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四情狩林  作者: 戌尾 昴
3/6

それぞれの苦しみと意い~第三章~

二つの一族が経営する場所に――

  四情狩林 それぞれの苦しみと意い

~第三章~


 集落から帰って四日目――

 林寸家では――

(日太)「ハァ…疲れた」

 日太は一族の村から持って帰って来た書物2百冊以上を読み終えた。

(刻苦怒)『お疲れ様』

 刻苦怒は日太を労った。

(日太)「…まぁな」

 日太は徹夜で読んでいた為に椅子に座ったまま、寝てしまった。

(刻苦怒)『流石にきついよな、四六時中ずっと寝ずに読み続けたからな』

 刻苦怒は念力で掛け布団を掛けてあげた。

 数時間後――

日太の携帯電話が鳴った。

(日太)「はぁ~」

 日太は携帯を見ると山海からメールが来た模様。

 (件名…無題 本文…御早 書物は読み終わった?読み終わったのなら返信、頂戴。今日の午後に淡堕の家に定期集合だから宜しく!)

 日太はメールの内容を読んだ。

(日太)「午後に定期集合ねぇ」

 日太は山海のメールに返信を打った。

 (件名…林 本文…書物は全て読み終えた。午後の淡堕の家に定期集合ですが少し遅れるかもしれない さっき、書物を読み終えてすんげぇ疲れたから一度、寝るから午後になる前に起きられるか分からん)

 日太は山海にメールの返信を送った。

(日太)「さてと、寝るか」

 日太はそのまま寝た。

 数時間後――

(刻苦怒)『日太、起きろ!』

 刻苦怒は日太を起こそうとしていた。

(日太)「…今、何時だ?」

 日太は刻苦怒に時間を訊いた。

(刻苦怒)『午後2時48分23秒だ』

 刻苦怒は秒単位まで日太に教えた。

(日太)「もうすぐで三時か」

 日太はまだ寝ぼけていた。

(刻苦怒)『たくっ、これを見ろ!』

 刻苦怒は寝る前に山海から来たメールを日太に見せた。

(日太)「…やべっ!」

 日太は急いで着替えた。

(日太)「大遅刻じゃねえか!」

 日太は急いで部屋から出た。その時、机に置いてあった例の書物から一つの紙切れが落ちた。日太は気付かなかった。紙切れに書いてあったのは…。

 【ある者が暴れ泣く時、四つの感情は消え、狩人も消え、森のみが残り、暴れ泣く者を森は鎮め和解する】

 この詩は何を意味するのか…。

 一方その頃、日太は淡堕の家に着いていた。

(日太)「…ハァ…ハァ…」

 日太は呼吸が落ち着いてからインターホンを押そうとすると…。

(淡堕)「開いているから入って」

 インターホンから押してもいないのに淡堕の声が聴こえた。

(日太)(俺…押してないけど!)

 日太は疑問に思った。

(日太)「取り敢えず、中に入るか」

 日太は一先ず淡堕の家に入った。

(山海)「遅かったな、日太…」

 山海が迎えた。

(日太)「メール送ったから分かっているだろ?」

 日太はメールを送った事を山海に確認した。

(山海)「いや、届いて無いぞ」

 山海は日太のメールを受け取っていなかった。

(日太)「いや、俺は確かに送った筈だけど…」

 日太は山海に送った筈のメールが無いとは思えず山海に携帯のメール履歴を見てもらった。

(山海)「あっ!忘れていた」

 山海は携帯を見て何かを思い出した。

(日太)「何だよ?」

 日太は山海に訊いた。

(山海)「日太にメールを送信した後にバッテリーが切れていたのをすっかり忘れていた…」

 山海の携帯は蓄電池切れになっていたのを山海自身が忘れていたのだった。

(日太)「…何時からだ?」

 日太は怒り気味に山海を問い質した。

(山海)「確か…日太にメールを送った時にはアンテナが一本で切れる寸前で送ったから…って言うか日太は何時にメールを送信した?」

 山海は説明の途中で日太がメールを送信したのが何時か訊いた。

(日太)「俺が送ったのは確か…8時54分にお前の携帯に送信したぞ」

 日太は正確に教えた。

(山海)「確か俺が送ったのは8時20分位にお前に送信したから…8時40分位にバッテリー切れしたのかな?」

 山海も蓄電池切れが起きた時刻は知らなかった。

(日太)「…分かった 今回は大目に見てやるが次回から頼むからバッテリーが切れる前に必ず充電してくれ」

 日太は怒る事を止めて山海に頼み事を言った。

(山海)「取り敢えず、淡堕の部屋に行こうか?」

 山海は日太に淡堕の部屋に連れて行こうと言った。

(日太)「そうだな」

 日太は携帯の件を不完全に終わらせて淡堕の部屋に行った。

(界男)「遅いな、日太」

 界男は日太に言った。

(日太)「すまない、今まで熟睡していたから遅れた」

 日太は皆に遅刻した理由を説明した。

(丹波)「流石に全部は読み切って無いだろ?」

 丹波は日太に例の書物を全て読み切っては無いと日太に訊いた。

(日太)「…いいや、全て読み切ったぞ」

 日太は皆に例の書物を完全読破した事を教えた。

(全員)『…マジで!』

 日太の返答に皆は驚いた。

(完素)「でも、確か…日太の書物は200冊以上だったよな…どうやって読破したの?」

 完素は日太に訊ねた。

(日太)「…徹夜で読んだだけ」

 日太はそう答えた。

(淡堕)「取り敢えず、今日皆が集合したのは集落から帰ってから決めた事だが今回は大事な事が二つある!」

 淡堕は皆に今回の集合について説明を始めた。

(日太)「二つの大事な事?」

 日太は首を傾げた。

(淡堕)「今回の件は完素から説明します」

 淡堕は完素にバトンタッチした。

(完素)「了解した」

 完素は説明を始めた。

(日太)「完素、大事な事とは何だ」

 日太は訊いた。

(完素)「実は俺の村の書物を俺特製の解析機で解析した結果、二つの企業がまだ壊されずに廃墟となって残されていた」

 完素の調べで二つの企業が廃墟として残されていた。

(日太)「残されていた企業を扱っているのは何処の一族だ?」

 日太は完素に尋ねた。

(完素)「一つは界男の一族である哀世一族が経営していた病院…」

 完素は哀世一族が経営していた病院を見つけたらしい。

(山海)「其の場所は?」

 山海は訊いた。

(完素)「調布市内にある」

 完素が言うには近所にあるらしい。

(日太)「もう一つは?」

 日太はもう一つの企業を訊いた。

(完素)「もう一つは丹波の一族である水楽一族が経営していた銭湯だ」

 完素は水楽一族が経営していた銭湯を見つけたらしい。

(日太)「場所は?」

 日太は銭湯の場所を訊いた。

(完素)「多磨霊園の近くに存在しているらしい」

 完素は場所を教えた。

(日太)「成程」

 日太は納得した。

(淡堕)「さて、此処からが本題だ。この二つを如何行くべきか?」

 淡堕は今回の会談の本題についてきりだした。

(丹波)「如何行くべきか…って普通は一緒に行動か一族の子孫である二人だけで行かせるかの二つだが…」

 丹波は二つの選択肢を言った。

(日太)「…いや、此処は二手に分かれて行動をした方が賢明だ」

 日太は今回の件は二手に分かれるのがベストだと言った。

(淡堕)「でも、二手に分かれると言っても誰がどっちにつくかだよな…」

 淡堕は言った。

(界男)「取り敢えず、丹波と俺は除外して、残り四名がどっちにつくかだが…」

 界男は残り四名がどっちにつくか考えていた。

(日太)「界男組は界男・完素・山海の三人が良いと思う」

 病院チームはこの三人がベストだと日太は考えた。

(淡堕)「残りが丹波組につく訳か」

 淡堕は残りの丹波・淡堕(自分自身)・日太の三名だと言った。

(日太)「そう言う事になるな」

 日太は淡堕の解釈に肯定した。

(山海)「俺もそれがベストな組合せだと思う」

 山海は納得していた。

(淡堕)「取り敢えず、今回の集合は此処まで…明日の早朝に各自、界男と丹波の家に集合する事…以上!」

 淡堕は今回の会談を終わらせて明日の予定を説明した。

(山海)「じゃあ、解散!」

 山海はそう言うと皆がそれぞれ自由に帰って行った。

(日太)「そう言えば…淡堕に一つ訊きたい事が…」

 日太は淡堕に尋ねた。

(淡堕)「何だよ?」

 淡堕は聞いた。

(日太)「俺が此処に来た時にインターホンを鳴らさなかったのにお前インターホンから出たよな?」

 日太は淡堕に来た時の疑問を訊ねた。

(淡堕)「…あれか、完素が直した…いや、改良した結果があれ」

 淡堕は日太に来た時の件の説明をした。

(日太)「成程ね」

 日太は理解した。

(日太)「じゃあ、俺は帰るわ」

 日太は先に帰ると言った。

(淡堕)「じゃあ、明日な」

 淡堕達は日太を見送った。

(日太)「それにしても眠い」

 日太は帰路の途中でも眠気が襲っていた。

(日太)「帰ったらすぐに寝るか」

 日太は家に着いた。その後ろから女性の声が聴こえた。

(女性)「林寸君?」

 日太は後ろに振り向くと女性が居た。

(日太)(…誰だっけ?)

 日太は女性が誰なのか思い出せない様子。

(女性)「久しぶり…七年振りね」

 女性の方は日太と七年振りと言った。

(日太)(七年振り…)

 日太は未だに思い出せない様子。

(女性)「…若しかして、分からないの?」

 女性は日太に聞いた。日太は頷いた。

(女性)「仕方ないか」

 女性は納得した。

(日太)(…って言うか七年前と言えば中学生だろ…中学生時代の同級生か…それか七年前に会った人物か…)

 日太も必死に思い出そうとした。

(女性)「ヒントね、小学校と中学生の時は同じ学校に通っていた」

 女性は日太にヒントをくれた。

(日太)(小中と同じ学校…若しかして)

 日太は思い出した。

(日太)「大網(おおあみ) 希癒(きゆ)か?」

 日太は女性に訊いた。

(女性)「正解!」

 女性の名前は大網(おおあみ) 希癒(きゆ)という女性だった。

(日太)「久しぶりって言うか何で此処に? 引っ越した筈じゃぁ…」

 日太が言うには大網 希癒は他の所に引っ越していた。

(希癒)「実は小学校の同窓会が来週の金曜日にやるって事で早めに帰省したの」

 大網は来週の同窓会の為に来ていたらしい。

(日太)「…一つ訊くけど同窓会は来週だろ泊まる場所はちゃんとあるよな?」

 日太は大網に訊いた。

(女性)「…いや、それが近くの泊れる施設に尋ねたら今現在全て予約で一杯らしく来週の火曜日からだと泊れる場所はあったけど…それまで外というか車の中で生活しなきゃいけない状態なのよねぇ~ …ハハ、参ったねぇ~」

 大網は笑いながら説明した。

(日太)(お前なぁ~)

(日太)「…仕方ないか …俺の家に泊めてやるよ!」

 日太は大網を家に泊めてやると言った。

(希癒)「いや、御厄介になる訳には…」

 大網は当然の事ながら拒否しようとした。

(日太)「今は俺一人だし明日の夜には両親も帰って来るし…何もお前を襲たりはしねぇよ 小学校の時に言った言葉は約束するから それに夜中に女性が車の中に一人で居る方が危険過ぎるだろ! もしも、車の中にいて男性達に襲われたら如何する気だって!? それに外に居ても同じ危険があるからな! 家なら安全性が高いから安心できるだろ?」

 日太は大網に泊める理由を説明した。

(希癒)「…分かったわよ」

 大網も仕方なく承諾した。

(日太)「さてと、入るか」

 日太は大網と共に家に入った。

(日太)「二階の俺の部屋に敷いてある布団使って寝ろよ …あれ結構温かいし」

 日太は大網に自分の部屋の布団で寝る事を進めた。

(希癒)「でも、林寸君は何処で寝るの?」

 大網は日太が何処で寝るのか訊いた。

(日太)「俺は一階のソファーで寝るから」

 日太は大網に自分は椅子で寝ると言った。

(希癒)「林寸君は掛ける物在るの?」

 大網は日太に寝る時に掛ける物があるか訊いた。

(日太)「在るから大丈夫だよ」

 日太は大網にそう言った。

 数時間後――

(希癒)「林寸君シャワー借りるね」

 大網は日太がいる一階に行って日太に言った。

(日太)「…」

 日太は返答しなかった。

(希癒)「…林寸君?」

 大網は日太に駆け寄ろうとした。

(???)『希癒ちゃんストップ!』

 大網の後ろから声がした。

(希癒)「誰?」

 大網は金縛りになった。

(守護霊)『俺は日太の守護霊で御座います』

 どうやら、大網を金縛りにしたのは日太の守護霊だった。

(希癒)(如何して止めるの?…もしも、林寸君が死んでいたら如何するの?)

 大網は日太の守護霊に言った。

(守護霊)『ああ…あれは唯の熟睡してるだけ』

 日太の守護霊は大網に言った。

(希癒)(熟睡ってどうして、まだ夜の七時だよ)

 大網は気になって日太の守護霊に訊いた。

(守護霊)『数日前から四六時中徹夜で書物を調べまくっていたから眠いのは当然』

 日太の守護霊は言った。

(希癒)(書物?徹夜?)

 大網は更に訊こうとした。

(守護霊)『この先は俺でも言えないが希癒ちゃんが日太の両親にも絶対に内緒にしてくれるなら教えてあげる』

 日太の守護霊は大網に詳しい説明をする代わり日太の両親には絶対に内緒にすることを前提に言った。

(希癒)(…分かりました)

 大網は承諾した。

 日太の守護霊は大網に日太が何故早くに寝ている詳細に説明した。

(守護霊)『…そう言う事で日太はああやって熟睡しているわけ』

(希癒)(…成程ね)

 大網は理解したようだ。

(守護霊)『因みにシャワーだがご自由にお使い下さい』

 日太の守護霊は大網にシャワーの事について日太の代わりに伝えた。

(希癒)(有難う)

 大網に掛かっていた金縛りが解けた。

(希癒)「あれ解けた!」

 大網は二階に戻った。

 翌日――

(希癒)「おはよう」

 そう言う声が聴こえた。日太が起きると目の前のテーブルに朝食と思われる食べ物がずらりと並んでいた。

(日太)「これは!?」

 日太が驚いていると台所からエプロンを着た大網が居た。

(日太)「大網、何してるんだ!?」

 日太は大網に訊いた。

(希癒)「私が林寸君の家に何もせず泊るのは気が引けるからせめて食事位は作ってあげる」

 大網は日太の家に一時的泊めてもらう代わりに日太の食事を作ったらしい。

(日太)「さ、サンキュー」

 日太は照れながら言った。

(希癒)「食べてくれる?」

 大網は日太に訊いた。

(日太)「そりゃあ、食べるよ」

 日太は喜んで言った。

 日太は大網が作った料理を完食した。

(日太)「美味しかったよ」

 日太は大網に言った。

(希癒)「これからどこか行くの?」

 大網は日太に訊いた。

(日太)「何でそう思う?」

 日太は大網に訊き返した。

(希癒)「いや、だって其のままの服装で寝ていたから」

 大網は答えた。

(日太)「…そうか …確かに出掛けるけど」

 日太は大網の問いに答えた。

(希癒)「…で、何所に行くの?」

 大網は更に訊いた。

(日太)「ちょっとね」

 日太は大網にそう言った。

(希癒)「まあ、いいけどね」

 大網も詳しくは訊かなかった。

 数分後――

(日太)「それじゃあ、俺は出掛けるけど家中の鍵閉めとけよ」

 日太は大網に言った。

(希癒)「ええ!」

 大網は気楽に答えた。

 日太は玄関のドアを閉めて鍵を閉めた。そして、日太は丹波の家に向った。すると、日太の後ろに人影があった。人影は誰かと電話をしながら話していた。

(人影)「先生、彼らの次の行動は二つの企業跡地を調査する事です…ええ彼らの行動は後で彼らの内、一人の父親に伝えておく父親がどう動くかは私にも分かりませんけど」

 人影は先生という人物と話していた。

(希癒)(あれって…泣き虫君?)

 大網は人影をガラス窓から見ていた。大網は人影に見覚えがあるらしい。

 その頃、日太は丹波の家に着いた。

(丹波)「さてと、全員集まったか」

 丹波は淡堕と日太が来た事を確認して廃銭湯に向った。

(日太)「場所は分かってるのか?」

 日太は訊いた。

(丹波)「昨日、廃銭湯の場所までの道のりを完素がメールで教えてくれたから大丈夫」

 丹波は言った。

(日太)「そうか」

 日太は納得した。

 数時間後――

(丹波)「此処だな」

 日太達は廃銭湯に着いた。

 すると、丹波はリュックからある物を取り出した。

(日太)「それは?」

 日太は丹波がリュックから取り出した物を訊いた。

(丹波)「カメラだよ、今回は二手に分かれたからお互いに状況が分からないから入る前から録画して明日の定期集合の時にお互いの状況を正確に見せ合う事に昨日の定期集合で日太が帰った後に決まった。…因みにこれは完素が作った【完素特製心霊スポットでも画面が荒くならなくなるカメラ】だよ]

 丹波は詳しく説明した。

(日太)「成程ね」

 日太は納得した。

(淡堕)「それじゃあ、入りますか」

 淡堕は二人に訊いた。

(日太&丹波)『準備は出来ているよ』

 二人とも廃墟に入る心の準備は疾っくに出来ていた。三人とも廃銭湯に入った。

 界男組は――

(山海)「それにしても、廃墟になっても病院の匂いはするな」

 山海は病院の匂いが苦手…だが病院自体は嫌いでは無い。

(完素)「確か、書物には、二階の二〇五号室から薄気味悪い声が聴こえると記されていた。他にもインターネットの情報にも同じ記述があったから間違いなく二〇五号室に被害者がいる」

 完素はこの廃病院の詳細と推測を言った。

(界男)「にしても、二〇五号室ってどっちだ?」

 界男はそう言った。

(山海)「取り敢えず目の前にあるナースステーションがあるから其処を調べれば詳しく分かると思うが…」

 山海は目の前に荒れ果てたナースステーションが在り其処でこの廃病院の事を調べる事を二人に提案した。

(界男)「良いとは思うけど」

(完素)「…俺も」

 界男と完素は良いと思ったらしい。

 三人はナースステーションに入った。

(界男)「それにしても、可なり荒れてるよな?」

 界男はそう言った。

(山海)「確かに…でも、こう言う場所には隠された大切な何かが在るのは相場だからな!」

 山海はそう言って捜索を開始した。

 数十分後――

(完素)「見つからないな」

 完素は少し諦めたように言い放った。

(界男)「…そうだな」

 界男も探すのを打ち切ろうと思っていた。

(山海)「…なあ、まだ探してない場所は無いか?」

 山海は二人に訊いた。

(界男)「強いて言うなら棚の後ろとか壁の中とかしかないぞ」

 界男は探してない場所を言った。

(山海)「そうだな、お前…あれ持って来たか?」

 山海は完素に訊いた。

(完素)「あれって?…ああ、あれね」

 完素は突然リュックの中から小さな機器を出した。

(界男)「それは?」

 界男は訊いた。

(完素)「これは、俺が開発した書物探知機だよ」

 完素は答えた。

(界男)「書物探知機?」

 界男は機器について訊いた。

(完素)「これは、人や金属には反応せず書物…つまり、巻物・ノート・ファイルなど書物の形を認識すると音で知らせる機器だよ」

 完素は機器に関する事を説明した。

(山海)「取り敢えず、完素は壁の中を調べてくれ…俺と界男は棚をどかして、後ろの方を調べて見るよ」

 山海は二人に行動について話した。

(完素&界男)『了解』

 二人は納得した。

 数十分後――

 完素の方から反応が出た。

(界男)「二人とも来てくれ!」

 完素は二人を呼んだ。

(山海)「何だよ?」

 山海は訊いた。

(完素)「この場所から反応があった!」

 完素は二人に説明した。

(山海)「そうか!」

 山海は突破口が見えて少し笑顔になった。

(山海)「此処を開けよう」

 山海は二人に壁に穴を開ける事を提案した。

(界男)「それは良いけど、どうやって開けるの?」

 界男は訊いた。

(山海)「そうだな…壁に蹴りを入れて壊すか?」

 山海は壁を蹴る事を二人に説明した。

(完素)「…良いと思うぞ」

 完素は良いと思ったらしい。

(界男)「まあ、いっか」

 界男は少し迷った。

 山海は思いっ切り壁を蹴ると脆かった為か一撃で予想よりも大きな穴が開いた。

(山海)「出て来た」

 三人が目をやると二つのノートが出て来た。

(界男)「読んでみるか?」

 界男は二人に訊いた。

(山海)「呼んだ方が正解だと思うが…」

 二人は頷いた。

 一つ目のノート――

 (俺の名は哀世あいせ 守堕しゅうたこの遺書を読んでいると言う事は苦しい事実を伝える役割が君に頼む…俺は此処【屍殻病院しこくびょういん】に入院されている患者達のメンタルケアを頼まれていたが俺の妹が5歳の時に何故か病院の屋上から飛び降り自殺をした。その事を知った俺は自暴自棄になり体を傷だらけにして精神がボロボロだったある日、妹の理子が俺宛に書いた遺書が見つかった。其処に書かれていたのは一族の知られざる掟と看護婦達の虐めが子供に対する虐めの域を超えていた事を知り、絶望した。俺は小学生四年の時から中二の今まで勤務していたのに気付けなかった俺は医師になる資格はない…だけど、俺は妹の仇をしたいが俺達の両親が経営している病院を敵にすれば俺は殺され永久に行方不明のまま時代は流されて行くだろう…方法は一つ俺も同じ道を辿り屍穀病院に悪い噂を流せれば屍穀病院は経営不振で病院は廃業となれば少しは妹の気も晴れるだろう…最後に俺が妹に出来るのは俺の命を捨てる事位だ。すまないな…俺は妹の事が好きで家族として一番大切な存在だから…以上だ。これを読んだ者はこの歴史を抹消せず大切にしてくれ妹の為にも)

 どうやら、三人が読んだのは遺書だった。

(界男)「もう一つは…」

 三人はもう一つのノートも読んだ。

 (私の名前は三刀さんとう 溧子りつここの屍穀病院【しこくびょういん】の看護婦として勤務していた。私は看護婦として守堕君の患者の経過報告していた。守堕君の妹とは仲は良く一緒に遊んでいた患者さん達にとっては天使の様な存在だった。けどある日、私が何時も道理に出勤すると守堕君は出勤していなかった。何時も私よりも早く午前四時にはすで出勤するほど真面目で熱意がある守堕君が来ていなかったのが気になり、病院長である守堕君の父親に訊くと家に居ると言った。如何してか訊くと妹の理子ちゃんが病院の屋上から飛び降りたと聴かされた。私は守堕君が気になり守堕君の家に向った。すると、家の中から泣き叫び声と人が壁にぶつかる音が聴こえた。私は守堕君が心配になり巣トーキングしていた。ある日の夜に守堕君が家から出てくるのが見えて、後を付けて行くと屍穀病院に入って行くのが見えて嫌な予感が頭を過り急いで後追うと屋上の先端に立っているのが見えた。急いで守堕君の元に急いで行って守堕君の自殺を一時的に止めた。守堕君に自殺の動機を訊くと理子ちゃんの死の真相・病院で行なわれてきた真実を聴いて驚愕したが守堕君一人で死んでも何も変わらない事を察して私も一緒に死ぬ事を決めた。私が一緒に死ぬ事を守堕君に言うと断れたが私は守堕君に告白してちゃんと説得した。そこでこのノート(遺書)を書く事になった。私達は自らの命を捨てて理子ちゃんの仇を取る事にした。……ごめんね♡ちゃんと助けられなくて)

 こちらは、三刀 溧子という女性の遺書が書かれていた。最後の言葉は濡れていて読みづらくなっていた。

(山海)「これを読むと悲しい復讐劇があったみたいだな」

 山海は言った。

(完素)「俺が昨日の夜に更なる事実で二人の病院関係者が飛び降り自殺をして病院に入院していた患者さん達から悪い噂が流れて病院は廃業となったらしい」

 完素は昨日やっていた事で見つけた情報二人に説明した。

(???)『達成出来たのか』

 三人の声とは別に男性と女性の声が聴こえた。三人が聴こえた方を向くと全身から血が流れていた男女が其処に居た。

(界男)「君達は?」

(山海)(言わんでも分かるだろ普通…)

 界男は二人が何者なのか二人に訊いた。山海は界男の訊く事に呆れていた。

(男性)『俺は、哀世 守堕です』

(女性)『私は、三刀 溧子です』

 二人の男女はノートに遺書を書いた張本人だった。

(界男)「それで、如何して死ぬ事にしたんですか? 他にも方法はあった筈ですよ?」

 界男は二人に言った。

(守堕)『確かに告発する方法もあった。けど、妹の自殺の真相についての捜査が何故か行われなかった。警察内部に協力者がいる可能性があった。他の方法が思い付かずにこんな手しか思いつかなかったが現状だった』

 守堕が言うには、警察内部に一族と関係者がいて、告発も出来ず自殺という手しか思いつかなかったらしい。

(溧子)『私は守堕君と一緒に居られる事が一番だから』

 溧子さんは守堕と一緒に居るのが幸せだと言った。

(守堕)『…』

 守堕は少し赤くなった。

(溧子)『ふふ♡』

 溧子は幸せそうな笑顔をしていた。

(山海)「貴方達が俺達の目の前に現れたのは何故ですか?」

山海は二人に訊いた。

(守堕)『そうだった。実は妹の理子が――』

 守堕が現れた理由を言おうとすると山海が止めた。

(山海)「ああ、そう言うことね」

 山海は説明の途中で理解したようだ。

(溧子)『分かったって…』

 溧子さんも少し気になった。

(完素)「俺達が此処に来たのは狂霊…つまり狂った霊を助ける為とこいつが哀世一族でこの廃病院の実態を調べる為に来たわけだから…」

 完素は二人に説明した。

(守堕&溧子)『哀世一族の末裔…』

 二人は怒りの表情をした。

(山海)「落ち着いて下さい! 彼は貴方達が思っている様な人物ではなく我々は一族の悪しき掟を反対していて、こういう廃墟にいる一族に苦しんでいる霊達を助けるのが目的であって、我々は貴方方には危害を加えない事を約束します」

 山海は何とか二人に説得して怒りを静めた。

(溧子)『では…理子ちゃんを助けて下さい』

 溧子さんは理子ちゃんを助けてほしいと頼んだ。

(界男)「…分かっていますよ」

 界男は承諾していた。

(守堕&溧子)『お願いします』

 二人は頼むと消えていった。

(山海)「取り敢えず、この遺書はお前が保管しとけ! お前の一族の遺留品だ」

(界男)「…分かっているよ」

 山海は遺書を界男が持っている事を提案した。界男は分かっていた。

(完素)「取り敢えず、二人とも理子ちゃんがいる二〇五号室に向うぞ」

 完素は二人に二〇五号室に行く事を説明した。

(山海&界男)『そうだな』

 二人は合意した。

 三人はナースステーションから出て、二〇五号室方向に向った。

(山海)「そう言えば二〇五号室ってどっちだよ?」

 山海は二人に訊いた。

(完素)「それなら、大丈夫…昨日、病院の情報を更に調べていたら病院の見取り図を偶然にも見つけて印刷しておいたから心配しなくて大丈夫だよ」

 完素は二人に昨日、見取り図を手に入れていた事を教えた。

(山海)「…何で言わなかった」

 山海はマジ切れして完素を壁に蹴り飛ばした。すると、完素は壁に減り込んだ。

(完素)「すみませんでした」

 完素は二人に謝った。

(山海)「まあ、良いけど」

 山海は完素を蹴って先にある病室に蹴り飛ばした。

(完素)「ちょっと、無茶なのでは?」

 完素は言った。

(山海)「うっせぇー」

 山海は少し不機嫌だった。

 数分後――

 三人は二〇五号室に着いた。

(界男)「此処に理子ちゃんが…」

 界男は少し怯えていた。

(山海)「…じゃあ、入るぞ」

 山海は界男の様子を見て言った。

 中に入ると息が苦しい程の空気と異様な気配を三人は感じていた。

(山海)「理子ちゃん出ておいで」

 山海が軽い感じで部屋に言うとカーテンから女子の幽霊が《スゥーッ》と出て来た。

(山海)「君が理子ちゃんだね」

 山海が女子の幽霊に訊いた。

(女子の霊)『アナタタチモワタシヲイジメニキタノカ』

 どうやら聞く耳を持っていない様子だった。

(山海)(これは、以外と楽かも)

 山海は心の中で思っていた。

 理子ちゃんは急に三人に襲うとするが完素の力が発揮した。

(女子)『…!』

(完素)「少しそこで大人しくしてろ!」

 完素は幽霊でも出られない檻を狂霊となった理子ちゃんを捕える為に出した。

(完素)「俺達の力で理子ちゃんの心の狂いを整えるぞ」

 完素は言った。

(山海)「分かってはいるけどね」

 山海は分かっていた様子。

(界男)「俺は…」

 界男は迷っていた。

(山海)「お前意外にあの子を救える人物はいない! お前の力であの子の葛藤を取り除いてやればいい!」

 山海は界男にお前以外に理子ちゃんを救えるのはいないと説得した。

(界男)「…分かった」

 界男は気合いを入れ直した。

 山海は狂霊の視界をゼロにした。

(狂霊)『ミエナイ』

 其処に界男の力で狂霊の前に幻覚で溧子さんと兄である守堕の二人を出現させた。

(狂霊)『…オニイチャン…オネエチャン…』

 界男は更に自分の声を溧子さんと守堕の二人が言っている様に見せた。

(守堕(界男))『妹よ、俺達はお前の後を追って死んだ』

 お兄ちゃんの声に似せた。

(狂霊)『ソンナ…オニイチャン…オネエチャンガシヌコトナカッタノニ』

 理子ちゃんの様子は少しずつ狂霊から普通の幽霊に戻っていっている。

(溧子(界男))『理子ちゃんが死んでお兄ちゃんは自暴自棄になって、精神がボロボロになったの。でもね、私達は理子ちゃんが好きで理子ちゃんを自殺に追いやった病院も私達が死んで無くなってこうやって、話している。それにね、私達は幽霊の救助をしているの。もう苦しむ事は無いの。私達と一緒に昔の様に楽しくやって行こう』

 溧子さんが言っている様にした。

(狂霊)『オネエチャン』

 理子ちゃんは後一歩で狂霊から脱出できそうだ。

(守堕(界男))『さぁ、何時までも此処で一緒に暮そう』

 界男が出した幻覚は理子ちゃんに手を差し伸べた。

 一方で現実では山海はいないが完素と界男がいた。

(界男)「完素もう檻はいらないから解放してあげて」

 界男は完素に檻はもう必要ないと言った。

(完素)「…分かった」

 完素は檻を消した。

(山海)「間に会ったか?」

 山海は溧子さんと守堕を連れて来た。

(守堕)『これは、一体?』

 守堕がこの状況について三人に訊いた。

(完素)「理子ちゃんには俺達の能力で幻覚の貴方方二人を見ています。自分が檻を出して理子ちゃんの行動を制限させて山海の力で理子ちゃんの視界を一時的に遮断させた後に界男の力で貴方方の幻覚を見せています」

 完素は守堕と溧子の二人に説明した。

(溧子)『幻覚って…』

 溧子さんが訊いた。

(界男)「俺が作りだした幻影だから声は出せないから俺が話すが声量・声質は二人と同一にして理子ちゃんに貴方方の思いを伝えています」

 界男は簡単に説明した。

(守堕)『何で俺達を此処へ?』

 守堕は山海達に自分達を連れ来た事を訊いた。

(界男)「来て頂いたのには、貴方方が理子ちゃんの心を救出させるんです」

 界男は溧子さんと守堕の二人が理子ちゃんの心を救出させると言った。

(溧子)『どう言う事ですか?』

 溧子さんは界男に訊いた。

(界男)「今、俺が出している両手は右手が溧子さんの手で左手が守堕の手で今、理子ちゃんは俺の両手に触ろうとするが俺の手に触れればまた狂霊となる可能性が高い。だけど、上手く貴方方の手と入れ替えれば普通の幽霊と同じ種類に戻る。…早くして!」

 界男達の策はまず三人の力を上手く合わせて理子ちゃんに兄の守堕とお姉ちゃんと慕っていた溧子さんの二人の思いを届かせるのが狙いでその後、溧子さんと守堕の二人を呼んで界男の手と摩り替えて理子ちゃんを完全に救出させるのが最終目標だった。

(界男)「やっべぇ…もう少しで理子ちゃんが俺の手に触れちまう…二人とも急いで俺の手の横に手を出してくれ」

 界男は二人に言った。

(溧子)『…分かりました』

(守堕)『…分かった』

 溧子さんと守堕は急いで界男の両手の横に自分の手を出した。

(界男)「…これで最終準備は完了。後は…山海はまだ、力を使っていてくれ。完素は例の物を配置してくれ!」

 界男は完素と山海の二人に次の策に移行する事を説明した。

(山海)「了解」

(完素)「自分はもう、設置に取り掛かっています」

 山海と完素は界男に返事した。

(界男)「完素、急げよ…」

 界男は完素にある物の設置を急ピッチにやる事を伝えた。

(完素)「もう、準備は出来たよ」

 完素は既にある物の設置は完了していると言った。

(界男)(早!)

 界男と山海の二人は心の内で完素の準備の早さに驚いていた。すると、理子ちゃんがもう1ミリまで近付いた時、界男は溧子さんと守堕に言った。

(界男)「今です!」

 界男が言った通りに二人は界男の手と摩り替えて理子ちゃんの手に触れた。

(界男)「山海、完素今だ!」

 界男の発言で山海は力を解除して、完素は何かのスイッチを入れた。すると、理子ちゃんの目は視界が戻るのと同時に眩い光が理子ちゃんの目に映った。

(理子)『あれ、私は何していたの?』

 理子ちゃんは狂霊の時だった記憶は無かった様子。

(守堕)『良かった理子』

 守堕は妹の理子を抱き締めた。

(理子)『お兄ちゃん?』

 理子はお兄ちゃんが何故喜んでいるのか分からなかった。

(溧子)『理子ちゃん久しぶり』

 溧子さんは抱き締めずに理子ちゃんの頭と同じ高さで声を掛けた。

(理子)『溧子お姉ちゃん』

 守堕と理子ちゃんと溧子さんの三人は久しぶりの再会で歓喜していた。

(界男)「俺達はお邪魔なようだな」

(完素)「そうだな」

(山海)「俺達はこっそり病院から出るか」

 界男達の三人は守堕達を見て、自分達はお邪魔だと思い三人はこっそりと205号室から出ようとすると守堕が話しかけて来た。

(守堕)『三人とも有難うございます』

 守堕は三人に感謝した。

(溧子)『理子ちゃんが元に戻れたのは貴方方のお陰です。有難うございます』

 溧子さんも三人にお礼を言った。

(界男)「礼は…いらない」

 界男はそう言い205号室から出た。

(山海)「良いのかあれで?」

 山海は訊いた。

(界男)「…」

 界男は返事をしなかった。

(山海)「おい」

 山海が界男の顔を見ると大泣きしていた。

(山海)「…お前」

 どうやら、界男は三人の嬉しそうな顔を見て貰い泣きしたらしい。

(山海)「たっくよぉ」

 山海は少し顔が笑顔だった。

 界男達は病院から出ると205号室から手を振る三人が居た。界男達も手を振り返して、帰路に着いた。その道中に山海が言った。

(山海)「丹波達はどうなったかね?」

 山海の疑問に完素が返答した。

(完素)「まあ、俺が手に入れた情報は丹波の携帯にメールで伝えといたし施設に関しては大丈夫だろ…心配ならメールしてみるか?」

 完素は山海にメールで確認するか訊いた。

(山海)「まあ、良いけど」

 山海も何気に心配していた。

(完素)「じゃあ、メールするぞ…って、淡堕からメールが届いていたみたいだな…え~と、緊急事態発生…これって!」

 完素は額から可なりの汗が流れ出ていた。

完素がメールを見る数時間前――

丹波組――

丹波達は銭湯の入口に居た。

(丹波)「完素のメールで確認すると建物は二階建てで二階には従業員と事務室が存在して二階の一室で何者かの奇声が聴こえるらしい」

 丹波は二人に完素が調べた情報を伝えた。

(日太)「成程…取り敢えず、事務室とやらに行ってみるか?」

 日太は二人に訊いた。

(淡堕)「良いと思うぞ」

 淡堕は日太に良案だと考えたらしい。

(丹波)「先に何者か奇声が聴こえる一室の方が先にした方が良いと思うぞ」

 丹波は奇声が聴こえる一室が先だと言った。

(日太)「いや、施設に関する情報を集めておけば何かと役に立つし…仮にもお前の一族が経営していた銭湯だ。詳細な情報が無いと一族の恥だぞ…悪い方向で…」

 日太は丹波に自分の意見を説明した。

(丹波)「…そうだね、悪い方向の恥にはなりたくないから日太の意見に賛同するよ」

 丹波は日太の意見に賛同した。

 丹波達三人は二階に行き、事務室と思われる一室に三人は入った。

(丹波)「二人とも、気になる物以外は持って来た完素特製のリュックに入れていってくれ」

(日太&淡堕)『了解!』

 二人は承知した。

 数十分後――

(淡堕)「…これは」

 淡堕は何かを見つけた。

(丹波)「どうした?」

 丹波と日太の二人は淡堕の近くに寄った。

 二人は淡堕が見つけた物には【遺書】と書かれていた。それも二冊あった。

(淡堕)「これは、遺書か どっちから読む?」

 淡堕は二人に訊いた。

(日太)「まあ、上の方から読めば」

 日太は普通の意見をした。

(丹波)「そうだね」

 丹波は納得した。

 三人は上の遺書と書かれていたノートを読み始めた。

 (このノートは文字通り遺書です。ですが自分は復讐の為に死んだに過ぎません。自分の名は水楽(すいらく) 漉太(ろくた)この【赤獄銭湯(せきごくせんとう)】で働いていた十四歳です。自分が死ぬ事になった原因は一族の悪しき掟に気付いた事です。そもそも、自分には沴耶(れいか)という妹がいた。だけど、沴耶がある日、佐島さんの二〇九号室で首を吊って遺体として発見された。自分は何故沴耶が自殺しなきゃいけなかったのか分からず銭湯の仕事に身が入らなかった。それから数日後に自分は気分一新する為に部屋の掃除をしていたら沴耶からの遺書が見つかった。遺書を読むと沴耶は友達に酷い虐めを受けていた。そして、ある日の夜中に両親が一族の悪しき掟について聴いてしまったらしい。自分は沴耶の遺書を読んで絶望した。自分は沴耶の苦しみ、悲しみ、怒りを晴らすには赤獄銭湯を潰す方法を考えた。そこで、銭湯内で沴耶と同じ道を辿れば赤獄銭湯に悪い噂が流れて銭湯は営業中止に追いやられて沴耶の苦しみ、悲しみ、怒りを少しでも晴らす事が出来ると考えた。自分は間違ってはいないと思う…沴耶すまない馬鹿な兄貴で…)

どうやら、水楽 漉太という少年が書いた遺書だった。

(淡堕)「もう一つは…」

 日太達はもう一つのノートも読み始めた。

 (私の名前は青立(あおたち) 冷子(れいこ)この赤獄銭湯でアルバイトをしていた十六歳です。私はずっと、漉太君に恋をしていた。でも、告白する勇気が無かった。でも、その気持ちを知っていたのは沴耶ちゃんだけだった。沴耶ちゃんとは仲が良く仕事の合間に沴耶ちゃんの遊び相手をするのが気持ちを落ち着かせていた。ある日、沴耶ちゃんが死んだ事を知り、漉太君が心配になり学校を止めて、銭湯のアルバイトが無い時間は漉太君を蔭ながら見ていた。でも、ある日の夜中に何所かに向う漉太君を見て、私は漉太君の部屋にこっそりと侵入した。そこで、沴耶ちゃんが兄に当てた遺書を見つけて読み上げた。それを読んで私は漉太君が何を考えて何所へ向ったのか察して私も急いで漉太君が向った赤獄銭湯に向った。銭湯に着くと佐島さんが使っていた部屋に人影が見えてそれが漉太君と分かり音を立てずに急いで佐島さんの部屋に向った。すると、ドアについてあった覗き穴から中を見ると予想通り漉太君が首を吊ろうとしていた。私は急いで漉太君を止めた。でも、漉太君は必死に首吊りに使うロープを手で持っていた。漉太君の考えは変えないつもりだと分かり私も一緒に死ぬ事を選んだ。「私も一緒に死ぬ」と漉太君に言うと漉太君は反対した。でも、私は漉太君がいない世界に私は耐えられないと思い私は漉太君に「好き」と告白した。漉太君は少し迷ったが私は「沴耶ちゃんの無念を晴らしたいのは私も一緒だよ」と言った。漉太君は私の想いも分かってくれた。…沴耶ちゃん、私ずっと櫳太君が好きだったけど告白できなかった。でも、不謹慎だけど、沴耶ちゃんのお陰で私は漉太君に告白できた。でも、私の人生はここまで…これからは、櫳太君と沴耶ちゃんと一緒にあの世で暮らそうね…)

 どうやら、こちらは女性の遺書だった。

(日太)「この二人は狂霊とはなって無いからしてこの中に書かれている沴耶ちゃんという女の子が今も苦しんでいるのは間違いないな」

 日太は二人に言った。

(???)『そうです』

 三人とは別の声が窓側から聴こえて三人は声が聴こえた方向に振り向くと男性と女性が居た。

(丹波)「貴方達は?」

 丹波は男女の二人に訊いた。

(日太)(…いや、流石に聴いた言葉で分かれって!)

 日太は丹波が鈍感な所を心で突っ込んだ。

(男性)『自分は水楽 漉太と言います』

(女性)『私は青立 冷子です』

 二人は遺書を書いた張本人だった。

(日太)「…さっき、『そうです』と言っていましたがあれは、此処に書かれている沴耶ちゃんが未だに苦しんでいると解釈して良いですね?」

 日太は二人に沴耶ちゃんが未だに苦しんでいる事を確認した。

(冷子)『そうです。私達が死んだ後、直ぐに銭湯は廃業となりました。ですが、我々は此処に留まっていたのです。原因を調べたところ、沴耶ちゃんが未だに死んだ場所に留まっていたのです』

 冷子さんは三人に説明した。

(淡堕)「それなら、貴方方は沴耶ちゃんを助けられる筈では?」

 淡堕は二人に尋ねた。

(漉太)『当然、自分達が沴耶の場所に行っても部屋には入れなかった。かなり強い力が働いていた。自分達は部屋の外から沴耶に声を掛けたが反応が無かった。つまり、外からの説得も出来ない』

 漉太が言うのは幽霊の様にエネルギー体では、沴耶ちゃんがいる部屋に入る事も外から中に言葉を掛けても無理という話だ。

(淡堕)「…つまり、俺達が沴耶ちゃんのいる部屋に向い、沴耶ちゃんを助けてほしいと言う訳か」

 淡堕は二人に言った。

(漉太)『はい』

 漉太は答えた。

(淡堕)「俺は良いがこいつが如何するかだな」

 淡堕は丹波を見ながら言った。

(丹波)「…」

 丹波は黙っていた。

(冷子)『どう言う事でしょう?』

 冷子さんは淡堕達に訊いた。

(日太)「こいつは水楽一族末裔で…」

 日太がそう言うと漉太と冷子さんの様子が一変した。

(漉太&冷子)『末裔…』

 二人は可なり怒りの表情をしていた。

(日太)「落ち着いて下さい! 彼は確かに水楽一族の末裔ですが一族の掟や一族の決まりごとは反対派です! …彼は貴方方が想う様な悪い人じゃないから安心して下さい!」

 日太は丹波について、詳しく説明した。すると、二人の怒りは治まった。

(漉太&冷子)『そうだっだんですか』

 二人は納得した様子。

(丹波)「俺は…」

 丹波は考えていた。

(漉太)『お願いします! 沴耶を助けて下さい!』

(冷子)『沴耶ちゃんを助けて下さい!』

 漉太と冷子さんは頭を下げた。

(丹波)「! …分かりました」

 丹波は少しやる気が無い声で言った。

(漉太&冷子)『有難うございます』

 二人がそう言うと消えた。

(日太)「取り敢えず、この遺書はお前が持って置け」

 日太は丹波にノートを渡そうとした。

(丹波)「ああ」

 丹波は日太からノートを手渡された。

(淡堕)「行くぞ」

 淡堕は二〇九号室に急ぐ事を二人に伝えた。

(日太)「分かっているよ」

(丹波)「…」

 日太は気合いが入った言葉だが丹波は何も言わずについて言った。

 数分後――

(丹波)「ここだな」

 丹波達は二〇八号室に着いた。

(日太)「丹波…お前やっぱり」

 日太は丹波が可笑しい事に気付いていた。

(淡堕)「どうした?」

 淡堕は二人に訊いた。

(日太)「お前…あの学校時から幽霊とかに恐怖を覚えているだろ」

 日太は丹波に訊いた。

(丹波)「俺は怖い…あの時、俺も淡堕もやられて死んだと思った。こんな事、霊能者に頼んで所霊してもらえば良いじゃないか!」

 丹波はそう言い放った。

(淡堕)「てめぇ!」

 淡堕は丹波の胸倉を掴んだ。

(日太)「はい! はい!」

 日太は淡堕が丹波を掴んでいる手を放す様に目で語った。

(日太)「丹波! 一つ言っておく事がある」

 日太は語った。

(日太)「俺だって怖いさ! …でもな、霊能者に任せれば確かに解決はする! …でもこれは俺達の一族が引き起こした一件なんだ! 俺達は俺達で解決させるのが大切だ!」

 日太は丹波を説得しようとした。

(丹波)「でも…」

 丹波は拒み続けている。

(日太)「だから、俺はまず同族の始末は同族である俺達が先に行き俺達で救う! それでも駄目なら霊能者に頼むしかないが…頼めば本当に救われると思うのか?」

 日太は丹波に訊いた。

(丹波)「…」

 丹波は黙り込んでいる。

(日太)「まず、血筋の者が行って全力で相手の心を救うのが最初だ! 自分が本当に救いたいと思うならまず自分を信じて行動すれば必ず気持ちは届くからもっと強気でいろ!」

 日太は丹波を説得した。

(丹波)「分かった」

 丹波はまだ一寸だけ怖がっているが顔は良い顔になった。

(淡堕)「じゃあ、入るぞ」

 三人が入ると中には沢山の骨があった。

(丹波)「これって!」

(日太)「間違いない此処で沴耶ちゃんが襲い助けられなかった者達だ!」

 丹波は沴耶ちゃんの苦しみの大きさに怯え始めた。

(日太)「丹波! 確りしろ! 俺達は戦地に居ると思え!」

 日太は丹波を励ました。

(狂霊)『イッショニアソボウヨ』

 突如、箪笥の中から声が聴こえた。三人は箪笥を開けたが誰も居なかった。

(全員)『?』

 皆は首を傾げた。

(狂霊)『ワタシヲミツケラレルカナ?』

 今度は部屋のシャワールームから聴こえた。

(丹波)「次はあっちか!」

 丹波と淡堕は声の主を探すが声の主に翻弄されていた。

(日太)「…!」

 日太はある事を思い付いた。

(狂霊)『ツギハコッチダヨ』

 今度は最初と同じ箪笥から聴こえた。

(淡堕)「またかよ!」

 二人は疲労が出て来た。淡堕が箪笥を開けるが誰も居なかった。

(狂霊)『ツギハ…』

 声が途中で止まった。

(淡堕)「何だ?」

 二人は声が途中で途絶えた事に驚いた。

(日太)「俺がやった」

 日太は声の主の声を止めたと言った。

(淡堕)「何をした?」

 二人は日太に訊いた。

(日太)「時を止めただけだ!」

 日太は簡潔に言った。

(淡堕)「いや、だからどう言う事だよ」

 淡堕は訊いた。

(日太)「だから、声の主は居る所に一瞬だけ居ると推測した。そこで、声が聴こえた瞬間に俺達三人以外の時間を停止させて聴こえた方向に行きこのかくれんぼに終止符を打つ!」

 日太はちゃんと説明した。

(丹波)「そうかい」

 二人とも理解した。そして、声が聴こえたシャワールームに向った。すると、日太の推測通り声の主は居た。

(淡堕)「沴耶ちゃんだな」

 淡堕は沴耶ちゃんと思った。

(日太)「じゃあ、時を動かすぞ!」

 日太は二人に言った。

(丹波&淡堕)『了解』

 二人は返事をした。すると、日太は指の大地関節を曲げて鳴らした。すると、時は動き出した。

(三人)『見つけたよ』

 三人は優しく声を掛けた。

(狂霊)『ミツカッチャッタ』

 女の子は優しい笑顔で言った。

(日太)(…この感じ)

 日太は何かを感じた。

(狂霊)『ツギハナニシテアソブ?』

 女の子はまだ遊びたい様子だった。

(丹波)「じゃあねぇ……」

 丹波は既に女の子と遊ぶ気満々だった。

(日太)「淡堕…」

 日太は淡堕に有る事を伝えた。

(淡堕)「…成程ね」

 淡堕は何かに納得した。

(日太)「なあ、丹波帰ろうか」

 日太は丹波に家に帰ろうと言った。

(丹波)「…! 淡堕何で?」

 丹波は日太の言葉に疑問を感じた瞬間、淡堕が丹波の腹に刀を刺した。

(丹波)「如何…し…て…」

 丹波は倒れた。すると、淡堕が持っている刀の刃の色が紫と黄の色に変わった。

(狂霊)『ドウシタノ?』

 女の子は笑顔で首を傾げた。

(淡堕)「御免ね」

 淡堕はそう言うと素早い動きで女の子の後ろを取り、淡堕は丹波をさした刀で女の子を刺した。

(狂霊)『?』

 女の子は刀に吸い込まれた。すると、刃の部分に虹色の部分が加わった。

(淡堕)「これで良いん…だよな」

(日太)「ああ…これが一番の良策だ」

 淡堕は日太に訊くとこれで良いと言った。

(日太)「さてと、丹波の体は一時的に停止させとくか」

 日太は力で丹波の肉体の時間を止めた。

(淡堕)「にしても、こんな策を思い付くとは…日太は何時も正しい策に出るからな…無茶だけど…」

 淡堕は日太を少し尊敬の念を言った。

(日太)「まあな、お前の力で魂だけを吸い込む刀を創り、俺が丹波の判断力を一瞬だけ無くして丹波達と女の子を刺して吸い込む。その後、丹波の肉体に俺の力を使い寿命を一時的に止めて、刀の中で丹波は女の子と略一対一で話し合える。それにあいつの力は…」

 日太は作戦の事を改めて説明した。

(淡堕)「分かっている。あいつが俺達の想いと気持ちをちゃんと理解してくれている事を信じよう」

 淡堕は日太の肩に触れて言った。

 一方、刀の中では――

(丹波)「ここは?」

 丹波は今居る場所が何所か分らなかった。

(鵯恕)『此処は刀の中だ』

 声をかけたのは鵯恕だった。

(丹波)「鵯恕! どう言う事だ?」

 丹波は訊いた。

(鵯恕)『淡堕の一族の妖怪は特殊な刀を創りだす力を持っている』

(丹波)「特殊な刀?」

(鵯恕)『ああ、例えば精神だけを斬る刀・空気だけを斬る刀とか普通の刀に付加出来ない能力を加えて創りだす事が出来る。…今回の場合は【魂を吸い込む刀】を創りだして俺達を刀の中に吸い込んだって事だ。分かったか』

(丹波)「分かった」

 鵯恕の説明に丹波は理解したようだ。

(丹波)「でも、如何して此処に」

 丹波は此処にやった事を鵯恕に訊いた。

(鵯恕)『それは、お前自身が考えろ』

 鵯恕は丹波自身で考えろと言った。

(丹波)「…」

 丹波は必死に考えた。

(丹波)「…!」

 丹波は何かを思い出した。

(鵯恕)『何か思い出したようだな』

 鵯恕が少しほっとした。

(狂霊)『ネェ、オニイチャンアソボ♡』

 後ろから女の子の声が聴こえた。

(丹波)「僕は君と遊ばない」

 丹波は女の子に一緒に遊ぶ事を拒否した。

(狂霊)『オニイチャンモワタシヲサケルノネ』

 女の子は丹波が拒否した事で怒り始めた。

(丹波)「俺は君を救う為に来た」

 丹波は女の子を救う為に来た事を伝えた。

(狂霊)『ウソダ』

 女の子は否定した。

(丹波)「仕方ない。強行に出るか…鵯恕!」

(鵯恕)『了解!』

 丹波は無理矢理救う為に鵯恕にある事を頼んだ。すると、丹波の腕が鳥の嘴になった。

(丹波)「此れで君の苦しみ・憎しみ・怒りを喰ってあげる」

 丹波はそう言うと女の子に近付き嘴で女の子を吸い込んだ。

(狂霊)『ギャァァァァァァァァ!』

 女の子は悲鳴を上げた。

(丹波)「此れで大丈夫だ」

 丹波は嘴を閉じた。

(沴耶)『…私は一体何をしていたの?』

 女の子は正気を取り戻した。

(丹波)「良かった」

 丹波は一安心した。

(沴耶)『お兄ちゃん誰?』

 女の子は丹波に訊いた。

(丹波)「僕は、君と同じ水楽一族の者で君のお兄さんである漉太さんに頼まれて救いに来た者だよ」

 丹波は丁寧に教えた。

(沴耶)『漉太お兄ちゃんが』

 女の子は本当か訊いた。

(丹波)「そうだよ」

 丹波は返答した。

(沴耶)『漉太お兄ちゃんは?』

 女の子は兄が如何しているのか訊いた。

(丹波)「君の兄は君が死んでから気力を無くして手伝いも上手く出来なくなっていたらしい。でも、君がお兄ちゃん宛に書いた遺書をお兄ちゃんが見つけて君の後を追うとした。でもね、冷子さんがお兄ちゃんの自殺を止めた」

(沴耶)『冷子お姉ちゃんが…』

(丹波)「君も知っている通り冷子さんは君のお兄さんが好きだった。だから自殺を止めたけど君のお兄さんは自殺を諦めてはいなかった。そこで冷子さんは君のお兄さんと死ぬ事を決めた。でも、当然に君のお兄さんは冷子さんが自分と一緒に死ぬ事を拒否した。でも、冷子さんはその時、君のお兄さんに告白をした。それで、君のお兄さんも少し迷ったが二人は一緒に死んだ」

(沴耶)『そんな』

 丹波の優しい口調で女の子にお兄さんの事を教えた。それを訊いた女の子は悲しい表情になった。

(丹波)「君のお兄さんが死んだ理由は妹である君に会いたいからも有るけど一番の動機は君を自殺に追い込んだ銭湯を廃業させる事だった。幸い、二人が死んだ事で銭湯は廃業となって二人の想いは成就したが君が狂霊となって生きていた。二人は君に声を掛けたが君は無視してしまった。だけど、二人は何とかして君を正気に戻したいと思っていた。其処に俺達が来て、君を救って欲しいと言った。俺達はその願いを叶えた」

 丹波はちゃんと説明した。

(沴耶)『私…死んだけど存在していて良いの?』

 女の子は自分がこうやって存在して良いのか丹波に訊いた。

(丹波)「当たり前だろ! 二人が…いや、俺達も君が存在して良いと思っている! 忘れられずに此処で二人と一緒に暮して行けばいいさ」

 丹波は女の子に存在しても良いと言った。

 一方、外では――

 刃の虹色の部分が白になった。

(淡堕)「どうやら、上手く救えたようだな」

 淡堕は丹波が狂霊の女の子を救いだしたと言った。

(日太)「成功か…じゃあ俺は二人を連れてくる!」

 日太は二人を此処に連れ来ると言って部屋から出た。

(淡堕)(日太…急げよ)

 数分後――

(日太)「連れて来たぞ!」

 日太は漉太と冷子さんを連れて来た。

(漉太)『助けたのですか?』

 漉太は二人に訊いた。

(淡堕)「ええ、あの子は普通の幽霊に戻った。後はあの刀から出すだけです」

 淡堕はそう言うと刀に近付き持ち手の所を少し捻った。すると、女の子が出て来た。

(漉太)『沴耶!』

(冷子)『沴耶ちゃん!』

 漉太と冷子さんの二人は歓喜して沴耶ちゃんに駆け寄った。

(淡堕)(今の内に…)

 淡堕は三人がこっちに気付いていない内に丹波達の魂を丹波の肉体に戻す為にこっそりと丹波の肉体に近付いた。

(淡堕)「日太! 丹波の肉体の時間を動かして!」

 淡堕は日太に小さい声で呟いた。

(日太)「了解!」

 日太も小さい声で返事した。

 日太は丹波の肉体の時間を動かした。その後、淡堕は刀を丹波に刺した。淡堕は持ち手の所を捻ると刃の部分の紫と黄の色が丹波の肉体へ流れていった。すると、丹波達の魂は丹波の肉体に戻って行った。

(丹波)「只今」

(日太&淡堕)『お帰り』

 三人は小さく言った。

(淡堕)「さてと、俺達は邪魔者だ。此処から出た方が良い」

 淡堕は二人にあの三人の為に此処から出る事を提案した。

(日太)「…そうだな」

(丹波)「…」

 日太は納得したが丹波は何も言わなかった。

 丹波達三人は部屋から出ようとした。

(漉太)『有難うございます』

 漉太が三人にお礼を言った。

(丹波)「いや、俺達も君達の様な一族の掟に逆らう者達が居る事を知って嬉しいです。これからも必死に存在を証明して行って下さい」

 丹波は顔だけを振り向いて言った。

(三人)『はい!』

 漉太達三人は歓喜して言った。

(淡堕)「行くぞ!」

 淡堕は丹波に言った。すると、丹波は部屋から出た。

(淡堕)「それにしても、良く分かったな、俺達の想いを…」

 淡堕は丹波に言った。

(丹波)「ああ…日太の言葉から分かったから」

 丹波は日太の言葉で二人の想いが分かったと言った。

(丹波)「日太の「帰るぞ!」の言葉は俺にあの子を正気に戻せという事だろ?」

 丹波は日太に確認した。

(日太)「正解」

 丹波の推測が当っていた。

 三人は建物から出ると帰路に着いていた。

(日太)「…界男組は大丈夫だろうか」

 日太は界男組の心配をしていた。

(淡堕)「メールで確認してみようか?」

 淡堕は日太にメールで確認するか訊いた。

(日太)「頼む!」

 日太は淡堕にメールで確認するよう頼んだ。

(淡堕)「了解!」

 淡堕は界男組の完素にメールを出そうとしていた。すると、背後に怪しい車が三人を尾行していた。

 界男組に戻る――

(山海)「どうした?」

 山海は完素に訊いた。

(完素)「日太が…車に轢かれて今、救急車で辰岐摩病院【しんきまびょういん】に運んでいる途中だって」

 完素は二人に伝えた。

(山海)「ひ、日太が車に轢かれた!」

 山海は取り乱していた。

(界男)「と、取り敢えず、俺達も辰岐摩病院に言った方が…」

 界男は二人に病院に向った方が良いと提案した。

(山海)「そ、そうだな…行こう!」

 山海は行く事を決めた。界男も行く事には拒否はしなかった。山海達は辰岐摩病院へ向った。

 日太に緊急事態発生…日太の命は助かるのか? 病院で意外な人物が動く…そして、日太を引いた車の運転手である犯人は意外な人物だった!


 四情狩林 それぞれの苦しみと意い

~第三章~ 完

 四情狩林 それぞれの苦しみと意い

  ~第四章~ 続く――


主人公の日太が車に轢かれた!? これは一族の報復か!? 日太の安否は!?

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