人?」

 担当医師は誰かを呼ぼうとしていた。

(担当医)「少しの間だが手術室から出るがこの男の延命処置を怠らずにしろ! 直ぐに戻ってくる!」

(看護婦)「はい!」

 担当医師は手術室から一旦出た。すると、丹波は手術室から出て来た医師に訊いた。

(丹波)「日太は!?」

(担当医)「内臓の損傷が激し過ぎて私には治すのは不可能です。…ですが、ある人物を呼びます。その人なら内臓を治すのに十分も掛かりません。心配しないでください!」

 医師は丹波に言うと何処かへ向かった。

(丹波)「お願いします!」

 丹波は医師に頭を下げて頼んだ。

 一方、山海達は――

(山海)「淡堕…何があったかを説明してくれ!」

 山海は淡堕に訊いた。

(淡堕)「俺達三人は廃墟から出て帰路の発って少し経つと俺と丹波は何故か日太の後ろにいて日太だけが目の前で大量に血を流していて俺は直ぐに救急車を呼んだ」

 淡堕は三人に出来事を説明した。

(山海)「急に日太が目の前で倒れていた?」

 山海は疑問を感じた。

(刻苦怒)『我が説明しよう』

 何処からか声が聴こえたと思ったら淡堕の中から刻苦怒が現れた。

(山海)「刻苦怒か! どうして淡堕の中に?」

 山海は刻苦怒に訊いた。

(刻苦怒)『それは、あの時に何が起きたのかを教えなきゃならない』

 刻苦怒は山海達に日太が車に轢かれた時の話をした。

 時間は遡り――

(刻苦怒)『日太! 後ろ!』

 日太は刻苦怒に言われて後ろを振り向くと車が猛スピードで日太達に突っ込んでいた。

(日太)「!」

 日太は直ぐに時間を止めた。すると、丹波と淡堕の二人を車の後ろに運び、日太自身は車の前に出た。

(刻苦怒)『日太、何してんだ! お前も逃げろ!』

 刻苦怒は日太に逃げる事を伝えた。

(日太)「駄目だ!」

 日太は刻苦怒の忠告を無視した。

(刻苦怒)『どうして!?』

 刻苦怒は日太に訊いた。

(日太)「あの車は俺を狙ってる!」

(刻苦怒)『だったら尚更だ!』

(日太)「だからこしだ! 俺が轢かれなきゃ第二・第三の事件が起きるかもしれない!それを阻止するには本命の俺がわざと車に轢かれないといけない」

(刻苦怒)『それで、お前が死んだら…』

(日太)「大丈夫だ! 刻苦怒、お前は淡堕の中に隠れてろ! 俺が轢かれたら救急車が来るまでの間は俺の体の時間を止めろ! そうすれば、俺の生存率も高くなる筈だ!」

(刻苦怒)『どうして、淡堕だ?』

(日太)「丹波は馬鹿というか仲間思いだから上手く説明できないし、恐らく緊急手術の時に手術室前に居ると思うから丹波だと界男達が来た時に丹波だと説明が出来なくなるが淡堕ならこの事を冷静に話せる筈だ! …分かったら急げ!」

(刻苦怒)『…分かった』

 日太の説明で刻苦怒は淡堕の中に入ると時間は動き出した。

 そして、現在に戻る――

(山海)「…じゃあ、日太は二人を守り自分も助かる方法まで考えて日太は敢えて車に轢かれた訳か!?」

 山海は刻苦怒に訊いた。

(刻苦怒)『そうだ』

 その時、病院の出入り口から誰か入って来た。

(希癒)「ねぇ、林寸君が車に轢かれたって聞いたけど本当?」

 山海達に訊いて来たのは大網だった。

(山海)「大網か! どうして?」

 山海は大網に此処に来た理由を訊いた。

(希癒)「ちょっとした経緯で林寸君の家に泊まっていたのだけど、さっき、林寸君の家に林寸君が辰岐摩病院に運ばれたって連絡があったの!」

(山海)「連絡って俺達はしてないぞ」

(希癒)「いや、連絡したのは…」

(看護婦)「私よ」

 山海達の元にまた女性が来た。

(看護婦)「五年振りね、希癒ちゃん」

(未代)「久しぶり、未代ちゃん」

(淡堕)「未代ってあの息澤 未代か!」

(未代)「そうよ」

 皆の前に現れたのは小学生時代の同級生だった息澤 未代【おきさわ みよ】だった。

(未代)「伝えておくけど今も日太君の状態は最悪よ」

(山海)「最悪って」

 山海は息澤に日太の現状を訊いた。

(未代)「日太君の内臓が全て…と言っても致命傷となる部分以外だけど損傷が激し過ぎて担当医師も自分では無理と匙を投げ出した。だけど、担当医師がある人物をこっちに呼んでいる所よ。日太君は現在も輸血で命を保っているけど当然に限界はあるけど」

(山海)「医師も断念って、そんなに酷いのか?」

(未代)「ええ、普通の医師なら不可能な程に損傷と言うよりは縫う事が出来ないほど傷が開いていて助かるのは1%以下って所かしら」

 息澤が言うには日太の状態は生存率1%以下という事らしい。

(界男)「1%以下」

 皆は非常に気まずい状況になっていた。

 病院の裏口から謎の人物が現れた。

(担当医)「済みません急に呼び出して」

(男性)「いや、大丈夫だ! 俺達は暇な部署だから特に今回の様な事は稀だからね」

 謎の人物は手術室に入って行った。

(男性)「この子か」

(担当医)「はい」

(男性)「任せて下さい」

 謎の人物は日太の内臓を見た。

(男性)「ふむ…ふむ…成程ね」

 そうすると謎の人物は日太の肩に手を置くと日太の内臓が《見る見る》と修復されていった。

(看護婦)「どう言う事?」

 手術室にいる看護婦達は内臓が修復されていくのに驚いていた。

(男性)「はい、終了」

 謎の人物は日太の内臓を五分以内で全て修復させた。

(担当医)「有難うございます!」

 医師は謎の人物に礼をした。

(男性)「よして下さい。この手術は貴方が成功させた事となり俺は此処に居なかった…と言う筋書きなので堂々としていて下さい」

(担当医)「はい!」

 どうやら謎の人物は医師が救いたいが今の実力では救えない者を助けたりする人物らしい。

(男性)「…では、彼の仲間達にお伝えて下さい…それと、患者は一ヵ月間絶対に安静にさせる事を忘れずに」

(担当医)「分かりました」

(男性)「もしも、無理をすれば体が更にボロボロになる可能性があります。気を付けてください」

(担当医)「はい!」

 謎の人物は手術室から出た。すると、丹波と目が合った。

(男性)「君は?」

(丹波)「水楽 丹波です」

(男性)「そうか、君が…」

(丹波)「?」

(男性)「そうだ、友達は助かったけど一ヵ月は絶対に安静にしといた方が彼の為だ。彼から目を離さない様に他の皆に伝えといて下さい」

(丹波)「わ、分かりました」

 丹波は謎の人物の言葉を聞いた。

(男性)「じゃあね」

(丹波)「は、はい」

 謎の人物は丹波と別れた。

(丹波)(良い人みたいだけど何者なんだ? ……って、何で俺以外に日太を心配している者が病院内に居る事が分かったんだ?)

 丹波は謎の人物の言葉に疑問が生じた。

 謎の人物は病院を出た。すると、謎の人物の背後から声がした。

(謎の声)『良いのか、例の話をしなくて』

(男性)「良いの、良いの、例の件は彼らにも極秘事項だから今は僕達、【特殊制裁班】とごく一部の人間のみだから他の人間には絶対に情報を教えてはならないからね…それはこの情報が伝えられた時に知っているでしょ…ブエル」

(ブエル)『そうだった、忘れていたよ…匠』

 どうやら、謎の人物も何か訳ありの人物で日太達の何かの情報を知っている様子。

 病院側では――

(山海)「そうか、助かったか!」

 丹波は淡堕達皆に伝えた。

(丹波)「でも、一ヵ月は絶対に安静って言われた」

(山海)「一ヵ月!」

 丹波の言葉に全員が驚いた。

(希癒)「一ヵ月って…同窓会が来週に控えてのよ!」

(丹波)「同窓会?」

 大網の言葉に丹波達五人は疑問が生じた。

(淡堕)「同窓会って?」

 淡堕は大網に訊いた。

(希癒)「私、今は林寸君の家に泊らせてもらっている理由は同窓会が来週にやるって書いてあって私は同窓会が楽しみで昨日、調布に帰ってきたら偶然に林寸君と遇って林寸君が私を家に上げると言ってくれて私は当然断ったけど林寸君は私がというか女性が一人で外に居る事がどんな危険があるか言ったから私は林寸君の誘いを受けたの…って、皆には同窓会の招待状は届いて無いの?」

 大網は日太の家に泊っている理由と同窓会について言った。

(山海)「いや、ここ最近忙しかったから郵便配達が持って来た手紙とか見てなかった」

 山海達五人は一族の事を調べていた事で配達された手紙を確認する事をすっかり忘れていた。

(未代)「それは泣き虫君が出したのよ」

 同窓会の招待状を出したのは泣き虫君という人物だった。

(山海)「泣き虫が?」

(未代)「卒業アルバムに書いて無かったかしら?」

 息澤は卒業アルバムに書いた事を泣き虫君が実現させたらしい。

(山海)「…それにしても日太の事件について捜査は進んでいるのだろうか?」

 山海は警察の捜査が進んでいるのか気になったらしい。

(完素)「それに関してだけど、俺の知り合いに警察官が居るから訊いてみたけど…捜査は何故か打ち切りになったらしい」

(山海)「打ち切り!?」

 完素は捜査が打ち切りになった事を皆に伝えた。

(淡堕)「打ち切りって日太がこんな目にあって何で打ち切りだよ…くそっ!」

 淡堕は近くのゴミ箱を蹴り飛ばした。

(山海)「少し落ちつけもう夜中だぞ!」

(淡堕)「…済まない」

 山海は淡堕の怒りを落ち着かせた。

(山海)(…もしかすると、犯人が分かっていながら今は手が出せないのでは…だとしたら)

 山海は何か警察の捜査打ち切りの理由にある推測をした。

(山海)「済まないが一寸トイレに行ってくる」

(淡堕)「ああ」

 山海はトイレに向った。その途中で念波を使って刻苦怒を呼び出した。

(山海)(刻苦怒…一寸来てくれないか?)

(刻苦怒)(…分かった)

 刻苦怒は淡堕達の時間を止めて淡堕の肉体を出て気付かれない所で淡堕達の時間を動かして刻苦怒は急いで山海の元へ向った。

(刻苦怒)(トイレじゃ無かったのか?)

 山海達が居るのはトイレでは無く病院の裏口だった。

(山海)「その事は良い! 一つ訊くが車に轢かれる前に日太の表情って覚えているか?」

 山海は刻苦怒に事件直後の日太の表情を訊いた。

(刻苦怒)『確か…目には涙が出そうな感じで口は怒りの時の口だったな』

(山海)「涙が出そうな目で…怒りの様な口…! そう言う事か!」

 山海は刻苦怒の話で何か分かった模様。

(山海)「…日太の予測道理だな」

 山海は小声で笑いながら言った。

(刻苦怒)『?』

 刻苦怒は山海の言った事が気になった。

(山海)「取り敢えず、皆の所に戻ろう!」

(刻苦怒)『…ああ』

 山海は刻苦怒に皆が居る所に戻ろうと言った。

(山海)「…そうだ! 刻苦怒…お前は俺の中に一時的にいろ! 後で俺が日太の病室に行ったらこっそりと日太の体内に戻れ!」

(刻苦怒)『…そうだな』

 刻苦怒は山海の提案に乗った。

 山海達は皆の所に戻ると大網と息澤の姿がなかった。

(山海)「大網と息澤は何所に行った?」

 山海は二人が何所に行ったか訊いた。

(淡堕)「息澤は看護婦だから仕事に戻った。大網は日太の家に戻った」

 淡堕は二人が何所に行ったのか答えた。

(山海)「息澤は仕方ないとして、大網はどうして、日太の家に戻った?」

 山海は大網が何故、日太の家に戻ったか訊いた。

(淡堕)「日太の両親に伝える為に一度、日太の家に戻るって言っていたけど」

 淡堕は大網が日太の家に戻った理由を聴いた。

(山海)「まずいな…大網の携帯番号は知ってるか?」

 山海は大網の携帯番号を知っている者はいないか訊いた。

(界男)「俺達は知らないけど息澤なら知っているかも?」

 界男は此処に居る皆は知らないが息澤なら知っている可能性があるかも知れないと言った。

(山海)「そうか!」

 山海は急いで息澤を探しに病院の中を走りだした。山海はナースステーションで息澤が今、何をしているのか訊いた。

(山海)「すいません、此処で働いている息澤という看護婦は今、何をしていますか?」

(看護婦)「えーと、今は三階の巡回をしています」

(山海)「そうですか…有難うございます」

 息澤が三階の巡回中だと聴き山海は急いで三階に向う為に階段を上っていた。すると、二階のナースステーションに戻る途中の息澤と遭遇した。

(山海)「息澤!」

(未代)「何よ?」

(山海)「息澤は大網の携帯番号は知っているか?」

 山海は息澤に大網の携帯番号を知っているか訊いた。

(未代)「もちろん、知ってるけど…如何したの?」

(山海)「急いで大網に携帯を掛けてくれないか!?」

(未代)「…分かった」

 息澤は渋々承諾した。二人は急いでロッカールームに行って息澤は自分のロッカーから携帯を取り出して大網に電話を掛けた。

(未代)「…もしもし! 希癒ちゃん? 鮫熊君から希癒ちゃんに伝えたい事があるみたい」

 そう言うと息澤は山海に携帯を渡した。

(山海)「もしもし! 日太の両親にこの事を伝えるのは絶対に駄目だ!」

 山海は大網に日太の両親にはこの事を伝えない様に言った。

(希癒)「…分かってるけど…って言うかね、私は日太が助かった事は伝えずに車に轢かれた事だけを伝えに戻るだけだけど」

(山海)「…そうだったの?」

 大網は日太の両親に車で轢かれた事だけを伝えるだけと言って山海は安心した。

(希癒)「それより…一つ気になった事があるの」

(山海)「何だよ?」

(希癒)「実はね、林寸君が家を出た後カーテンを閉めようと外を見たら泣き虫君が居たの」

(山海)「泣き虫君ってあいつが偶然近くを通っただけだと思うけど…」

(希癒)「それがね…林寸君を見ながら誰かと電話をしていたのが見えたから鮫熊君の様に偶然通った訳じゃないと思うけど…」

(山海)「そうか、取りあえずその件は俺が調べるから大網は日太の両親にちゃんと上手く説明しといてくれ」

(希癒)「命令口調は大嫌いだから」

 そう言うと大網から電話を切った。

(山海)「ありがとな」

 山海は息澤に携帯電話を返して感謝した。

(未代)「良いわよ …如何して林寸君の両親には助かった事は伝えてはならないの?」

(山海)「…一寸な 其れよりも日太の病室は何処だ?」

 山海は日太の病室を訊いた。

(未代)「3階の306号室よ」

(山海)「ありがとな」

 山海は息澤にお礼をして日太の病室に向う為に再度、階段を上った。三階に着くと急いで306号室に向った。山海は306号室に着くと306号室の扉を開けた。

(山海)「日太の奴、まだ、眠って居やがる」

 日太は未だに眠っていた。

(山海)「取り敢えず、刻苦怒、お前は日太の体内に戻れ!」

(刻苦怒)『済まないな』

 刻苦怒は山海に礼をすると、山海の体内から出て、日太の体内に戻ろうとした。

(刻苦怒)『…! これって!』

 刻苦怒は日太の体内に戻ろうとすると刻苦怒は何かに気付いた。

(山海)「如何した?」

(刻苦怒)『…日太の肉体に魂が見えない』

(山海)「どう言う事だ?」

(刻苦怒)『正確に言うと日太の魂が肉体とくっ付いている糸はまだあるが日太自身の魂が日太の肉体にはない!』

 刻苦怒が言うには日太の魂は現在日太の肉体に存在しないという事らしい。

(山海)「それでも、お前が入っても大丈夫だろ?」

(刻苦怒)『いや、我が入れば、日太の魂と肉体を繋いでいる糸が切れて一生日太は肉体に戻れなくなる』

(山海)「そんな!」

 今、刻苦怒が入れば日太の魂は永久に自分の肉体には戻れないらしい。

(山海)「どうしたら」

 山海は困惑していた。

(刻苦怒)『取り敢えず、日太の魂が戻ってくるまで待つしかないな』

(山海)「そうだな」

 山海達は日太の魂が戻ってくるまで一階で待つ事にした。

 一方日太は――

(日太)「此処は?」

 日太は暗くて大きなトンネルの中に居た。

(女性)『まさか、こんな事になるとは…』

 日太の目の前に女性が一人、男性が三人立っていた。

(日太)「あれ、お前は俺の守護霊の…」

(男性)『まだ、名前は言ってなかったな。俺は林寸りんすん 和彦かずひこお前の兄だ』

(日太)「お兄さん!?」

 日太の守護霊は日太の兄だった。

(日太)「じゃあ、他の三人は…若しかして」

(女性)『私の名前は林寸りんすん 公代きみよ貴方の産みの親よ』

(男性)『僕の名前は林寸りんすん ふう君にとっては兄でこいつにとっては弟…つまり二男だ』

(男性)『儂は、林寸りんすん ひろしお前が小学五年の時に亡くなった祖父じゃよ』

 三人は日太にとって大事な家族の者達だった。

(日太)「此処は何所なんだ?」

(和彦)『此処は生きていた世界と死んだ後の世界を繋ぐトンネルだ』

 日太が居たのはこの世とあの世を繋ぐトンネルだった。

(日太)「俺は死ぬのか?」

(風)『いや、日太はまだ死ぬ訳無いだろ』

 風は日太がまだ死なない事を言った。

(和彦)『日太に話して置かなきゃいけない事がある…お前を車で轢いたのは…』

(日太)「分かってるよ、だから俺はわざと轢かれたんだからな」

(公代)『ふざけないで! 貴方はお父さんと私、の愛の結晶よ! 貴方の体は貴方だけの物じゃないのよ! 貴方が死んだらお父さんとお母さんの血が途絶えてしまうのよ! 分かってるの!?』

 日太の母親は息子に説教した。

(日太)「…母さん、そんなことは重々承知してるさ! 俺はあの時に轢かれなかったら他の者が被害に遭っていたかもしれないんだ! だから、俺が轢かれたら犯人もこれ以上は犯行を重ねないと考えた結果なんだよ! だからこそ、俺が轢かれないといけなかった!」

(公代)『…そう』

 日太の説明に四人とも納得した。

(弘)『儂から一つ御願がある』

(日太)「何?」

(弘)『あいつは大きな勘違いをしておる』

(弘)「大きな勘違い?」

(弘)『実はの~――』

 祖父は日太に衝撃の事実を伝えた。

(日太)「…そうか、じゃあ俺の家族に女性が結婚相手のみだったのはそう言う事だったのか」

(弘)『この事をあいつに伝えておいてくれ』

(弘)「分かったよ、必ず伝える、御祖父ちゃん!」

 日太は祖父から聴いた事をある人に伝えると約束した。

(弘)『じゃあ、お前を肉体に戻すよ』

(日太)「うん!」

 和彦達は日太を肉体に戻すと言った。

(和彦)『行くよ、皆!』

 すると、和彦達は右手を拳にして後ろに引っ込めた。

(日太)「…まさか、戻す方法って」

(和彦)『正解!』

 すると、日太の魂に四人の強い拳が当り、後ろに吹っ飛んだ。

 そして――

(日太)「…はぁ…はぁ…此処は…病院か」

 日太は目を覚ました。すると、病室に看護士が入って来た。

(未代)「あら、林寸君目が覚めたのね」

(日太)「え~と…」

(未代)「久しぶり、小学校の同級生の息澤 未代よ」

(日太)「息澤か! ナースとはね」

 日太の病室に入って来たのは息澤だった。

(未代)「驚いた?」

(日太)「当たり前だろ!」

(未代)「でも、林寸君は一ヵ月絶対に安静だからね」

(日太)「! …分かった」

(未代)「じゃあ、私は皆を読んで来るわね」

(日太)「済まない」

 息澤は山海達に日太が目を覚ました事を伝えに病室から出た。

(日太)「一ヵ月か…」

 日太は難しい顔をしていた。

 数分後――

 日太の病室に山海達が入って来た。

(丹波)「無事でよかった」

 山海以外の四人は歓喜して大泣きしていた。

(山海)「…」

 すると、山海と日太以外の時間が止まった。

(日太)「まさか、刻苦怒を預かっていたのが山海に変わっていたとは驚いた」

 日太はそう言っていたが顔は驚くことよりも笑顔だった。

(山海)「刻苦怒はお前に還すぞ!」

(日太)「ああ」

 すると、刻苦怒が山海から出て来た。そして、刻苦怒は日太の体内に戻って来た。

(刻苦怒)『お帰りなさい』

(日太)「只今」

 二人は笑顔で言った。

(山海)「……で、如何する気だ?」

(日太)「如何するって?」

(山海)「犯人を自首させるのが警察の捜査方針らしいがお前は如何する気だ?」

(日太)「当然、会いに行くつもりだ」

 日太は自分を轢いた犯人に会いに行くと言った。

(山海)「しかし! お前の肉体は一ヵ月安静にしてなきゃ駄目だって! 如何する気だよ!?」

(日太)「それは、今考えている所」

(刻苦怒)『…取り敢えず、時間を動かせよう』

 刻苦怒は時間を動かす事を提案した。

(日太)「そうだった!」

 日太は指の第一関節を曲げて鳴らした。

 時は動きだした。

 数時間後――

 日太の病室には日太一人になっていた。

(日太)(…この手で行こう)

 日太はある方法を思い付いた。すると、病室の扉が開いた。入って来たのは息澤だった。

(日太)「息澤」

(未代)「まだ起きていたの? もう消灯時間過ぎているわよ…早く寝なさい!」

(日太)「息澤…母親みたいだな」

(未代)「そう」

 二人は談笑していた。

(未代)「取り敢えず、絶対に病室から出ない事いいわね?」

(日太)「は~い」

(未代)「じゃあ、私は他の病室も見回らないと行けないから」

(日太)「はいよ」

(未代)「じゃあ次に此処に看護婦が来るのは一時間後だからね」

(日太)「はい」

 息澤はそう言うと病室から出て巡回に戻った。

(日太)「今の内に」

 一時間後――

 日太の病室に看護婦が来たが病室に日太の姿が無かった。

(看護婦)「嘘でしょ!?」

 看護婦は患者の知り合いの看護婦である息澤を呼んだ。

(未代)「日太君が居なくなったって本当?」

 息澤は急いで日太の病室に駆け付けた。其処には置き手紙があった。

(未代)「これは…手紙?」

 息澤は置き手紙を読んだ。

 (直ぐに戻るから心配しないで待っていてくれ  日太より)

(未代)「あの馬鹿!」

 息澤は大網の携帯と山海達の家に連絡した。

(希癒)「え!林寸君が…少し外を探して見る!」

 大網は電話を切ると外に出て日太を探し始めた。

(淡堕)『本当か!少し外を探して見る!』

 山海以外の者は全員外に出て日太を探し始めた。

(山海)「そうか、大丈夫だろ」

(未代)「いや、だから完治してないから何時倒れても可笑しくないのよ! 鮫熊君も探してくれないかしら?」

(山海)「…仕方ない、少し探して見るよ」

(未代)「有難う」

 山海は電話を切ると外に出た。

(山海)「どうせ、あの馬鹿はもう自分を撥ねた犯人と会っている筈だから…あの場所に居る筈だな)

 山海は心当たりがある場所に向った。

 一方、日太は――

(日太)(いつも、あいつは夜中になるとこの自由公園の丘に行って夜空を見上げているから其処に行けば会える筈…)

 日太は自由広場に居た。

(日太)「ゴッホ…ゴッホ」

 日太は咳き込むと掌に吐血した血が付いていた。

(日太)(これは…時間が無いな…足を動かす部分以外の所は止めたが…流石に…)

 日太は自分の体に己の力で足を動かす部分以外の部位と心臓と脳以外の内臓を止めていた。

(日太)「丘が近くなってきたか」

 日太はゆっくりと丘に向けて歩いて行った。そして、日太は丘に着いた。

(日太)「もう少しで…」

 日太は丘を上ると人影が一つあった。

(日太)「結婚記念日の旅行は楽しかったか? 親父!」

 其処に居たのは日太の父親だった。

(親父)「日太! どうして!?」

(日太)「生きているかだろ!? 強いて言うなら一族の被害者達の【怨み骨髄に入る】だな…俺を車で轢いたのは親父だろうが!?」

(親父)「…」

 日太を轢いたのは実の父親である林寸 鷹文【りんすん たかふみ】だった。

(鷹文)「どうして、俺が実の息子を轢かなきゃならないんだよ?」

(日太)「…一つは忠告だ これ以上一族の恥を知られたく無く車で俺を轢いた。そして、一番の理由は一族にとって恥と言える俺が怖かったからだろ!」

(鷹文)「…」

(日太)「俺は一族の掟を破ったと言える。だが、一族の掟は悪質此の上ない程やばい掟だ!」

(親父)「…自分の一族の掟を悪く言うんじゃない!」

 父親は掟の事に触れると怒った。

(日太)「やっぱり、親父は大きな勘違いをしている」

(親父)「勘違いだと!?」

(日太)「そうだ! 俺にとっては十八代位前の祖先が実は一族の掟に反対していた! …と言っても一族の長に言う事も無く一族の村から出た。掟の一つ【好きな女性が出来たら村に戻る】という掟を祖先は破ったんだ! 好きな女性は出来たが祖先は村には戻らずに外の世界で結婚して女性との間に子供が出来た。出来た数が男の子三人、女の子が二人という家族になり幸せに生活をしていた。俺達は一族のはみ出し者だった。親父は一族の掟に憑かれたが俺は祖先の想いを受け継いで行く。親父は俺の御祖父ちゃんに顔向けできるのかよ!?」

(親父)「そ、そんな話でっちあげだ!」

 日太の父親は日太の話しがでっちあげた話だと言った。

(日太)「でっちあげた話しじゃない! 俺が轢かれた後に俺はあの世に行くとこだった所を俺の御袋や兄貴達そして御祖父ちゃんが現れて俺をこの世に戻してくれた!」

(親父)「だったら、俺の親父とお前の母親とお前の兄貴達の名前を言ってみろ! お前は俺の親父の名前を死ぬまで知らなかったんだからな!」

(日太)「いいぞ、俺の兄貴は長男が和彦で二男が風そして、御袋の名前は公代、御祖父ちゃんの名前は弘…違うか?」

(親父)「…いや、合っている」

 日太の父親は日太の話しを信じ始めた。

(日太)「俺が言った祖先の話は御祖父ちゃんが俺に教えてくれた話だ! 俺は少し安堵したよ! 俺がやっているのは祖先の想いに反していると覚悟していたが御祖父ちゃんの話を聴いて安堵した! 本当は親父が祖先の想いに反していたのが事実だと分かったからな!」

(親父)「だ、だったら、俺は如何したら」

 日太の話を聴いて、日太の父親は困惑し始めた。

(日太)「正直言って、親父には自首をして欲しい」

(親父)「自首をすれば一族の真実が明らかになってしまう。他にも一族の末裔は居る其の人達は迫害の目に遭うだろ」

(日太)「…だったら、俺と何時も喧嘩をしていてあの日、俺は父さんの忠告を聴かずに友達と遊んでいた。自分は辛い目に遭っているのに息子は友達と楽しくしているのを見て昔の自分を思い出して俺を車で轢いてしまった。警察でそう言えば良いと思うぞ」

(親父)「真実を捻じ曲げるのか!?」

(日太)「お前の苦しみを何とか和らげようと想うとこうなるんだよ …でも、真実を知るのは数人で十分だ! 全国民が知る必要はない! …そうだろ?」

(親父)「…そうだな、分かった! 父さんは自首するけどあの家と沙枝の事を任せたぞ!」

(日太)「ああ、分かってるよ」

 日太の父親は警察まで歩いて行った。

(日太)「…ゴッホ…ゴッホ…」

 日太は更に酷く咳き込んだ。すると、日太の掌に大量の血が付いていた。

(日太)(やっべぇ…)

 日太は意識が遠のいていき倒れそうだった。

(日太)(俺は今度こそ死ぬのか…)

 日太が倒れそうになった時日太が倒れるのを防いだ者が現れた。

(???)「たくっ、ギリギリセーフだったな」

(日太)(誰だ?)

 日太は意識が朦朧としていて誰かは分からなかった。

(???)「刻苦怒! 出て来い!」

(刻苦怒)『何だよ? 疲れて寝ていたのに』

(???)「日太が非常に危険な状態だ! お前の力でこいつ自身の時間を止めろ!」

(刻苦怒)『…! 分かった!』

 数時間後――

(日太)「ここは?」

(未代)「心配させないでよね」

 日太に声を掛けたのは息澤だった。

(日太)「病院に戻って来たのか」

(未代)「本当に危険な状態だったのよ! 後、五回吐血していたらあの世に逝っていたわよ!」

(日太)「そうか」

(未代)「あんたってさ、昔から冷静沈着だよね」

(日太)「そうかなぁ?」

(未代)「そうよ」

 二人は少しの間、談笑していた。

 翌日――

 日太の病室

 【臨時ニュースです! 昨日の正午、猛スピードの車に轢かれた青年は奇跡的に重傷で命に別状はありませんでした。犯人はなんと、青年の父親でした。犯行の動機は親の言う通りにしなかった。と言っています。続いてのニュースは……】

(日太)「此れだけで済んだか」

(日太)(真実を知ったら他の人の一族の悪い所を見つけ出すのに躍起になって世界が壊れるかも知れないからな!)

 その時、病室のドアをノックする音がした。

(日太)「どうぞ!」

 病室に入って来たのは日太の今の母親の沙枝だった。

(日太)「どうしたの?」

(沙枝)「私ね、お父さんと別れようと考えているの」

(日太)「!」

 沙枝さんは日太の父親と離婚を考えていた。

(日太)「別れるってつまり離婚をするって事か!?」

 日太の問いに沙枝さんは頷いた。

(日太)「どうして?」

(沙枝)「今回の事件で私まで被害を受けるのはいやだから」

 離婚する理由に日太は唖然とした。

(日太)「あのさ、沙枝さんは如何して、俺の親父と結婚したの?」

(沙枝)「それは…」

 沙枝さんは言葉を詰らせた。

(日太)「沙枝さんは俺の親父が好きで結婚したんでしょ? それに、結婚式で永遠の愛を誓うっていう工程で二人はお互いが誓ったでしょ?」

(沙枝)「あれは…結婚式の工程の一つであって…」

(日太)「ふざけるな! 自分が言った言葉に嘘をつくなよ! だから、俺は離婚の事は認めないからね、沙枝さん!」

(沙枝)「だから、今回の一件で私にも被害を受ける事がいやなの」

(日太)「だったら、世間と一時的に遮断したらどうだ?」

(沙枝)「遮断?」

(日太)「こういう事は時の流れで落ち着きを見せるからそれまで世間と遮断すれば良いだけの話さ。もしくは、俺が退院したら何とかするから心配しないで家に居てくれ」

(沙枝)「でも…」

(日太)「俺は昨日、父親が自首する前に父親と会って俺に沙枝さんを守る様に言われた。だから、親父が戻ってくるまで沙枝さんは俺が出来る限り守りますから!」

(沙枝)(身勝手!)

(沙枝)「…分かったわよ」

 沙枝さんは日太の言葉で離婚をするのを止めた。沙枝さんは家に戻った。

 数分後――

 日太の病室のドアをノックする音が聴こえた。

(日太)「どうぞ!」

 入って来たのは山海だった。

(山海)「元気そうだな」

(日太)「一応な …そう言えば昨日、自由広場の丘から病院まで運んだのってお前だったのな」

 昨日、日太を病院まで運んだのは山海だった。

(山海)「誰から聴いた?」

 山海は誰に聴いたかを訊いた。

(日太)「刻苦怒だよ」

(山海)「そうかい」

 日太と山海はその後、数十分間、談笑していた。

(山海)「そういえば、完素が新しい施設を見つけたって言っていたけどお前はどうする?」

(日太)「如何するって?」

(山海)「次の定期集合には参加するかだよ」

(日太)「集合場所は?」

(山海)「丹波の家だけど…」

(日太)「…如何し様かな」

 日太が考えていると病室に息澤が入って来た。

(未代)「駄目ですよ! 病院から一切出ちゃダメなの分かってるでしょ!?」

(日太)「分かったよ。そう言う事で俺はキャンセルで」

(山海)「…了解!」

 山海は病室から出た。

(日太)「…それで、息澤は何しに来た?」

(未代)「患者の様子確認よ」

(日太)「そうかい」

(未代)「…でさ、鮫熊君となに話していたの?」

(日太)「あ、ああ、心霊スポットの探訪で今回は参加するか訊きに来ただけだよ」

(未代)「そう …異常はないと」

 息澤は異常が無いと判断して病室から出た。

 数分後――

 ノックをする音がした。

(日太)「どうぞ!」

(担当医)「調子は如何ですか?」

 入って来たのは担当医だった。

(日太)「医師みたいですけど名前は?」

(担当医)「私は君の主治医の刃動 健治【じんどう けんじ】と申します」

(日太)「…どうも」

(健治)「それで調子は如何ですか?」

(日太)「特に変わった感じはありません」

(健治)「それなら良かった」

 刃動先生は笑みを浮かべて病室から出た。

 それから二日目――

 日太の病室には日太と刃動先生と息澤と山海と大網の五人がいた。

(健治)「今日、君は退院となります」

 刃動先生は日太が退院をする事を日太達に伝えた。

(日太)「はい?」

 日太は唖然とした。

(未代)「退院って早すぎませんか?」

 息澤は刃動先生に訊いた。

(健治)「早いも何も上からの命令だからさ」

 刃動先生が言うには上から日太を退院しても良いと命令があったらしい。

(未代)「ですが流石に三日前に吐血して危機的な状況に陥ったじゃありませんか?」

(健治)「それは、私だって上に報告したが大丈夫だと言われて納得するしかないの」

(未代)「私、上に直接抗議してきます」

 息澤は上に抗議しようと病室を出ようとした。

(健治)「駄目だ!」

(未代)「どうしてですか?」

(健治)「上といっても病院の上層部じゃない」

(未代)「じゃあ、何処の!?」

(健治)「それは…」

 刃動先生は言葉を詰らせた。

(未代)「教えてください!」

(健治)「…はぁ…特殊制裁班という部署に居る一人で心究 匠【しんきわ たくみ】という者だ」

(希癒)「特殊制裁班?」

(健治)「特殊制裁班って言うのは法から逃げた者や法を利用した者達などを裁くチームだと聴かされている。その中で心究 匠の両親は医師で今も現役バリバリで働いているが匠自身はある日危険な状態で見つかり回復出来るかどうかは一%以下だと分かっていたが両親は神に祈りながら必死に助けようとしたら奇跡的に助かったけど其の時から匠は不思議な事に人に触れるだけで其の人の悪い所を直す力が生まれたらしい」

(山海)「それなら日太は如何して吐血したの?」

 山海は刃動先生の話に疑問が生じた。

(健治)「それは、君が見つかって助けた後に聴いたけど【その件に関しては彼の家に手紙を送った】と言っていた」

(希癒)「そう言えば…」

 大網は刃動先生の言葉で思い出した事があるらしく急に鞄から一つの手紙を出した。

(日太)「それは?」

(希癒)「昨日、沙枝さんと家に来た手紙を整理していた時に見つけた物よ」

(日太)「一寸貸して」

 日太は大網から手紙を貰い口に出して読んだ。

 【患者さんは何を言われても今回の犯人を自首させる為に病院を抜け出す事が分かっていたから態と手を抜いた。…って言うのは嘘で状態がかなり酷くて俺にも完璧には治せなかっただけです。】

手紙によると、日太の状態が深刻だった事を現していた。

(健治)「取り敢えず、退院が出来るが君は如何したい?」

 刃動先生は日太に退院したいか訊いた。

(日太)「俺は…退院した方が賢明だと」

(未代)「如何して?」

 息澤は日太に訊いた。

(日太)「俺が入院している事で病院にある《入院ベッド》の回転率が非常に悪くなるし、俺自身も特に変わった様子は無いから大丈夫だと思うから」

(未代)「…そうね」

 息澤は少し暗い表情を見せた。

(健治)「じゃあ、退院って事で話は進めるよ」

(日太)「それでお願いします」

 数時間後――

 日太は既に病院から出ていた。

(日太)「そう言えば大網はホテルの予約をしてなかったか?」

(希癒)「其れ何だけどね、ホテルはキャンセルしたから」

(日太)「キャンセル?」

(希癒)「そう、同窓会が終わるまであんたの家に泊る事にしたから」

(日太)「はい!?」

 大網は日太の家に同窓会が終わる日まで泊る事を伝えた。

(希癒)「仮にもあんたと沙枝さんは血が繋がって無いのよ! あんたが如何わしい事をするかもしれないから私は監視する事にしたから」

(日太)「いや、俺はそんな事はしねぇよ!」

 日太は大網の一言に突っ込んだ。

(希癒)「ふふ」

 大網は笑っていた。

 数時間後――

(日太&希癒)『ただいま』

 二人は家に着いていた。

(沙枝)「お帰りなさい」

 数時間後――

(沙枝)「風呂沸いたわよ」

 沙枝さんは二人に風呂が沸いた事を伝えた。

(日太)「先に入れよ」

(希癒)「私から?」

(日太)「当たり前だ。レディーファーストだよ」

(希癒)「じゃあ、御言葉に甘えて」

 大網は先に風呂に入る為に風呂場に向った。

 数十分後――

 大網が風呂から出て来た。

(希癒)「お風呂、ありがとね」

(日太)「どう致しまして」

(希癒)「次は林寸君の番でしょ」

(日太)「ああ」

 日太は風呂に入る為に風呂場に向った。

 数分後――

 日太は意外に早く出て来た。

(日太)「良い湯だった」

(沙枝)「ねぇ、二人とも寝床は如何するの?」

 沙枝さんは二人に寝床を如何するか訊いて来た。

(日太)「それなら、俺が一人で寝るから二人は親の寝室で寝たらどうだ?」

(希癒)「そうね」

(沙枝)「じゃあそう言う事で準備して来るわね」

 沙枝さんは寝床の準備に取り掛かった。

 数分後――

(沙枝)「準備が出来たわよ」

(日太)「じゃあ、寝るとするか」

 日太達はお互いの部屋に入った。

(希癒)「林寸君お休みなさい」

(日太)「ああ、お休み」

 二人は自分の部屋の扉を同時に閉めた。

(日太)「さてと、明日も大変な事になりそうだ」

 日太は部屋の電気を消した。


 四情狩林 それぞれの苦しみと意い

~第四章~ 完


 四情狩林 それぞれの苦しみと意い

~第五章~

                 続く――


日太の祖先は一族を裏切っていた! そして日太を轢いたのは実の父親! 日太にとっての第二の母親は悲しき決断をするが日太は一喝した! 林寸 日太の新しい道が開かれた!

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